第四話目(最初から読む)。
道士の説教から物語が始まります。
「お前たちの驕りがそうさせた」
そして衝撃の告白。
「将児が人形に襲われたとき、私は黙っていた」
あの場にいたんですか、道士。またビデオカメラ回していたんですか!?
「私の指示がなくても、お前たちは結束して必ず事に当たると信じていたからだ」
そんな、道士ともあろうお人が根性論ふりかざす理不尽教師みたいなことをおっしゃるなんて。
道士は一話もそうですが、子供が襲われていても黙ってみていたりと、冷徹ともいえるくらい冷静な部分があります。その場の犠牲よりも後々のことを見ているあたり、子供向け番組の師匠らしからぬリアリストです。
まあ後から助けられる算段があるから放っておくのでしょうが。
「ゴーマをあなどるな。自分の力を過信するな」
何もアドバイスも指示もしないのに、後から怒るだなんて……道士ぃ……。
「お前たちはゴーマから見ればまだひよっこだ。少しでも油断すれば木っ端みじんに粉砕される。そのとき、誰が人類の滅亡を防ぐ?」
「木っ端みじんに粉砕」という表現がすごいです。人間相手に使う表現じゃない。
そんな道士に対するみんなの反応がもっともすぎて面白いです。年上にもはっきり物を言うあたりが、今風の若者ですね。
「俺たちは昨日までただのド素人だったんだ。ゴーマのこともよくわかんねえし」(将児)
「そうよ。もっと強い人もいくらでもいるし、私たちには無理だったのよ」(リン)
「無理だとは思わないけど、もう少し訓練してからじゃないと、辛いですね」(知)
「気力だって、まだ、充分に使いこなせないんだしな」(亮)
まだ昨日、ダイレンジャーできたばかりだったんかーい。紐男爵撃破・ガマグチ法師撃破・鍵道化師参上まで展開早すぎる。
リンちゃん、気持ちはわかるけど、そこは姪っ子なんだから味方をしてあげて。
知と亮の言い分は正論です。
「そうか。だったらお前たちの好きなようにしろ。私はもう何も言わん」
出て行く道士。亮の「道士」という呼びかけが、「おいおい拗ねるなよ」って感じの言い方なのが面白いです。大五は「お前たちみんな気にくわねえ!」とご立腹です。まあ、先週は一人であれだけリンチに遭ったのですから、彼には怒る権利があると思います。
いったん帰宅し、それぞれの日常を過ごすダイレンジャーたち。
将児と知はまた喫茶店でお茶をしています。
仲よいな本当に。二人の間ではもうダイレンジャーは終わったことになっています。「短い間でしたが」と去っていこうとする知。その時、将児が何かを見ます。
「何ですか? やめましょうよ。未練がましい」
別れ話でもしていたのかな。
将児が見たのは動く人形でした。ついに鍵道化師は人形を暴れさせる段階まで進んだのです。遊園地で無銭飲食をしたり乗り物のただ乗りをしたりと、やりたい放題です。やっていることは子供っぽいですが、持っているのは拳銃というのが恐ろしいです。
他にも、車で暴走したり、子供のおもちゃを奪ったり、スーパーで万引きしたり、爆弾でゴミ箱を爆発させたり、ドラム缶を転がしたり。
ゴーマの目的は地球侵略のはずですが、仕掛け方がみみっちいです(笑)。
そういえば、魂を抜かれた子供たちは放置しているけど、もうニードロブードロは諦めたのでしょうか。まあ、伝統行事だから形だけでもやるポーズが必要だけど、本当はそんなに乗り気ではなかったのかもしれません。
本部に伝えに走った将児と知が見たものは、座禅を組む道士と大五の姿でした。
なぜいたのに応答しなかったのかと怒る将児に、道士は静かに「座れ」と言います。いい声です。
亮とリンも現れます。この二人、また一緒にいたのか。
のんびりしていていいのかと怒る亮に、道士再び「座れ」と。
「今のお前らではゴーマには勝てん。相手の出方はわかっている。今なら大丈夫だ。座れ」
こんなに胡散臭いのに、しゃべり方だけで説得力を持たせられる道士・カクはさすがです。
全員、座禅を組んで座ります。
そして、そろって座禅のまま宙に浮かぶ!
五人の意識は中国の奥地へといざなわれました。ダオス文明の遺跡ということですが、遺跡の近くに立て看板があるのが気になります。観光地になっているのかな?
「四大文明よりも以前に、はるかに優れた文明がここにあった」
と。だからコピー機があったりパチンコ好きがいたりするんだね!
都は繁栄していましたが、ゴーマ一族が内乱を起こしたということです。ゴーマもダイもおそらく同じ人間(民族は違うかもしれませんが)で、妖力と気力は同じ力を言い換えているだけなのかなと思ったりします。流派が違うだけなのかなと。そう考えたほうがいろいろとしっくりきます。
「聞け。これよりダオス国家は、我がゴーマ一族が支配する」(シャダム)
「ゴーマに従うのだ」(ガラ)
「反抗する者は、死、あるのみだ」(ザイドス)
「反抗する者は、死、あるのみだ」ヒェーッ! シンプルだけどとても恐ろしい台詞です。このフレーズはなぜかずっと覚えていました。
「ゴーマを崇拝する彼らは、超能力・妖力を使い、残虐の限りを尽くした」(道士)
ここでのイメージ映像が怖すぎます。人間を跪かせて、首を切り落とさんとする様子……今(2017年)の世界情勢と合わさってとてもリアルです。せめて妖力でバーンッみたいにしてください、斬首刑は生々しすぎますお願いします。
そして道士・カクの他人事感が何とも言えません。
やがてダイ族も反抗を開始したと。遺跡の中に移動したりして、「道士・カクと行く、ダオス遺跡巡り☆」みたいになっています。
勝負は簡単にはつかず、お互いがお互いを殺し合い、ダオス文明は衰退し滅んだのだということでした。あまりに救いのない、悲しい歴史です。
「おい、みんな!」
亮が遺跡の奥の石板の砂を払っています。みんなが真面目に道士の話を聞いている中、一体何をしているのだね。
石板は五つあり、それぞれに気伝獣が描かれているのでした。
「気伝獣は闘いの最中突然現れ、ゴーマと闘う民衆の強い味方となった」
気伝獣がどういう存在なのか、最後までわからなかったのですが、このふわふわした感じが気伝獣っぽくてよかったです。ファンタスティックで妄想が膨らみます。
そして道士・カクは、ゴーマを放っておいた場合の未来のビジョンを見せます。縄でつながれて連行される民衆たち。その中にマサオくんとお姉ちゃんも。コットポトロがいきなりマサオを転ばします。このビジョン、道士が想像して作り上げているんだろうなあ。わざと知り合いの姿を使って残酷な映像を見せるというやり方、さすがです。道士のこの、ゴーマの侵略を止めるためなら手段を選ばないところがクールでしびれます。
不思議体験で改心したダイレンジャーたちは、ゴーマ打倒のために心を結束させます。
街に出て、人形たちを捕まえようとします。知が捕まえたお姫様の人形が、袖先から仕込みナイフを出してくるのが怖かったです。追いつめられた人形が泣き声をあげるところも不気味でした。人形は「ドアドアドア〜」と叫んでドアを出現させて、そこに逃げ込みます。このシーンは印象的でよく覚えていました。
大五だけ人形と一緒にドアの向こう側へ行きます。
そこは川のほとりで、鍵道化師がバカンスを楽しんでいました。
こんな余裕の態度ですが、戦闘になると強いです。
生身のまま、大五とアクションを繰り広げます。
一方、他のダイレンジャーたちはコットポトロと戦闘します。コットポトロたち、ローラースケートで襲ってきます。お前たちもなのか……っ!
亮は龍星王を呼びつけ、乗っかって大五を探しに出ます。
ピンチの大五のところに、みんなが駆けつけます。
「どうだい。今度こそ間にあったろうが」(将児)
まだドヤ顔できる立場じゃないぞ。これでなんとなく許してあげる大五は優しいです。
転身したダイレンジャーと、変化した鍵道化師&コットポトロのバトルが始まります。
「さあいらっしゃい」(鍵道化師)
この余裕が素敵です。シシレンジャーと鍵道化師は一騎打ちとなります。
「鍵道化師、天幻星・霧隠れ、受けて見ろ」(シシレンジャー)
「天幻星・霧隠れとは、霧を呼び、幻を作り出し敵を攻撃するシシレンジャーの得意技である」(ナレーション)
必殺技じゃなくて得意技なんですね。
「幻ドア」を作り出し、「そのドア、お前に開けることができるかな?」と挑発します。鍵を開けることにはプライドのある鍵道化師、受けて立ちます。こういう、自分の得意分野について素直なところがゴーマ怪人さんのよいところです。
「これだ!」と鍵を刺す鍵道化師を、「ふ〜ん」と眺める様子が面白いです。
しかし、すべてはシシレンジャーの罠だった……!
ドアを開けた瞬間、爆発が起こった!
いいのか!? 正義のヒーロー、それでいいのか!?
「貴様、卑怯だぞ」と鍵道化師側に言われてしまう始末です。それをスルーし、気力ボンバーを放つダイレンジャーなのでした。道士の手段の選らばなさをしっかりと受け継いでいます。
鍵道化師を倒したことで、子供たちの魂は解放されました。
ラストのナレーションでも言っていましたが、やっとダイレンジャーがダイレンジャーとして一つにまとまりました。最初から正義感バリバリじゃなくて、一人一人が誰かと関わって、その誰かを助けることで意識が芽生えていくところがこの作品の面白さです。