『五星戦隊 ダイレンジャー』〜20. 初公開ゴーマ宮〜
1993〜1994年公開(日本)
監督、小林義明・坂本太郎・小笠原猛・東條昭平・渡辺勝也
脚本、杉村升、荒川稔久、藤井邦夫、高久進、井上敏樹
地球侵略をもくろむ妖力使いゴーマ族と、気力を操るダイレンジャーが地球を守るために戦う。
※ネタバレあり
第二十話です(最初から読む)。ついにゴーマ宮が登場します。
それにしてもタイトル……なんだよその我が家初公開☆彡 みたいなノリは!!
OPのイントロは地下から出てくるゴーマ宮です。とても物々しくて格好いいです。
ゴーマ宮のデザインはとても印象的でした(今となっては千年パズルかフ○ーメーソンをひっくり返したようにしか見えないわけですが……それでもイケてます)。
周囲に浮いている球体もカオスさを醸し出していて魅力的です。
途中の挿入で異様な雰囲気で三幹部を取り囲むゴーマ宮の人びとが出てきます。そしてゴーマ十五世のカットも。
もはやゴーマ側が主人公のようなOPになっています。
ゴーマはデザインや世界観などトータルで芸術の域だと思います。戦隊ものの敵にしておくのがもったいない、いやだからこそいいのかもしれません。
転校生・香澄に対する、母親の冷酷さに、生き別れた母への想いを揺らがされるコウ。
すべては阿古丸の罠だった。阿古丸はコウに、母親への憎しみを抱かせ、ゴーマの仲間にしようとしているのだ。
「すべて阿古丸の罠だった」。いきなりナレーションでネタバレが始まる、これがダイレンジャー……ッ。
アスレチックのある公園に集まっているコウとメンバーたち。
遊具につかまり楽しそうな動きでコウに話しかける亮。沈むコウを引き上げようとしているのが伝わります。
コウはテンションの低いままです。「香澄ちゃんは必ず助ける」という亮に、「助かったって香澄ちゃんのママは喜んでくれない」と言います。
そして、「同じかな、僕も」と。
愛情の見えないまま相手を信じ続けるのはただでさえ難しいです。そのうえ、香澄ちゃんのママの様子を目の当たりにしてしまったら、気持ちが揺るぐのも無理はありません。
「母ちゃん生きてるよ。生きてるけど迎えに来ないんだ」
「信じてんだろ。大好きだから信じてんだろ」
生きている、というのは何でここまで強く思えるのか不思議です。何か根拠があるのでしょうか。
死んでるから迎えに来ない、よりも迎えに来なくても生きているほうが願望として強いということなのかもしれません。
コウに「馬鹿野郎!」という時の将児の動作が変身のポーズみたいでやたらと格好いいです(笑)。
「そんなこと言っていると、お前の大好きな母ちゃん泣いちまうぞ。お前の大好きな母ちゃん、泣いちまうぞ」(将児)
「勝手なことばっかり言うなよッ!」(コウ)
走り去るコウ。将児の言い分は筋が通っているとは到底言えません。けれど、この時の彼の言葉は、コウの心にボディーブローのように効いていきます。
走るコウを、後ろから見守る影が――! 道士、お久しぶりですね。
一方、公園を歩いているシャダム・ガラ・ザイドス。空にはいつもの球体が。おそらくこれに乗ってゴーマ宮へ帰ったのでしょう。
OPでもあった、地面からゴーマ宮が登場するシーンとなります。
ゴーマの人たちはみんなゴーマ宮で暮らしているのでしょうか。それとも、周りの球体も建物で、そこでも暮らしているのでしょうか。
ゴーマ宮でみんなで寮生活とかだったら、めっちゃ、ストレスたまりそうです。
三幹部が登場するときにいつも球体が出てくるので、たぶん球体で暮らしているのではないかと思います。
一人、一球体持っているのか、それとも三人で一つ球体の中暮らしているのか……気になります。
タイトル「初公開ゴーマ宮」
そして始まるシャダムへのパワハラ。
平安衣装で鈴を鳴らす女性、西洋ドレスで蝶の仮面の女性、メキシコ衣装でギターを鳴らす男性、バンカラ姿の男性、他にも東西問わずさまざまな衣装の妖しい人たちが、リンリンシャンシャン音を鳴らしています。何人かは胸に勲章をつけています。
田豊将軍・阿古丸と三幹部を取り囲み、真顔で睨みながら音を鳴らしていて、とても怖いです。
見ているこちらも何事か、と思いますが、シャダム達もうろたえて周囲を見回しています。ダイレンジャーたちの前では決してみられない姿です。
おそらく田豊派の人たちなのでしょう。つまりは田豊将軍の大がかりなパワハラです。
こんな職場いやや。
三幹部がいつになく緊張しているのが面白いです。中でも一番シャダムが緊張しているのは、やはりリーダーとしてしゃべらなければならない立場だからでしょうか。
「もはや阿古丸の作戦には従えぬと申すのか」(田豊)
どうやら、作戦への異議を唱えに三人は来た模様。
「そ、そうだ。そもそもゴーマは、我々三人にお任せになったはず」
しゃべる前に汗をぬぐうシャダムさん。
田豊将軍の方が目上っぽい雰囲気です。将軍だから当然と言えば当然ですが、ゴーマはみんなため口なのでこのシーンまで意識していませんでした。
田豊の帽子に「ゴーマの目」が描かれているのが印象的です。
そんな彼らを田豊は一喝します。
「だまらっしゃい! 出来の悪い幹部の分際で、身の程知らずめ」
色めき立つザイドスとガラ。真顔で首をぐるりと傾けるシャダム。これはヤバい。
シャダムの空気がやばい。顔がヤバい。目の焦点が合っていない。
周囲の人間がシャンシャンカンカン威嚇します。
あまりにもヤバい顔つきについては田豊将軍からもツッコミが入ります。
「なんじゃその顔は。馬鹿にされたことが不服か。馬鹿を馬鹿と申して何が悪い」
言ったーーー、田豊が言ったーーーー!!
「馬鹿を馬鹿と言って何が悪い」このフレーズ、頭に残っていてよく(冗談で)使っていました。
こうやって悪い言葉を子供は覚えていくんですね。
シャダム、ガチ切れww ナ、ナ、ナイフに手をかける!
あのシャダムが涙目にまでなって怒りをこらえています。シャダムさん、泣いたらあかん。泣いたらあかんよ。
シャダムさんの顔があまりにもヤバすぎたので画像を保存してしまいました。以下引用。
いつものスカしたシャダムさん。
『五星戦隊ダイレンジャー』12話
ブチ切れシャダムさん(エフェクト付き)。子供向け組でしてはいけない顔だと思います。
顔が歪むのではなく無表情になるところが怖い。
『五星戦隊ダイレンジャー』20話
涙目シャダムさん(後ろの真顔のザイドスもいい味を出しています)。
『五星戦隊ダイレンジャー』20話
しかし、田豊将軍、余裕です。
「どうするつもりじゃ? ここはゴーマ様のおひざ元ぞ」
わざとらしい動作で、膝をつき手を広げる田豊。いいキャラしていますね〜。しゃべり方、表情、動き、どれをとっても素敵すぎます。
ナイフに手をかけたままプルプル震えるシャダム。
一連のガチ切れ演技はすごいの一言。ここまでしなくちゃいけないのかというくらいの切れっぷりです。
「その短慮。それがバカという証拠じゃ、ふぁふぁふぁふぁふぁ!」
シャダムの欠点をズバズバ的確に指摘し、「馬鹿」と表現できるのは年の功でしょう。いちいち正論だから余計に悔しくなる内容です。
そして阿古丸、笛を吹く!!
煽りに煽られ、シャダムは限界に達します。
「おのれ田豊うう!」。ついにナイフを、抜いた。
妖力ビームよりナイフの時の方が殺意の本気度が高いようです。
そしてこのナイフがのちに運命を分けるものになることを、誰が知っていただろうか。
背後に映り込むザイドスが常に真顔なのが面白いのですが、こんなシャダムの姿を見て何を思っていたのか気になります。「おいおいヤバいよヤバいよどうしよう」って感じでしょうか。
これまで張遼や歌舞伎小僧に凶暴っぷりを見せつけてきたザイドスですが、よく我慢しています。やはり張遼はザイドスに何かやったに違いない。
今にも刃傷沙汰になりそうなところで、銅鑼が鳴り響きます。我に返るシャダム。
ここで刺していたらシャダムの人生終了していたでしょうから、中断されてよかったですね。
田豊は余裕綽々でしたが、本当に刺されることはないと思っていたか、斬りつけられてもよけられる自信があったということなのでしょうか。あるいはタイムアウトまで計算しての煽りだったか。
田豊の煽りシャダムさんプルプル涙目シーンは何度見ても面白いです(笑い事じゃないですが)。
こんな台本をよく書いたというくらいに秀逸なシャダムいじめです。パワハラ事例のサンプルとして取り上げたいくらいです。
「ゴーマ十五世より、ご進捗を賜りました」
シャダム・田豊の二人はゴーマ十五世と謁見するようです。さっきまでやりあっていた二人が揃って会いに行くというドロドロ感がたまりません。
シャダムのまだちょっとクールダウンしきっていない雰囲気がよいですね。
お面をつける演出も独特で好きです。
ゴーマ十五世のいる間はすごく大がかりなセットです。世界観をこだわって作っているのが伝わります。
ゴーマの間に並ぶシャダムと田豊。田豊将軍、よく見ると胸に大きな勲章が二つも付いています。さすがは将軍。
真っ暗な背景とそびえたつ赤い足場たち。そこに座る白い服白い顔の男(ゴーマ十五世)。とても魅力的で印象に残っていました。
今まで「ゴーマ」という名前しか出てこなかった彼が、ついに登場します。
両の目を閉じていたゴーマ十五世ですが、謎の球体が額の目(第三の目)に吸い込まれると、ぱっちりと目を開けます。
風車を回したり、あくびをしたりと、おごそかな空気とのちぐはぐ具合が心を不安定にさせます。
「こ、これは、わたくしめに作戦をお任せになるというご進捗で!」
ゴーマ十五世から風車を受け取り、喜ぶ田豊。
「すべては決まった」とドヤ顔の田豊の前で、突如高笑いするシャダム。
「これをごらんください」
シャダムは水晶を取り出します。シャダム曰く、ゴーマ族の遺跡から発掘した予言の玉だそうです。そのようなものをいつのまに発掘してきたのか。知らないところで仕事していたんですね。
予言の玉の映す映像には、五体の気伝獣と、もう一つ、新たな影が映し出されていました。
シャダム曰く、新たに6体目の気伝獣が召喚されるということでした。
具体的な情報を出し、「気伝獣の誕生を阻止する」と目標を掲げたことで、一歩リードします。
そのとき、先ほどまで寝ころんでいたゴーマ十五世が立ち上がります。足場ごと二人にスーッと近づいてきました。目の前まで来て、無言のまま真顔で覗き込んでくる姿は威圧感があり恐ろしいです。
シャダムがたじろいで後ろに下がる様からも、ゴーマ十五世のほうが圧倒的に「上」の存在であり、オーラを持っていることがわかります。
三幹部だけ出ているときはわかりませんでしたが、いろいろと出てきて、三幹部の中ではリーダーに見えたシャダムも小童なんだなとわかります。
気おされるシャダムに、ゴーマ十五世はにこっと笑いかけます。
そして無言で風車を取り、シャダムの胸に移します。
風車を取られて慌てる田豊が面白いです。声にならない声であわあわしていて。
「ゴーマ十五世!」。ぱああ! という感じで嬉しそうな声を上げるシャダムさん。
そんなシャダムにゴーマ十五世が声をかけます。
「シャダム、しっかりね」
「ハッ」
かん高い声がさらにゴーマ十五世の異様さを際立たせます。
さらに田豊には「田豊。お前は何しに来たの?」と。これをおそらく嫌味でも皮肉でもなく、素で言っているであろうところが、彼の狂気的な部分です。
「シャダムめえ」と悔しがる田豊と、それを見てほくそ笑むシャダム。シャダム、上司の前でしてはいけない笑顔だぞ……。
シャダムは何の策もなく田豊に談判していたわけではなかったのですね。さすがはチンピラの皮をかぶった頭脳派。
ゴーマ十五世や田豊将軍、その他の上司の前ではシャダムたちはちっぽけな存在であることが浮き彫りとなりました。
今まで、強敵ポジションにいた幹部たちがコケにされる姿は、子供たちには衝撃だったのではないでしょうか。
子供に容赦なく大人の世界を見せつけてくる、さすがダイレンジャー。
それにしても初めて公開されたゴーマ宮で行われているのがシャダムいじめだなんて……。
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