第九話目(最初から読む)。
これも重要エピソードです。ダイレンジャーは序盤から怒涛のように重要エピソードを投げ込んできます。
オープニングがさっそく大連王に!
冒頭、いきなり空から何かが降ってきます。流れ星のような、隕石のような光り輝くものが。よく見ると鏡です。何で今回の怪人はこんなロマンティックな形で現世に出てくるの。
ペットショップで動物に赤ちゃん言葉で話す店員が……。誰だ? と思ったら、大五でした。いつも真面目な大五さんのキャラクターが崩壊しています。騒ぐ動物に対して「何かいるのか〜?」と言うときのリアルさ。ああ、こういうしゃべりになるわ……と思いました。
その後の凛々しい顔とのギャップがまた面白いです。
大五が見た先には孔雀の羽が落ちていました。
ここでタイトル「うぬぼれるなッ」またもやすごいタイトルです。小さい「ッ」までついています。
海辺の岩場で座禅を組んでいる大五。普段から気を高めるトレーニングを積んでいて感心です。
赤ちゃん言葉の次は瞑想と、大五に次々と謎要素が加わっていく……!
さらに孔雀の幻まで出てきたよ! 制作者は大五を一体どんなキャラにしたいんだ!?
飛んできた孔雀から虹色の光線を浴びるシーンは異様です。
完璧にスピリチュアルな世界に入っています。
そして、
「誰だ? 俺の気に侵入したのは誰なんだ?」
気に、侵入した、だと……?
ところ変わり、街を歩く若い女性。全身鏡を見つけて覗き込みます。髪を手でとかしちゃったりなんかします。
その時、鏡から長い舌が出てきて女性に巻き付く!
そのまま鏡の中に飲み込んでしまいました。
巻き付く舌がリアルな質感っぽくてとても気持ち悪いです。
「鏡が可愛くてきれいな女の子を次々と飲み込んでる?」(将児)
ダイレンジャー本部にも情報が入ります。まあ間違いなくゴーマでしょうからね。ゴーマ以外にもこんなことをする存在があったら恐ろしいです。
「私が鏡を探して、試してみようか」(リン)
「馬鹿なことを言うな」(亮)
リンちゃん可愛い。そして亮のお兄さんみたいなたしなめ方。亮、こんなにリーダーっぽかったっけ?
ダイレンジャーはジェットマンとは違って最後まで戦隊内での恋愛描写はなかったのですが、ときどき妙に親しげな演出を入れてくるのが面白いです(一緒に雑誌読んでいたりとか女子大まで迎えに来たりとか
)。
道士・カクは鏡の正体を知っていました。さすが道士。歩くゴーマ辞典。
鏡の正体は「鏡化粧師」というゴーマで、「己の可愛さと美しさにうぬぼれる者を吸い取りエネルギーとする」
そうです。人間を吸い取ってエネルギーにするって、さらりと言っていますが恐ろしい内容です。
「冗談じゃありませんよ。そんなことされちゃ、この世に美人がいなくなっちまう」(知)
何というゲス発言。この正直さがダイレンジャーメンバーのいいところなのですが(笑)。
「うぬぼれる女か。隙だらけで願ってもない獲物だろうな」(大五)
大五はちょっとうぬぼれ女に軽蔑のあるような口調です。あとから思うとこの発言がよい伏線になっています。
「女好きのスケベ野郎、たたきのめしてやる!」(将児)
今回のゴーマ怪人さんはダイレンジャーから直々にスケベ呼ばわりされました。久しぶりに変態怪人の登場です。
しかし「そう簡単にはいかない」という道士。
鏡化粧師は、6000年前の闘いでダイ族の戦士・クジャクを倒したのだと。
「クジャクですか?」と怪訝な顔で聞き返す亮。
そこはそんなに食いつかなきゃいけないところなの? そりゃあ、まあ人間にしては変わった名前であるけども……。
クジャクはあらゆる災いを除く孔雀明王の化身なのだそうです。
つい最近まで、孔雀明王ってダイレンジャーの創作だと思っていたのですが、実在するようでびっくりしました。
孔雀明王の化身・クジャクは拳法の達人だった様子。この、6000年前の昔語りのときの、もやのかかった演出が好きです。
キャラクターの顔が陰になっているのも意味深で想像が膨らみます。
拳法の達人であるクジャクを倒したということで、鏡化粧師はかなりやり手であることがわかります。スケベだけど。
繁華街。
例の鏡を発見した男が、覗きこみます。本当にナルシストっぽい目つきや表情がとてもいいです。
その時、無表情の何人もの女性たちが鏡の中から覗き返してきます。普通にホラーです。
久しぶりに変態&ホラー回です。
見た瞬間、男性のナルシスティックな笑顔が驚きに崩れるのがうまいです。
男性、飲み込まれる! しかしすぐに吐き出されます。
鏡が変化、怪人体に。鏡化粧師の登場です。「おええええ」と吐き気を催しています。
「何だ、男のくせに! 6000年前には、自分の美しさと可愛さにうぬぼれるのは、女だけしかいなかったものを。まったく今時の若い男は!」
この台詞だけでもこの怪人がなかなか問題的な性格をしていることがわかりますね。
男は吐きだし、女だけ飲み込むというのが、完璧に下心にまみれています。鏡化粧師はゴーマ怪人の中でもダイレクトにスケベな怪人です。ダイレクトすぎて変態度という意味では少し下がりますが、変質者であることは間違いありません。
鏡化粧師さん、身振り手振りが激しくて観ていて楽しいです。
そこに現れるゴーマ三幹部。
「フフッ。鏡化粧師、それが無能な人間社会の男どもよ」
共感して部下のやる気を出させる、アーンド自分は違うぞアピールをするシャダムさん。
「早くうぬぼれのエネルギーを集めて攻撃し、目障りなゴミどもを片づけるがよい!」
先々週からやたら勢いづきだした、アーンド自分も違うぞアピールをするザイドスさん。それにしても「ゴミども」とはひどい……。美女は食べる、男と不美人は一掃する、なんつー世紀末な思想だ。
「言われるまでもない。……ガラ、相変わらず氷のような美しさだな」
ザイドスに偉そうに返した後、ガラに顔を向ける鏡化粧師。リジュがあいさつ代わりに褒めるような口調だったのに対し、めっちゃいやらしい言い方でちょっと引きます。というか、上司にため口どころか、呼び捨てかよ! あの口紅歌姫ですら「シャダム中佐」と言っていたのに。
「鏡化粧師。私はクジャクのごとき愚か者ではないということを忘れるな」
明らかに下心ありなセクハラ発言もさらりとかわすガラさんさすがです。
鏡化粧師は態度や発言からしてけっこうな年な印象です。私の中で年上で扱いの難しい部下(+セクハラ親父)でキャラクター確定してしまいました。この短い登場で性格付けがはっきりわかるのというのは素晴らしいことです。
日が変わり。
大五、女性を飲み込む鏡に遭遇します。
ここでも鏡の中から覗く無表情の女性たち。あの大五ですら一瞬、ひるみます。
しかし、すぐに態勢を整えて飛びかかるところがさすが大五さんマジカッケーです。
鏡化粧師、姿を現し、素早い動きで広場まで移動します。
「何者だ、名を名乗れ!」
「シシレンジャー、天幻星・大五!」
きちんと名を聴く、そして名を答える、というやりとりが「拳士」らしくて格好いいです。
「その型は獅子拳とみた」
「貴様の拳法は?」
「ゴーマ流化粧拳! いざ勝負」
型を見ただけで流派を判断する洞察力。しょうもなさそうに見える鏡化粧師なのに、拳法家としてはしっかりしているところに感心します。でかい態度ですが、それに似合うだけの実力のある怪人であるように推察します。
大五に型を聴かれ、しっかり答えるところも素敵です。「化粧拳」は型がしっかりとしていて見栄えがします。
拳法での闘いで、ピンチに追いやられる大五。そこにほかの4人が駆けつけます。蹴るわ頭突くわ旋風浴びせるわ炎浴びせるわと集団リンチ状態です。
鏡化粧師、起き上がると「邪魔が入ったなシシレンジャー。決着はこの次だ。うわっはっはっは」と優雅に歩きながら消えていきます。シシレンジャーとの一騎打ちにこだわるように見せかけて、自分の分が悪くなると威風堂々と逃げるところがいいキャラしています。
大五は去っていく鏡化粧師の背中に、クジャクの七色の気力を感じます。
虹色の気のことをみんなに話しますが、他の人には見えていない様子です。他のメンバーの「ちょっと……どうしようこの子……」みたいな空気が笑えます。
「僕たちには鏡化粧師だけしか」とちゃんと答える知、いい人です。
大五、再び海辺の岩で物思いにふけります。ダイレンジャーでよく出てくるこの岩場、彼らの住まいから徒歩何分の辺りにあるのか気になります。
「俺の気に侵入してきた虹色の気。鏡化粧師から一瞬放たれていた虹色の気。あれは鏡化粧師の気なのか?」と思い悩みます。即座に「違う! あの美しい気が鏡化粧師のものであるはずがない」
と。そりゃ、気持ちはわかるけど……はっきり言い過ぎです大五。
CM明け。「ダイレンジャー」ではその回に活躍するキャラクターがアイキャッチとして入ります。
ノリノリで住宅街に現れる鏡化粧師。
「化粧拳、うぬぼれ返し!」
彼のゲップに合わせて街中の人が覗いている鏡が割れるという大参事です。割れた破片が顔に飛び散るので本当に痛そうです。
鏡が割れるたびに笑うガラ、笑うシャダム&ザイドス(二人セット)が挿入されるのがシュールです。
なんかもう本当にさげすんでいる感じで実に楽しそうです。特にザイドス。
それにしても三人の中でガラメインが一番最初に来るとは。
意外な気もしますが、いきなりシャダムもあれですしザイドスなんてもっと困るし妥当な線かなと思いました。
最終的には高層ビルまで爆発させます。うぬぼれ返し、恐ろしすぎます。
「鏡化粧師のやつ、汚ねえゲップで無差別攻撃を始めやがった」(将児)
非情に真面目な口調でさらりと「汚ねえゲップ」というところが面白いです。
傷つき倒れる人々を見た大五の憤怒の顔がすさまじいです。
そして、気を静めるためか、海辺の岩場で座禅。「出てこいクジャク。俺の気に入り込んでくるがいい!」と念じます。現れた孔雀の幻から気を浴び、七色の光の中を飛ぶ大五。
鏡化粧師のところへワープするのに成功します。一騎打ちでの勝負をするかと思いきや、コットポトロを呼ぶ鏡化粧師。珍しく挿入歌としてエンディングが流れます。コットポトロを倒したところで鏡化粧師も戦闘に参加! 今度は剣を持っています。シシレンジャー(大五)はダイレンロッドで対抗します。大五、鏡化粧師の技を受けてピンチに陥ります。
こうやって見ていると、一対一では怪人のほうが強いことがわかります。6000年生きてきた百戦錬磨の戦士と、最近結成されたばかりの戦隊ではやはり差があるのかもしれません。5人でやっと敵を倒せるというのは、ある意味リアリティを感じます。
大五は得意の「霧隠れ」を使います。さあ、今度はどんな幻だ? 山手線か? 御堂筋線か?
鏡化粧師は360度ぐるりと妖力破を放ちます。しかし、すべて跳ね返ってくるっ。
霧の中から鏡を持ったリュウレンジャーが出てきたっ!
残りのメンバー全員鏡を持って霧から出てきたっ!!
幻を見せると見せかけてこの流れ。鏡化粧師だけではなく視聴者もひっかける見事な作戦でした。
その時、大五の頭に声が響きます。「私の気をめがけて、撃つのだ!」と。久しぶりに聞いたクジャクの声。こんなに可愛らしい声だったっけとびっくりしました。
「天幻星、ロッドアロー」
ダイレンロッドの先端が丸からアロー状に変わります。これ、天幻星の技なの? 他のメンバーはできないの? アローが獅子の角をイメージしているということだろうか。
「天幻星、ロッドアローとは、ダイレンロッドのアタッチメント、ヤイバーに気を集中し、どんなものでも貫く必殺技である」(ナレーション)
何だかわからんがすごいらしい。アタッチメントというやたら現代的な言葉がツボにはまります。
ロッドアローに貫かれて鏡化粧師の鏡が割れてしまいます。戦況不利とみなし、巨大化爆弾を投げる!
巨大化しても割れた鏡はそのままです。巨大化後はダメージがリセットされる、というようなことがない辺りがダイレンジャーの厳しいところです。
ダイレンジャー、さっさと気伝獣を呼び、さっさと大連王に変化します。
鏡化粧師の放つ妖力破の中を、ノーダメージでのっそのっそと距離を縮めてくる大連王さん、さすがです。距離を詰められて鏡化粧師、かなり焦っております。
覚悟を決めて、肉弾戦で戦おうとします。
しかし、相手は大連王。三発斬られ、疾風怒濤でとどめを刺され、あっけなく終わります。辞世の一言すら言わせてもらえませんでした。
とらわれていた女性たちは解放されます。女性たちをダイレンジャーみんなで支え起こします。大五も優しく声をかけていますが、心はどこか別にある模様。女性を将児に任せ(意識を取り戻して立ち上がるまでは介抱するのが偉い)、クジャクを探します。
大五の気に反応し、クジャクが崖上に姿を現します。この時の音楽が何ともドラマティックな旋律です。
クジャクの衣装は羽が輝きとても美しいです。
「孔雀明王は、災いを除くと同時に、命を延ばす力を持つ」
だから6000年経った今でも生きているのだと。この発言から、一般のダイ族は不老長寿ではないことがわかります。ゴーマは不老長寿のようですが……。
「俺の気に同調した気は、君の気なのか!?」
うなずく孔雀。自分の気に同調する気を持つ相手をずっと待っていたのだと。これは運命の出会いと言えそうです。
二人の世界。取り残される、他のメンバーたち。
「あなたがその羽を持つ限り、私は自由にあなたの気に入り込める」
「この羽が!!」
クジャクから送られた羽を掲げる大五の目が完璧にいっちゃってます。「クジャク……」イった目つきのまま呟きます。
クジャクの微笑み。横顔。それを見る大五のハッとした顔。クジャクの憂いを含んだ目。演出が凝っています。
ラスト、トリップしている大五の後ろで顔を見合わせる亮と将児が最高です。視聴者みんなの気持ちを表現してくれました。
いよいよ登場したクジャク。大五とクジャクの話は来週も続きます。来週はガラ中佐が生き生きと闘います。