『五星戦隊 ダイレンジャー』〜20. 初公開ゴーマ宮〜
1993〜1994年公開(日本)
監督、小林義明・坂本太郎・小笠原猛・東條昭平・渡辺勝也
脚本、杉村升、荒川稔久、藤井邦夫、高久進、井上敏樹
地球侵略をもくろむ妖力使いゴーマ族と、気力を操るダイレンジャーが地球を守るために戦う。
※ネタバレあり
ところ変わって。たそがれているコウに、道士・カクが近づきます。
「見つけたよキバレンジャー」
道士の笑顔が胡散臭いです。子供相手だから柔らかい態度になっているのはわかります。しかし、それが、何とも言えず胡散臭いです。 力を感じることで、コウが六人目の戦士だとわかったという道士。さすがです。
白虎ちゃんはカクにも馴れ馴れしい態度です。以前からの知り合いなのかもしれません。 「まだ正体は明かしたくない」という白虎真剣に対し、露骨に舌打ちして目までそらす道士。
「ほう、なぜだ」
その辺の若者なら道士の圧力に屈してしまいそうですが、白虎真剣には通じません。 「六体目の気伝獣が現れる」というネタを披露して、話をそらしてしまいます。
そのころ、ゴーマ三幹部はワインで乾杯していました。なぜか神社で。 指揮を取り戻したことへの祝杯なのでしょうが、なぜ神社なのか。まああの格好で高級レストランで食事されてても困るし、そうなると集まって酒盛りできる公共の場所が限られていたのでしょうが(神社も酒盛りあかんやろ)。 それにしても仲良しな三人組です。
ご機嫌なシャダムの頬を、何かが切り裂きます。 顔を上げた先には阿古丸(と二人になった三人官女)がいました。 これはあまりにもひどいだろ、阿古丸……。いくら子供でもやっていいことと悪いことがあります。
「私はあくまで私のやり方でやらせてもらう。絶対にあなたの指図は受けない」
去っていく阿古丸。 シャダム、いらついてグラスを投げ割ります。いやあしかし、これはシャダム、よくこらえたと思います。
場面は変わり。 コウは一人、香澄ちゃんの家に行きました。香澄ママに直談判に来たのか、香澄が帰っていないか気になったのか……。 そこにちょうどよく、郵便屋さんが通りがかります。そしてなぜか、コウにハガキを渡します。
あ ふ れ 出 る コ ッ ト ポ ト ロ 臭 。
ハガキには「コウ様」と宛名が(苗字なし)。そして「香澄を助けたければ、横浜の第三倉庫に来い」と。 こんな怪しいハガキを、家主ではなくコウにしれっと渡していくなんて、すがすがしいほどにコットポトロです。
ものすごい形相でハガキを握りつぶすコウ。横浜の倉庫へ走ります。 横浜の倉庫で香澄ちゃんを発見。後ろ手に縛られているのを救出します。 抱き着いてくる香澄ちゃん。二人、手と手を取り合って逃げます。
倉庫から出ると、そこにはなぜか香澄ママが。香澄にお別れを言いに来たというのです。
「ママもう嫌になったの。あなたと一緒に暮らすのが」(ママ)
「嫌いなものは仕方ないでしょ」。あまりにも残酷です。 そして、香澄ママはこんなことを言い出します。
「同じなのよ。あなたのママも」
唐突に巻き込まれるコウ。 なぜ、コウの母のことを知っているのか? 一気に香澄ママのうさん臭さが増します。
すがりつく香澄を突き飛ばす香澄ママ。 香澄ちゃん、ここでもパンチラします。やたらパンチラが多い香澄ちゃん。というか、さらわれたときはブルマだったのに今回はなぜか普通にパンツだぞ!?
去っていく香澄ママを見ながら、自分の母親へ疑念を募らせるコウ。 フラッシュバックする記憶が、焼きごてを押し付けられるものばかりなのですから、当然と言えば当然です。その後に抱きしめてくる母の姿は、今はかき消えています。 虎の焼き印が光ります。ゴーマになりかけている証拠です。
「母ちゃんも、香澄ちゃんのママと同じなんだ!」(コウ) 「え?」(香澄) 「僕のことなんか嫌いで、だから僕を捨てたんだーー!!」(コウ)
何気に、香澄ちゃんに対して残酷な台詞を吐くコウ。 憎しみに包まれ、ゴーマになりかかった魂を救ったのは、将児の言葉でした。「馬鹿野郎! お前の大好きな母ちゃん、泣いちまうぞ」。 この言葉と共に、コウは母との楽しかった思い出を思い出します。遊園地につれて行ってもらったこと――。母ちゃんは小田切長官のイメージが強いので、子供相手の楽しそうな顔を見ると不思議な気持ちになります。 泣きながら「コウーー!」と叫ぶイメージ映像は、あまりにも誇張されていてシリアスシーンですが気持ちを置いてけぼりにされました。しかしながら、現実に戻って涙を流しているコウを見ると不覚にも胸に来ました。 コウはいろいろな意味で過酷で悲劇的な宿命を背負った子供です。彼の明るいキャラのおかげでどんよりならないのが救いです。
「やっぱり違う! 僕の母ちゃんは、僕の母ちゃんだ!!」 「その通りだぜ」(将児)
ダイレンジャーたちに捕まった香澄ママが連れて来られます。「こいつはゴーマの手先だったんだ」と。どうやって正体を見破ったのか気になるところです。ゴーマ側の人間と会話しているところでも発見したのでしょうか。
メンバーの拘束から逃げた香澄ママは変身します。正体はネックレス官女でした。おそらく役者さんも同じ人だと思われます。メガネや服装で同一人物に見えないようにしているところはすごいです。
転身するダイレンジャー。ネックレス官女との闘いになります。 その隙にコウは香澄ちゃんを連れて逃げます。コウにしろ阿古丸にしろ、いざというときに的確に逃げられるのは偉いと思います。
「ゴーマが君のママになりすましていたんだ」
コウは意気揚々と言いますが、香澄ちゃんは唐突に不気味な笑いを浮かべます。
「せっかくあなたに母親を憎ませてあげようと思ったのに。がっかりだわ」
困惑するコウの前で、高笑いする彼女。そして、その姿はだんだんと変わり――。
阿古丸登場!
お前だったんかーい! バカな、あってはならない、こんな、どうして……。
高笑いしまくった後に、ピューイと笛を鳴らす阿古丸。 コウの顔が本当に心底驚いています。そりゃそうだ。視聴者もみんなそういう顔になります。
そして追い打ち。
「僕の手を握ってドキドキしたかい?」
これは殴っていい、殴っていいぞコウ!
「ドキドキ美少女」から始まり、香澄ちゃんに何度もパンチラさせたうえに最後は阿古丸でしたドーン! という演出が実に悪趣味でこの作品の闇の深さを物語っています。 コウとのデートを楽しく演じきったところを見ると、阿古丸はコミュ力が高いようです。
「許せない、許せない!」
阿古丸の胸倉をつかみ、殴り飛ばすコウ! さらにマウントポジションから顔面をグーで三発も殴る! 唖然とする状況です。 すかさず飛んでくる指輪官女。コウの手をつかみ殴り飛ばします。
保 護 者 乱 入 。
「何をするのじゃ、小僧ーーー!」(指輪官女)
指輪官女、ブチ切れ。妥当な反応だと思います。
しかし取っ組み合っている姿は完璧に子供のケンカですね。戦隊メンバーと悪の幹部でありながら。 添え物ではなく闘う位置に子供を置いたのはうまい設定だとい思います。等身大のキャラがいることで視聴者の子供たちも当事者として闘いを見ることになります。
「僕の手を握ってドキドキしたかい?」のせいで怒りが変な方向に見えがちですが、冗談ではなく、母親に虐待される香澄を心配していた心を弄ばれたわけで。それはコウがブチ切れるのは仕方がないと思います。マウントからのグーパン三発は引きましたけど。
指輪官女に「今のうちに」と言われ、阿古丸、素直に逃げます。いつものように消えず、走って逃げるのが気になります。姿を消すのは体力とか精神の落ち着きが必要なのかもしれませんね。ぶん殴られて心身ともにショック状態では妖力がうまく使えなくなっていたのではと解釈しました。
ブチ切れ状態の指輪官女。 しかしブチ切れ具合ならコウも負けてはいません。ついに、やってしまいます。
「気力・転身。キバ・チェンジャー!」
キバレンジャーに転身。 別段、指輪官女に驚く様子がないのは、やはり確信があったからでしょうね。 阿古丸のいないときに転身しているのがミソだと思います。
怒りの勢いで指輪官女を吹っ飛ばすと、とどめも刺さずにキバレンジャーは移動します。 走って逃げている阿古丸の前に、現れるキバレンジャー。 指輪官女をスルーしてわざわざ執拗に追いかけてくるとは(転身までした姿で)、なかなか恐ろしいです。
「心を弄びやがって。絶対許せねえ!」
中身がコウだとはいえ、子供相手に正義のヒーローが剣を持って襲い掛かる。これ、地上波で流していい映像なのか?(笑) 完璧に殺す気ですよ。 阿古丸、攻撃をよけ、徒手空拳で応戦します。お坊ちゃんに見えてやっぱりそれなりに戦えるようです。 しかし、このまま闘っていたらおそらく阿古丸が負けていたのでしょう。 駆けつけた指輪官女が「阿古丸さまー!」と手を伸ばした、そのとき。
「どけ!」
突如現れるシャダム。いつになく激しい動作で阿古丸ごとではありますがキバレンジャーを攻撃します。 キバレンジャー・阿古丸ともに吹っ飛び勝負は終わりに。
「父上、私がいるというのに、なぜ」
この台詞は胸にちくりと来ますね。シャダムにやっぱり父親としての情を求めていることが、作中で初めて露呈する台詞です。 鼻で笑うシャダムですが、ここのシーンは、阿古丸を助けに来たようにも見えるし、神社での意趣返しに来たようにも見えるし……まあ両方なのかな? 一つ確かなのは、「どけ!」と割り込んでまで攻撃するのはいつものシャダムらしくない本気さだということです。まあ二十話のシャダムはやたらと情緒不安定で全体的に「らしくない」感じでしたが。
それにしても、どいつもこいつも子供のけんかの仲裁で暴力をふるって。これだからゴーマは。
阿古丸と指輪官女は去り、キバレンジャーとシャダムが相対します。
今回も「吼新星・乱れやまびこ」が発動します。
「レッツゴー、やまびこ警官隊」
今度は警官隊です。青髭で眉毛のつながったおかしな警官が現れ、発砲を繰り返します。 この展開でギャグを投げ込んでくる、だと?
発砲の音に頭を抱えるシャダム中佐。こんなに苦しむシャダムは初めてだ。今回のシャダムはやたらと顔芸が激しいです。
「おのれええ、覚えておれ!」
微妙に古臭い言い回しをして、シャダムは去っていきました。
残されたのはネックレス官女のみです。ここまでが濃すぎて彼女とダイレンジャーの存在を忘れていました。
気力シュートをくらい、追いつめられたネックレス官女。ついに巨大化爆弾を投げます。巨大化は死亡フラグゥ……ッ!
ダイレンジャーも気伝獣を召喚、大連王となります。
ここでテロップ登場。「大連王VSネックレス官女」 「大連王VS」というテロップがもらえたところは、敵としては誉れです。
頭を殴られたネックレス官女の、額から赤い血が流れるのがリアルで残酷な演出です。
断末魔が「お姉さまあ!」。 本当に仲の良い姉妹だったのですね。なんだか悲しくなります。
闘いは終わり。ラストはたそがれるコウと見守るダイレンジャーたちです。みんな神妙な顔の中、亮だけ泣きそうに顔が崩れているところが性格がでていてよかったです。
「その小さな胸の中から、母への熱い思いを守り通したコウ」(ナレーション)
いいナレーションだと思います。
そして今、地球のどこかで何かが起ころうとしていた――!
今回は濃密でいつもにもまして長い感想となってしまいました。
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」へ(近日中に更新)
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