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『五星戦隊 ダイレンジャー』〜12. 豆腐で酔ったァ 〜
1993〜1994年公開(日本)
監督、小林義明・坂本太郎・小笠原猛・東條昭平・渡辺勝也
脚本、杉村升、荒川稔久、藤井邦夫、高久進、井上敏樹  


 地球侵略をもくろむ妖力使いゴーマ族と、気力を操るダイレンジャーが地球を守るために戦う。


※ネタバレあり

 

 第十二話目(最初から読む)。
 
知(カズ)の初メイン回になります。

 知がごひいきにしている手作り豆腐のお店が、唐突に売れなくなるところから事件は始まります。それどころか、ご近所の主婦から家に石を投げられる始末です。

「豆腐を食べるとひどい目に遭うのよー!」
「つぶれちまえー!」

 窓を割られるひどい状態です。
 いかなる理由があれど異常行動だと思うのですが、
この主婦たちの異常性については最後まで納得のいく答えは得られませんでした。

 タイトル「豆腐で酔ったァ」。
 豆腐で酔うという設定が謎すぎて面白いです。なぜ豆腐だったのか、これも最後まで謎でした。

 美容室で働く知。相変わらずマダムに愛想を振りまいています。そこに豆腐屋の娘(まち子)が豆腐を持ってきます。

「まち子ちゃんちのハンドメイドの豆腐、本当にうまいね」

「ハンドメイド」という言い方が知らしいです。かと思えば、「うまい」とちょっと乱暴な言い方なのも興味深いです。知は上品キャラというよりは「スカした」感じですね。

 まち子ちゃんから、「このままだと豆腐屋がつぶれてしまうかも……」と相談を受けます。そのときちょうど、外を怪しい集団が通りがかります。

「こんな会社やめちゃおう〜♪ こんな会社やめちゃおう〜♪」

 酔っぱらった大勢のサラリーマンと、それを引き連れて歩く白塗りで山高帽の大道芸人。よく見るとサラリーマンたちは豆腐を食べています。

「こんな会社いたっていいことないし、こんな会社いたから幸せ逃げた♪」

 か、歌詞が重たい……っ。
 集団の中にはまち子ちゃんのお父さんもいました。

 知は、大道芸人が車を蹴り返したのを見て、ゴーマだと判断します。

「貴様をゴーマと見た」
「そのとおり」

 大道芸人は怪人・豆腐仙人に変化。口元が昆虫のようで独特の不気味さがあるデザインです。

「おぬし酔拳を使うのか、面白い」(豆腐仙人)

 知のキリン拳(酔拳)の構えを見て、豆腐仙人も酔拳の動きを取ります。キリン拳は独特の酔ったような動きが個性的です。彼や彼の使う酔拳をメインとして見られるこの話は貴重です。
 そして生身での酔拳バトル! 途中でキリンレンジャーに転身するものの、叶わずやられてしまいます。

「ふはは、また会おう!」

 倒れたキリンレンジャーをしり目に、豆腐仙人は姿をくらましたのでした。ゴーマ怪人は勝てる勝負でもとどめを刺さずに去っていくことが多いです。とどめを刺すとなると「殺し」ですからね……よくよく考えると、毎度毎度、何の躊躇もなく怪人を殺しているダイレンジャーのほうがヤバい気がします。

 知はまち子の父から話を聞きます。
 石を投げてきた主婦を追いかけて行ったところ、新顔の豆腐屋に会ったと。この豆腐屋、肌色が白く、目が不自然に見開かれ、まるで人形のような不気味さです。それが何人も現れて自転車を運転しながら笛を吹いています。完璧にホラーです。豆腐屋自転車集団に囲まれ、周りをぐーるぐーるされるお父さん。そのうちに酔っぱらってしまったというのです。

 怒ったまち子ちゃんが飛び出したところ、今度は酔っぱらった主婦集団に遭遇します。お互いに豆腐を食べさせ合いながら「こんな家庭捨てちゃおう〜♪」と歌っています。「亭主も子供も捨てちゃおう〜♪」これ、子供が見たら相当に恐怖だと思います。現状に不満を持ち「幸せ逃げた」と言う父親、「子供を捨てる」と言う母親――大人の本音を見せられたような気持ちになります。

「あんたたち、うちの商売にケチつけてどうするつもりよ!」

 まち子ちゃんにタンカを切られて、豆腐屋たちが一斉に顔を上げます(これがまたコワイ)。そしてコットポトロに変身。自転車に乗りまち子ちゃんの周りをぐーるぐーる。本当にダイレンジャーは自転車が好きです。助けに来る知。そして大五と将児も現れます。
 知がコットポトロの相手をしているとき、豆腐仙人が大五と将児に立ちはだかります。そして火炎を吹きかけた後、ラッパで霧状になった酒を浴びせます。
 酒を浴びせられ続けた二人は酔っぱらってしまいます。
 笑いながら両手をバタバタさせる将児もヤバいですが、普段真面目な大五の酔っぱらい方は破壊力がすごいです。
 二人を酔っぱらうだけ酔っぱらわせて、豆腐仙人は姿を消します。こうやって見ていると、ゴーマ怪人たちは、邪魔をされれば相手をしますが、積極的にダイレンジャーを殺そうとはしていないことが多いです(因縁のできた口紅歌姫は別として)。彼らの任務の中にダイレンジャー抹殺は含まれていないのかもしれません。あるいは彼らなりの流儀や美学があるのかもしれません。

 本部に連れて帰られた大五と将児。酔っぱらう二人を見るときの道士の目つきがすごいです。考えられないものを見たかのような目つきです。
 そしてお説教タイム。

「ばかもの! お前たちがゴーマの怪人にやられたのは、心に甘さがあった、油断があったからだ」

 いつもの精神論です。酔っ払い相手だからか、口調がかなり激しいです。それでも二人は酔っぱらい続けて効き目が薄いようです。「お、お、俺か!」自分を指さしながらうへうへ笑う大五が面白いです。だめだこいつ、早くなんとかしないと。

「ゴーマの怪人は酔拳を使う。キリン拳の使い手の僕としては、ヤツを許せない。キリン拳で必ず倒す!」

 ダイレンジャーの、この、よくわからないポイントで怒りを感じて「自分が倒す!」とこだわり始めるところが好きです。知にもこんな熱いところがあるのだね。

 巨大な土管がたくさんある場所。その土管の中で、豆腐仙人は湯豆腐を食べていました。
 そこに現れる知。勝負だ、と言わんばかりに構えをとります。しかし、豆腐仙人はゆるいです。

「キリン拳のお兄さん。俺と飲み比べをしようじゃないの」
「何?」
「お前は断れないのよ。もしノーと言ったら、あの女の子の命はないのよ」

 土管の上をみると、そこには囚われたまち子ちゃんが。そこまでして飲み比べしたいのかよ!!

 そしてまち子ちゃんの頭上には、クレーンでつるされた巨大な豆腐があります。

「豆腐は柔らかいと思うだろう。だがゴーマの豆腐は違う」

 いや、柔らかくてもこのサイズが降ってきたらただでは済まないかと思います……。

 巨大豆腐を試しに落とし、土管を粉々に壊して見せます。ゴーマ族、どんだけあごが強いねん。

「俺との飲み比べに勝ったら、あの子の命は助け、俺は潔く自爆する」

 潔く自爆と言いますが、君たちの自爆は巨大化爆弾だろっ! 潔いっていうのかそれは!?

 そして突然土管の上に現れるシャダム。「ダイレンジャー!」

「人間とは愚かなるものよ。嬉しいと言って酒を飲み、悲しいと言ってまた酒を飲み、アルコールの毒で頭がむしばまれ、怠惰な人間になっていく」

 唐突に始まるシャダム中佐によるアルコール批判!
 や、やめてくれー、具体的で現実的な表現を混ぜるのはやめてくれー。

「だから俺たちゴーマが人間を堕落させ、滅ぼしてやる!」

 アル中に親でも殺されたかのような勢いです。とにかく理屈をこじつけて人間を滅ぼすことを正当化しようとするところが悪役らしいです。そもそもゴーマはどうしたいんだろう、侵略がしたいのか? ゴーマ族以外を殲滅したいのか? 「快楽の園」ってどんな状態を理想としているのか? いろいろと謎です。

「そうはさせない!」
「ほーう。では豆腐仙人と飲み比べをするんだ」
「いいとも」

 知、シャダムの謎の煽りによってついに飲み比べをオーケーしてしまいます。
 だんだんシャダムのキャラがわかってきました。言葉で人(や怪人)を誘導するタイプなんですね。『北風と太陽』なら太陽派。チンピラ臭いのに頭脳派だ。ただのチンピラではないのは後々の展開を考えると納得のできる性格付けではあります。
 それにしても何でこんなに飲み比べをしたがるのか。そんなに飲み比べに自信があるのか。
 これだけアルコール批判をした後に飲み比べをさせるというのが悪趣味です。

「これは見ものだ。はっははは!」

「見ものだ」と言いながら、姿を消すシャダムさん。そこは形だけでも見ていきなよ……戦わせるために煽っていただけで興味ないのがバレバレじゃないか……。
 それでも豆腐仙人は、「嬉しくなっちゃった」と喜んでいます。本音なのか場を盛り上げるためなのかはわかりませんが。
「オーイ酒」と言われ、手際よく机と椅子、お酒と飲み皿を持ってくるコットポトロたち、優秀です。

 CM明けは浴場にパンツ一丁で寝かされている大五と将児で始まります。ここから見始めた人は何事かと思いますよ。

「覚悟はできてんだろうな!」(亮)

 思い切り何度も浴槽に頭を突っ込まれる二人。何から何まで今の時代ではできない演出です。

 一方、知と豆腐仙人の飲み比べが始まろうとしていました。アルコール度数90%だというゴーマ酒の説明は聴くだけで恐ろしいです。説明に合わせてジェスチャーをするコットポトロたちがノリが良くてナイスです。

「飲むぞ〜」(豆腐仙人)
「いっき! いっき! いっき! いっき!」(コットポトロ)

 いっきコール……これも今の時代は絶対にできないですね(笑)。飲むのが上司、煽るのが部下というところはいいなと思います。
 お酒を飲んでいい気分になっている豆腐仙人に知が一言。

「もう酔っぱらっちゃったの。だらしがないですね」

 知は眉の動きなど、表情がわざとらしくてキザなところが魅力です。この回で知の性格やキャラクターがかなりわかり、魅力がアップしました。
 次は知の番です。飲む知を「いっき、いっき!」と煽る豆腐仙人とコットポトロたち。笛までふきだして楽しそうです。
 お酒を飲み干した知は、酔っぱらって倒れてしまいます。それを踏みつける豆腐仙人。手にはどでかい包丁を持っています。さっきまでの和気あいあいとした雰囲気は何だったんだ。唐突に残酷になるところがやっぱりゴーマ怪人です。
 知の酔っぱらった顔が本当に気持ちよさそうです。

 落とされる包丁の刃を寸前で受け止め、豆腐仙人に蹴りを入れる知。立ち上がると服の汚れを払い、口笛を吹きます。この口笛を吹く様子が知らしいです。音楽もキマっているし、知のキャラクターがこれでもかというくらいに出ていてよい演出でした。

「やれ、コットポトロ!」

 しかし、コットポトロたちはなぜか同士討ちを始めます。それどころか豆腐仙人を蹴り倒す! なんとコットポトロの中身は大五・将児だったのです。酔っ払いから復活した模様。
 
二人を見た豆腐仙人が「俺、酔ってんの〜?」とコットポトロに聞くところが面白いです「少し」と、明らかにめちゃくちゃ酔っているのに気を遣った返事をするコットポトロもナイスです。

「ミーが飲んだのは、すり替えたお水ですよ」

「だましたなあ! 女の子をやっつけろ!」

 この状況でも「女の子」と上品に呼ぶのがちぐはぐです。土管から突き落とされるまち子ちゃん。えらいことです。なんとそのまま落ちてしまいます。その上にさらに巨大豆腐が――。
 間一髪のところでリュウレンジャーが豆腐を真っ二つに斬って助けます。

「ゴーマ豆腐、破れたり!」

「破れたり!」じゃないよっ、突き落とされる前に助けてやれよっ。けっこうな高さだったぞ。

 五人全員、転身! それぞれの技を駆使してコットポトロたちと闘います。相変わらず金的を狙いたがるシシレンジャー。
 キリンレンジャーは豆腐仙人と一騎打ちとなります。豆腐仙人、盾と剣を使って戦うという今までにはない怪人のスタイルです。酔っぱらってはいますが普通に強いです。

「冷ややっこ水平斬りーー!」

 豆腐を水平に斬るイメージ映像挿入。

「お次は湯豆腐さいの目斬りーー! ちょいちょいちょいちょい」

 豆腐をさいころ型に切り刻むイメージ映像挿入。

 地味に残酷な演出やめてください。

 キリンレンジャーはヒョウタンを使って応戦します。「これでも飲みなさい」と、ひょうたんに入ったお酒を飲ませ続けるというシュールな技。そして素直に飲む豆腐仙人。
 
豆腐仙人が完璧に酔っぱらったところで、新たな技が!!

「急性二日酔い・頭痛拳!」(キリンレンジャー)
「急性二日酔い・頭痛拳とは、キリンレンジャーの特製気力酒を相手に飲ませ、悪酔いさせて攻撃する必殺技である」(ナレーション)

 _人人人人人人人人人人人人_
_> 急性二日酔い・頭痛拳! <_
   Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^YY^Y ^Y^Y

 技でも何でもないだろという技をやたら詳しく説明するナレーションが最高です。
 キリンレンジャーの猛撃! 豆腐仙人の昆虫みたいな口をつかんでひねるのが痛そうです。

 そして宣言通り自爆(巨大化)する豆腐仙人。

「二日酔いが治った!」

 巨大化爆弾にはある程度の治癒能力があるのかもしれません。
 それか、体が大きくなったことで、アルコール濃度が下がったか。

 華麗な動きで大王剣の一発目を交わす豆腐仙人。
 炎を吐き、大王剣を奪い、攻撃し返すなど、善戦しています。
 しかし、「大王剣、大放電」という技で、剣から電流を流されてしびれてしまいます。剣を取り返した大連王に疾風怒濤をくらい、ジ・エンドです。
 最期が辞世の句ではなくラッパの音というところが、豆腐仙人らしいと同時に、何か怖いです。どこから音が出ているんだ? 

 闘いが終わった後は、復帰したまち子ちゃんのお父さんと共に豆腐を売るダイレンジャーたちで終わります。
 一人、オープンカーに乗って手伝いをサボり、豆腐を食べている知が彼らしいです。

 この回を見ていると、知はけっこういいキャラをしているのに出番が少なくてもったいないな〜と思いました。後半は亀夫との絡みで独自の立ち位置を形成していきますけども!



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