記念すべき第一話(最初から読む)。
オープニング! 夕日をバックに空を泳ぐ龍星王が最高に格好いいです。
歌詞では「泣いてる君の 微笑み見たくて」という部分が特に好きです(この部分以外はダイレンジャーの説明に終始しているからもあるでしょうが)。
物語開始。
しょっぱなからヨーヨーをやりながら歌を歌う不気味な子供という濃い始まりです。
好きです好きです 心から
愛していますよと
甘い言葉の裏には
一人暮らしの寂しさがあった
(巡恋歌・長渕剛)
歌っているのが「巡恋歌」のフレーズという……この番組のおかげで私の中の「巡恋歌」は長らくホラーソング枠でしたよ。巡恋歌というチョイスも絶妙で紐男爵さんのセンスの高さを窺わせます。
子供向けヒーロー番組の冒頭が「好きです好きです心から……」というゴーマ族の容赦のなさっぷり。子供にそんなシビアな現実を突きつけないで。歌っているのが学童服・牛乳瓶眼鏡の子供というのがアンバランスで異質さを押し出しています。
そして中華料理店でアルバイトしている亮(リュウレンジャー)が出てきます。
店長に毒づいたりと、「よい子」じゃなさそうな性格です。口調が本当に嫌悪感に満ちていてちょっと怖い(笑)。
ゴミ出しに行く亮を見つめる、怪しい影。道士・カクの登場です。丸いサングラス姿……道士、怪しすぎます、道士。もう少し何とかならなかったのでしょうか。
と、ここでヨーヨー少年が登場。思わず眺める亮に、自転車が激突。散らばったごみを集めていると、顔見知りの女の子(由美ちゃん)が手伝ってくれます。
「ありがとう。いいよ。手、汚れちゃう」の言い方が亮らしくないくらい優しいです(笑)。由美ちゃんは今後登場しないし、亮と子供のふれあいは珍しいシーンな気がします(まだ先を観ていないのでわかりませんが)。
草陰から出てきた謎の触手に連れ去られる由美ちゃん。特撮番組というよりホラー番組です。「何だあれ!?」などという疑問より先に、引きずられる由美ちゃんを追いかける亮が格好いいです。
由美ちゃんはそのまま穴に引きずり込まれてしまいました。ランドセルと靴だけ吐き出される演出が恐怖をあおっていてグッドです。
触手は亮のことも追いかけてきます。怒涛の展開とアクションで飽きさせません。ここまで、開始わずか三分。素晴らしいテンポのよさで視聴者を引き込みます。勉強になります。
触手に襲われているところに、巨大な龍が現れます。龍の方を見て「うわー」と叫ぶ亮がツボにはまります。そりゃ、絶体絶命のところにこんなものまで飛んで来たら叫びたくもなるわな(笑)。
龍に連れ去られた亮は、謎の部屋で目を覚まします。砂嵐のテレビ、焚かれた香、砂時計のように積もる砂、机に刺さった刃物、宙に浮いた球……怪しすぎる空間です。扉から逃げると、誰も乗っていないバイクに追いかけられたりと、第一話の演出はホラー要素が強いです。
命からがら地上に出るものの、今度は謎の男たちに囲まれて連れ戻されてしまいます。彼らはのちの仲間たち(将児・大五・和)なのですが、この時点ではどう見てもヤクザか半グレが逃げた相手を連れ戻しにきたようにしかみえません。
ここにきて、やっと道士から説明が入ります。
「私の名前は、嘉挧(カク)」
自己紹介してくれたああ! ちょっと情報少ないけどもおお!
その後も「紐男爵」「ゴーマ」と未知の言葉を使って説明を続ける道士。「俺には関係ない」と至極もっともな発言をする亮。しかし、道士の説明は止まらない! 道士、スルー能力が高いです。
「ゴーマの妖力に勝つには気力しかない。お前はその力を秘めている」
「俺はそんな力持っちゃいないぜ」
亮の主張を無視して、構えを取る道士。この時の道士がなぜか若干微笑んで見えるのが面白いです。そしていきなり亮を気力で吹っ飛ばす!
「これが気力だ(ドヤァ)」
いや、そういうことを聴きたいんじゃない。
道士の相手の質問に答えないまま強引にことを運ぶ癖はこのころからだったようです。
そして、「精神を集中させればお前にもできる」と。必要最低限の説明を済ませ、刃物を投げつける! 投げるときの道士もちょっと微笑んでる!
亮は気力で刃物の軌道をそらします(特に説明はないがそういうことなのでしょう)。
他のダイレンジャーたちに称賛され、受け入れられることとなります。
そして、道士から一言。
「お前は今日からダイレンジャーの一員となる」
道士、道士ぃ、説明が足りない、過程も足りない! でも、仕方がない、だって道士・カクだもの……。
「もうすぐゴーマとの戦いが始まる。気力とは何か、ダイレンジャーがどんな戦士か。そのときよくわかるはずだ」
どうやら説明は意図的に放棄されたようです。
おそらく彼は「秘密主義で説明をしない」のではなく、「説明が苦手でできない」タイプなのでしょう。
口下手なのかという気もしますが、その割には「ゴーマを倒さなければ、人類は滅びる」と、拒否することへの罪悪感をあおって逃げ道を潰す手口は鮮やかです。
でも許しちゃう。だって、道士・カクだもの。
CMへのアイキャッチの後、リン登場。黒ぶち眼鏡に帽子、黒いコートと、変装としか思えない格好をしています。そういうところは叔父様譲りか!?
シャダムとザイドスも登場。あのファッションで普通に車で移動する様がシュールです。階級が下のザイドスではなく上司のシャダムのほうが運転するんだね。ザイドスは免許を持っていないのかもしれません。乱暴な運転の仕方がシャダムらしいです。
と、思ったら、左ハンドルの車だったので、運転しているのはザイドスでした! 外車だ、さすがゴーマ。運転が乱暴なのはザイドスなんだね。
二人は先に来ていたガラと合流。トランクを通してリンの様子を伺います。ドラえもんの道具みたいです。トランクの中にさりげなく巨大化爆弾がたくさん入っているところがイイです。
歩いているリン。しんみりした音楽と、自転車集団のギャップ、敵がチャリンコ暴走族のごとく自転車で追いかけてくるという図が面白いです。ちなみに、ダイレンジャーに自転車描写がやたら多いのは当時の中国を意識してだとかしないでだとか? 確かに中国の自転車大移動が話題になった時期がありましたね。そんなところに中国要素入れなくていいよ! 入れる要素ならもっといろいろあるだろ!
それにしても自転車の運転技術に感動します。地味にハイレベルなアクションです。
襲撃の途中でリンはダイレンジャーたちと合流。
自転車集団は最終的にコットポトロに変化。たくさんのコットポトロが真面目な顔で自転車こいでくる絵空は、なんというか、すごいです。
コットポトロ何人かから自転車を奪取し、ダイレンジャーも自転車で逃げます。自転車チェイス!
途中ではウェイター&ウェイトレスがコットポトロに変化し、お盆を投げつけたりも。コットポトロの動きは下級兵士の割にはキザで素敵です。
コットポトロからは逃げ切るものの、眼前に今度はヨーヨー少年が。少年は「巡恋歌」を歌いながら怪人・紐男爵に変化します。「一人暮らしの寂しさがあった」辺りで怪人体の声に変わる演出が好きです。変化した後もしばらく空の手でヨーヨーをやる動作をしているところも。紐男爵の気取った性格が表れています。
「わたくし紐男爵」
自己紹介は忘れない。さすがは男爵、紳士です。
「君たちを五目そばにしてさしあげる。心から愛してますよぉ!」
愛していると言いながら襲ってくる倒錯具合が怪人らしくて素敵です。
な、なんだこのダース○イダーのテーマ的なBGMは……。
五人は生身からスーツ姿へ初の変身を遂げます。ダイレンジャーのいいところの一つに、スーツの格好良さがあります。
気おされて倒れる紐男爵にさーっと寄ってきて、助け起こすコットポトロたちまじ紳士。彼らは自分の意志で動いたりしゃべったりと、人格がしっかりあるところが魅力的です。
「紐男爵、お前は俺が倒す!」(リュウレンジャー)
「ちょこざいな。カモンベイベー!」(紐男爵)
やだ、ヒモ男のくせに、ちょっと格好いい。
リュウレンジャー以外のメンバーとコットポトロのバトル。中国拳法がテーマにあるだけあって、殺陣がしっかりとしています。
今回に限らず、やたら金的を狙うのが好きなシシレンジャー。大五は人間体の時は大真面目なのに、シシレンジャーになったらなぜ攻撃にネタを混ぜるのか。幻総武線とか。
そして、リュウレンジャーと紐男爵の一騎打ちとなります。
「その構え、赤龍拳とみた。6000年の眠りから覚め、久しぶりに紐が鳴る!」
睨みあう二人。
「地獄の紐拳、受けてみろおお!」
飛びかかる紐男爵。
格好いいやりとりですが、いろいろとツッコミたい(紐が鳴るとか紐拳とか)。紐男爵はただのヒモ男じゃなかった……立派な拳法家だった……!
それにしても一体いつ、亮は赤龍拳を身に着けたのでしょうか。ちょっと前までただの中華料理店のアルバイトだっただろ。道士から訓練を受けたのでしょうか。
拳士としてのバトルかと思いきや、劣勢とみるや剣を抜くリュウレンジャー。このころから君はそうだったのか。紐男爵は陣と違って器が広いのか怒りません。まあ彼の触手攻撃も人間からすれば武器と同じくらい理不尽ですからね。
触手で縛られ動けなくなったリュウレンジャーは、気力で落とした武器を引き寄せます。
「来い!」(紐男爵)
引き寄せた剣で触手を切り落とすリュウレンジャー。転び、痛がる紐男爵。そりゃ、こうなるだろ! 「来い!」じゃないよっ。※「来い」ではなく「ずっこい」と言っているらしいです。「ずっこい」は「ずるい」という意味なので、それならわかります。
「天火星、稲妻炎上破!」
「天火星、稲妻炎上破とは、気力で炎と稲妻を呼ぶ、必殺技である」(ナレーション)
ナレーションでいちいちに説明が入るところが面白いです。このときの説明は普通ですが、たまにひどい技の説明があります。
倒された紐男爵は、触手の口先から子供たちを吐き出します。さらわれたのは由美ちゃん一人ではなかったようです。由美ちゃんだけ靴下で、他の子たちは靴を履いたままなのが芸が細かいです。靴とランドセルを吐き出したのは亮に向けてのパフォーマンスだったのでしょうか。そうだとすれば悪趣味です。
巨大化爆弾を投げる紐男爵。よく見ると、爆弾のピンを抜いた部分、ゴーマの目のマークになっています。こんなところにまでこだわりがあったなんて、感動です。
紐男爵が巨大化するといういまだかつてないピンチ。うろたえるダイレンジャーをしり目に、道士・カク、座禅で空を飛ぶ!
アカン。これは、今の時代は、アカン。
それを抜きにしても、この座禅シーンはどういう意図なのか? リュウレンジャーにテレパシーを飛ばす様子のイメージなのか? 謎です。
飛んできた龍星王に乗っかり(頭に足場がついているところが気になる)、紐男爵に立ち向かうリュウレンジャー。そこにナレーションがかぶさって第一話終了です。
エンディングは、変身スーツ姿のダイレンジャーがそれぞれのバイクで走っている様子です。単純な映像ですが、今見ると、道路を封鎖しての撮影だったのがわかりますし、凝っているな〜と感心します。
彼らのヘルメットは道路交通法的にオーケーなのでしょうか(劇中の話として)。気になります。
序盤は、ゴーマ三幹部をシャダム中心で行くかガラ中心で行くか定まっていない雰囲気がありましたが、予告編で映るのはシャダムです。やはりこのころからシャダム中心で進める向きが強かったのかもしれません。
見ながら感想を書いていたら想像以上に長くなりました。
改めてみるとテンポの良さとボリューミーな内容に感心します。
紐男爵の怪奇的でシュールなキャラクターは、ダイレンジャーの方向性を決定づけたと思います。異様な怪人と熱い拳法が同じ作品内に混在できたところが今作品のすごいところです。