『五星戦隊 ダイレンジャー』〜18. (秘)の白虎ちゃん〜
1993〜1994年公開(日本)
監督、小林義明・坂本太郎・小笠原猛・東條昭平・渡辺勝也
脚本、杉村升、荒川稔久、藤井邦夫、高久進、井上敏樹
地球侵略をもくろむ妖力使いゴーマ族と、気力を操るダイレンジャーが地球を守るために戦う。
※ネタバレあり
第十八話(最初から読む)。
前回からの続きで、コウ(キバレンジャー)メインの回となります。
今回のOP冒頭の挿入は、阿古丸と地獄の三人官女です。自転車後の挿入も三人官女。これ、前回も同じカットでは? 繰り返しが何だか怖かったりおかしかったりと妙な気分にさせます。
コウは上着の中に白虎真剣を隠しているのですが、絶対に服からはみ出すだろうとツッコみたくなります。ツッコんだら負けか。
意味もなくキバレンジャーに変身するコウ。はしゃぎまわります。スーツでスケボーを操る姿がアンバランスで実におかしいです。
倒れてもピースしたりと、見ているこちらが恥ずかしくなるようなはしゃぎっぷりです。
しまいには気力を使ってスカートめくりをするという暴挙まで。「パン・ツー・マル・みえ」というフレーズ、懐かしすぎる。
スーツ姿でこういうイタズラをするヒーローってなかなかいないので新鮮と言えば新鮮です。
中でも野球のグラウンドに唐突に乱入するのはシュールです。しかもフェンスを突き破るほど人を吹っ飛ばすなんて……シャレにならない。これにはさすがに白虎真剣も怒り、説教タイムに。お調子者ですが、超えたらいけないラインをしっかりわきまえています。しかしコウは白虎にさるぐつわをかませて口封じしてしまいます。恐ろしい子供です。
タイトル「(秘)(ひみつ)の白虎ちゃん」。
男衆を連れてマンションに向かうリンのシーン。
「冗談じゃないわよ。私の弟だとか言って、勝手に部屋を出たり入ったりしているのよ」
さらっと言っていますが、わりと深刻な事態です。
「スペアキーも作っちゃってさ」(リン)
「図々しいやつですね」(知)
ずうずうしいってレベルじゃないよ!
部屋に行くと、なんとコウが保護者を連れて引っ越し準備をしていました。
保護者曰く、コウの母親とは昔から親しくしていたと。
「けど、5年前に亡くなってから、ずうっとこの子の面倒をみてきたんですよ」(義母)
「母ちゃん死んでないよ! 行方不明になっているだけじゃないか!」(コウ)
昔観たときは思いませんでしたが、改めて観ると、義母の言い方にはなんとなくイヤミっぽさがある感じがします。コウが新しい家で邪険にされていたというのは、案外本当なのかもしれません(コウのほらだと思っていましたが)。
義母・義父は荷物を置くと、さっさと出て行ってしまいました。
「ちょっと一体どういうつもりなのよ!」(リン)
リンの訴えを無視して、コウは屋根裏部屋に消えていきます。無音で足が画面上部に消えていく演出が面白いです。
「許さないもんね。絶対、追い出して見せる。みんなも手伝ってよね」(リン)
深刻な事態ですが、言い方は可愛いです。
コウが持っているゲームボーイの大きさに驚きます。自分はポケットゲームボーイからの世代なので。
屋根裏部屋、ハンモックと、わくわくする要素たっぷりです。わざとそういう要素を盛り込んでいるのか、ダイレンジャーの刷り込みによりこれらにわくわくを感じるようになったのか、考えたりします。
白虎に「本当にここに住むつもりか?」と聞かれ、「ここにいればダイレンジャーの動きがわかる」とコウは答えます。そういう理由だったのか。
「正体がバレたらどうすんだ。わかったぞ。お前あのぺちゃぱいに惚れたな」(白虎ちゃん)
「そんなことないよ」(コウ)
「赤くなった赤くなった!」(白虎ちゃん)
「うるさいな!」
コウ、白虎ちゃんをぶん投げる! そこまでガチ切れせんでも……。
正体を隠したいのは、やっぱり子供だと馬鹿にされるからということでしょうか。
所変わって。寺で対峙するゴーマ三幹部と阿古丸。
「この始末、どうするつもりだ。え、阿古丸!」(ザイドス)
「偉そうな口を叩いて、キバレンジャーは出現してしまったわ」(ガラ)
前回、ザイドスとガラは阿古丸と直接会話していないイメージと書きましたが、さっそくどやしていました。
大人げない人たちだ……。
阿古丸も負けてはいません。常に阿古丸を扇で扇いでいる三官女がいい味を出しています。
「私の狙いは最初から、キバレンジャーの正体を暴き、ゴーマに引き入れることだったのさ」(阿古丸)
「馬鹿な。そんなことができるはずがない」(シャダム)
「父上、私はあなたが憎い。あなただけじゃない、私を捨て、行方をくらました母親もだ」(阿古丸)
シャダムがしゃべったことで阿古丸にスイッチが入ってしまいました。
奥さんに逃げられて育児放棄とは……悪の幹部のわりにクズっぷりが微妙に生々しいよお。
阿古丸、皮肉ですが、「ふん!」と鼻で笑う所作が父上にそっくりです。
「キバレンジャーは10歳前後の子供、右腕に虎の形のやけどのあとがある」と阿古丸。めっちゃ調査能力あるな。しかしこれだけわかっていて、誰なのかまで特定できていない謎。
「この手がかりで探し出せ」(阿古丸)
「承知」(指輪官女)
「承知」という言い方に雰囲気があります。「承知いたしました」とかではないところに、親しみを感じます。
そして再びリンの部屋。「コウちゃん」と突然優しくなったリン。「あなたと暮らすことにした」と。気持ちが悪いくらいの変わりようです。誰が考えても何かあります。
「本当!? ありがとうリン姉ちゃん!」(コウ)
コウはませていますが無邪気に喜ぶ姿は子供らしいです。明らかに裏がありそうなのに素直に信じていて可哀想です。打ち明け話まで始めます。
「ボク、本当のこと言うと、ずっと寂しかったんだ。だって、面倒みてくれたおじさんおばさんの悪口を言うのはアレだけど、二人とも、本当のおじさんやおばさんじゃないでしょ? いつも邪魔もの扱いされていたんだ」(コウ)
そんな悪い人たちには見えませんでしたが、外面が良いということなのでしょう。
コウの問題的な性格を考えても(邪険にされて寂しくて非行に走るタイプ)、リアリティがあります。何より、リンに受け入れられたタイミングでの告白なので、嘘ではないと思いました。
今まで熱血と勢いで進んできたダイレンジャーに、こんな重たい設定を入れてくるなんて。
と、なんとコウの母親から電話がかかってきます。喜ぶコウ。
しかし、すべてはリンの罠だった……!
正体は女声を出している将児だったのです。電話中の将児のなまめかしい動作が面白いです。が、笑っていいのか迷うほど残酷な作戦です。世の中にはついたらいけない嘘があるだろ……こういうところからも、ダイレンジャーが決して優等生の集まりではない、普通の若者集団なのだということが感じられます。
電話を受け取ったコウの「母ちゃん!!」のテンション。本当に恋しかったのがわかります。
「リン姉ちゃん、母ちゃん帰ってきた! 迎えに行ってくる!」(コウ)
嬉々として部屋を飛び出すコウ。コウの去った後、これまた嬉々として喜ぶリン。お前には人の心というものがないのか(´;ω;`)
クローゼットから将児以外の男衆が登場。コウの荷物を運び出します。
「あんな嘘ついちまって。なんだか、可哀想じゃねえか」(亮)
亮はコウに同情的です。自分も親を亡くした生活をしてきたので、思うところがあるのでしょう。
亮やリンがしゃべる横で、さりげなくタオルをくるくる巻いている大五
……後のシーンでは、頭に鉢巻として巻いていました。芸が細かいです。そして真面目キャラの大五が鉢巻を巻くというのが笑えます。
トラックにコウの荷物を積み、大五・知・亮で移動します。
「女っつーのは残酷だよなあ。子供の気持ちを踏みにじって平気なんだからよ」(亮)
このあたりから亮とリンの関係にほころびが出てきたに違いない(完全に付き合っている前提)。
そのとき、トラックの前にパンツ一丁の少年たちが!! 何かから逃げています。
メンバーは車を降りて騒ぎの方向へ向かいます。
そこで見たものは、銭湯で少年たちの服を剥がす地獄の三人官女だった……ッ!
ゴーマは男女平等変質者組織だったようです。
三人官女はやけど痕を探すために活動しているのですが、だからって銭湯を襲うなんて発想がなぜ出てくるのでしょうか。横着というべきか、合理的というべきか。
「ゴーマ!」
「やはり貴様たちか!」(大五)
「一体何を企んでいるんだ!?」(亮)
それはそうも聴きたくなる。 「お前たちの相手をしている暇はない」
と言い残し、三人官女は姿を消します。
応援を頼まれ、マンションを飛び出したリンは、コウと鉢合わせます。
口を固く結んだコウ、立ち止まるリン――ここのシーンの無言の間に胸がきゅっとなりました
。よい演出だったと思います。 「お姉ちゃんのバカーッ」
と泣きながらしがみつくところは本当に心が痛みます。
「東京駅行ったけど、母ちゃんいなかった。ボクを騙したんだな! どうしてだよお!」(コウ)
「だってあなたが、私の部屋から出て行かないから」(リン)
「そんなんないよ!」(コウ)
どうしてリンが騙したとわかったのでしょうか。将児が口を滑らしたとかでしょうか。リンも白状しなくてもいいでしょうに。
「ぼくお姉ちゃんのこと、お姉ちゃんのこと好きだったのに!」(コウ)
走り去るコウ。会ってすぐなうえにほとんど邪険にされているだけだったのに、何で好きになったのか不思議です。まあ子供の可愛い一目ぼれ、ということなのかもしれませんが、後の展開も考えるともう少し説得力を持てるシーンが欲しかったところです。
さすがのリンも罪悪感を抱いたようで、コウを追いかけます。
コウの行動はめちゃくちゃですが、リンのやったこともかなりひどいです。
追い出したいにしても、こんな残酷な作戦にしなくてもよかったのにと思います。リンはグホンと二人で暮らしてきたということなので、母親への思慕だとか、コウの寂しさだとかにイマイチピンとこなかったのかもしれません。おそらくグホンからは寂しい思いをさせられることなく大切に育てられたのでしょうし。
走るコウの前に、イヤリング官女が出現。すいーっと滑るように近づいてくる様が恐ろしいです。袖をめくられ、やけど痕が露出。キバレンジャーであることがバレてしまいます。
そして出ました、子供たちのトラウマシーン。
お母さんといっしょ、焼きごて編の始まりだよ〜。 前にダイレンジャーを見たときは、ジェットマンの後に続けて鑑賞したので、「小田切長官なにやってはるんですか」
という気持ちになりました。
コウが小田切長官――もといお母さんに焼きごてを押されるシーンはとても印象的で、ずっと覚えていました。恐ろしいシーンなのに、物語中で何度も何度も挿入されるんですよね
……。
終盤まで、コウのお母さんが怖くて仕方がなかったです。
的場陣&師匠の崖シーンに並ぶインパクトとトラウマ具合です。
ピンチのコウをリンが助けます。「逃げるのよ」と言われて、元気よく「うん」といい駆け出すコウ。さっきまでもめていたのに物分かりがよいです。
イヤリング官女の技で吹き飛ばされたリンを、亮がお姫様抱っこで受け止めます。無駄に格好いい(笑)。ダイレンジャーがそろいます。
イヤリング官女の元にも姉二人が現れ、三人官女がそろいます。
ダイレンジャーの名乗りは全員格好良いのですが、特にリンは滑らかで美しいと思います。
名乗り終わるまで待っていてくれる三人官女、さすがです。
逃げたコウは、安心したのか道で突っ立っています。そこを阿古丸の乗った人力車が横切るのがシュールです。 「お前も行け」
と促す白虎真剣。しかしコウは、
「やだよ、怖いよ」
切羽詰まった様子でもなく、まるで学校が面倒だからさぼっちまえというようなライトな返事! 可哀想な子供だと思ったけど、やっぱりクソガキです。しかし、
「遊ぶ時だけ転身して、それでも男かよ!」(白虎真剣)
「でも……」
このシーンでは、本当に怖がっているんだということが伝わりました。見栄を張っているけど、やっぱり子供なのだなあと。白虎も残酷です。 「大好きなリンをあのままにしておいていいのか」と叱咤されます。
傷つきピンチに陥りながらも闘うリンを見て、覚悟を決めるところは偉いです。
「コウ」と笑顔で呼びかけるリンの映像が挿入されますが――そんな関係じゃなかっただろ! おかしいだろ!
それともこのように本当は優しく呼びかけられたかったという妄想なのか。そうだとしたら切ないです。
転身したキバレンジャーは、リンを助けます。リンの代わりにイヤリング官女との一騎打ちに。ここでテロップ「キバレンジャーVSイヤリング官女」。赤い文字が物々しいです。
闘いの最中に胸にタッチするところがコウらしいです。
「ごめんごめん」(キバレンジャー)
「失礼な!」(イヤリング官女)
イヤリング官女の返しが往復ビンタなところも面白いです。彼女にはもう正体がバレているからか、白虎のアテレコではなくコウがそのまましゃべっています。
キバレンジャーの気力技も発揮されます。その名も「吼新星・乱れやまびこ」。
それはいい、それはいいのだが。
「レッツゴー、やまびこバンド」
!(´・ω・`)?
「吼新星・乱れやまびことは、気力で、あらゆる音を自在に操り、増幅し、敵にダメージを与える、キバレンジャーの得意技である」(ナレーション)
謎のロックバンドがノリノリで音楽を奏でる姿と、人一倍大きな耳を抑えて苦しむイヤリング官女が交互に現れます。
さらにはディスコのようなところで踊るバブリーな女性の姿まで。
ラストはやたらビジュアル系なボーカルのアップ。
「サンキュー」
お前、誰だよ。
「変幻星・幻山手線」並みの理不尽さです。
しかし効果は抜群で、瀕死となったイヤリング官女は姉たちに連れられて退散します。
キバレンジャーの正体がコウだと気づいていないダイレンジャーは活躍を絶賛。こういうところも面白いところです。
阿古丸のところに三人官女が帰ってきます。阿古丸は「イヤリング官女!」と負傷した姿を心配しています。三人官女の姉妹仲の良さを考えても、ゴーマ族の間にも絆があるのは間違いないでしょう。 「キバレンジャーの正体は”あの子”です」と言い残し、力尽きるイヤリング官女。「あの子」から、コウにたどり着く阿古丸の洞察力まじすごい。
阿古丸、お気に入りの巻取り笛をへし折り、めちゃくちゃ怒っています。
闘いが終わった後、語り合うコウとリン。
「しばらくのあいだ、一緒に暮らしましょう」(リン)
「え、本当!?」(コウ)
「今度は嘘つかない」(リン)
喜んでいいのか、コウ、また罠かもしれないぞ……! ここですぐに信じられるのが子供の柔軟さだと思います。
絶対に胸を触らないこと、と約束させられるコウ。しかしその後にスカートめくり……。
10歳といえば小学校高学年です。さすがに笑ってすましてはいけない年齢ではないかと。
今では無理そうな演出に、古き良き時代を感じます。
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