第七話(最初から読む)。
次話と併せて物語の中でも重要な位置を占めるこのお話。それだけではなく、いろいろとツッコんではいけない、でもツッコミたい、
そんな問題エピソードです。
いきなりすさんだゴーマの三幹部から始まります。シャダムがギリシャ彫刻のような天使の蝋燭台をぶっ叩く。
ゴーマ宮ではなく日本での拠点っぽいですが、三人のうちの誰の趣味で持ち込んだのでしょうか。廃工場みたいな場所にギリシャ彫刻があるというアンバランスさがゴーマらしい趣味でいいなと思います。
気伝獣復活に対して次々に愚痴るシャダム・ガラの後に、黙って腕組みするザイドス。いつも腕組みしているのが面白いです。ザイドス、よく見るとアイシャドウをしっかり塗っていて、武骨な見かけによらずオシャレさんです。
どよ〜んとする廃工場に突然高笑いが響きます。
蝋燭台の火がすべて消え、霧の中、神輿を担いだコットポトロたちが現れました(和服っぽい服を着ています)。コットポトロの手で花びらが巻かれます。とても幻想的で妖しい雰囲気です。そしてゴーマらしい怪しさたっぷりです。
三幹部、ハッとして並びます。今度はガラがセンターです。シャダムとガラは同じ階級だから、順番にセンターを務めているのでしょうか。もしや、口紅歌姫は女怪人だったから、シャダムがセンターだったのか!? やはり、異性をセンターにすることで印象を上げる戦略、という読みは当たっているかもしれません。
神輿の前に赤い絨毯が敷かれ、三幹部のところまで伸びます。出てきたのは奇妙な靴を履いた僧侶のような格好のおじいさん――「大僧正リジュ」です。「ダイレンジャーにだいぶてこずっているようじゃのう」と言われ、「何ですって?」とガラが気分を害します。というか三人ともこのじいさんに気分を害している模様。
「相変わらず美しいのう、ガラ」
険しい視線を向けられても相手をほめることを忘れないなかなかの紳士です。ここのシーン、さりげなくあごを動かしてリアクションしているガラさんが好きです。
「聞け、三人とも。わしがここに来たのは、お前たちを助けて、ダイレンジャーを潰すためだ」
何この人、優しい。
しかしシャダムは申し出を断ってしまいます。
「手出し無用。作戦を任せられたのは我々三人だ。たとえゴーマのそば近く使える大僧正リジュでも、そんな身勝手は許されない」
せっかく手伝ってくれると言っているのに、可愛げのない対応です。身勝手なんて、あんまりな言いぐさじゃないか。メンツだとか、評価だとか、いろいろあるのでしょうが。
どうやら大僧正リジュはかなり偉い人のようです。宗教家は諸々の階級を凌駕するのですね。
「そんなことを言ってもいいのか? ゴーマは怒っているぞよ!」
ゴーマが怒っていると聴かされ、うろたえる三人。鍵道化師も「ゴーマはお怒りよ」の一言でいうことを聴いていたし、よほど怒ると怖いと見えます。
まだ出てきていない「ゴーマ」がどんな存在であるのか、得体が知れないので余計に恐怖を感じます。
リジュは「ダイレンジャーを倒すにはまず道士・カクを倒すのだ」と。なるほど、的確な判断です。
「出ませ!」
掛け声と同時に、何やら黒い鎧の男が現れます。今までの他のゴーマ怪人とは違い、人間体も戦闘服で格好いいです。
全身黒い鎧、顔もマスクで覆われたこの男、「鉄面臂張遼(てつめんぴちょうりょう)」といいます。
「馬鹿な、奴は信用できん。そもそもやつは……」(シャダム)
「死ね、張遼!」(ザイドス)
ザイドス、ここにきて初めて自らの意志で大きく動く!
いきなり張遼を妖力ビームで殺そうとします。しかし、ビームはあっけなく張遼に跳ね返されます。壁にできた大穴を見て、目をまん丸(本当にまん丸)にするザイドスの反応が最高です。
そして、驚くガラの後ろでさりげなくため息をつくシャダム(笑)。「あ〜あ、やっちまった」みたいな感じです。演技が細かいです。
「ほっほ」と笑いを浮かべるリジュ。
「勇ましいのザイドス……ばかもん!」
リジュ、手から妖力を飛ばし、ザイドスを壁まで吹き飛ばします。
「人の大事な可愛い弟子をいじめるなんて、謝ってちょうだい!」
リジュさん、いいキャラです(笑)。
床をのたうつザイドスに、さらに妖力を浴びせようとするリジュ。なかなかの鬼畜です。それをシャダムが手で制します。シャダムさん優しい。
攻撃をやめたリジュは、ザイドスに近づきます。
「痛かったかザイドス。可哀想にな。ふほほほ」
痙攣しているザイドスの頭を両手で包むように持ち上げ、優しく語り掛ける姿に狂気を感じます。自分でやっておきながらこの態度。そして高笑い。これぞゴーマ一味、というクレイジー具合。2話の感想で怪人は紐男爵が好きと書きましたが、大僧正さんも好きになってしまいました(怪人体もいいデザインなんだよなあ)。
張遼は、実は、ダイ族の戦士だったのが寝返ってゴーマに入ったという設定です。それでザイドスはこんなに敵意むきだしなのでしょうか。
しかしね、君の仲良しにも元ダイ族だとかダイ族と交際していたのだとかけっこういるんですけどねえ……。すべての真実を知ったらザイドスが人間不信になりそうです。
それにしてもキレ方が普通じゃないので、ダイ族だったこと以外にも嫌われる理由があるのではないかと勝手に思っています。張遼、何かやったんじゃないでしょうか、ザイドスに。
シャダムも「やつは信用できん」と言っていますが、「ゴーマに入るなんて言っても結局ダイ族は裏切る」という認識が彼の中にはあるのかもしれません。
ここで衝撃のタイトル「裏切り者ォッ!」。
亮は妹と両親の墓参りに来ています。両親はすでに亡くなり、妹と二人寄り添って生きているようです。亮の家族がやっと明らかになります。
亮は最近、父親の夢を見るようになって、墓参りに来ようと思ったようです。夢の中で、どうしても父親の顔を思い出すことができないのだと。しんみりくる話です。
一方、将児とリンは一緒に買い物に出かけています。「何で恋人でもないのに俺がお前の荷物持たないといけないんだよ」といいつつ持ってあげている将児が優しいです。しかし、和やかなのもつかの間。二人は鎧姿の張遼に遭遇するのです。
さすが張遼、今までのゴーマ怪人にはない迫力と落ち着きがあります。
何もないところから現れたからか、将児は一見してゴーマと判断します。
「来い」(張遼)
「行くぜ!」(将児)
一方的に飛びかかるのではなく、こういうやりとりが、敵との間にもあるのが素敵です。
転身して攻撃する二人ですが、張遼に跳ね返されてしまいます。知・大五も現場に到着。亮はまだ着きません。しかし張遼は強く、まったく歯が立ちません。気力での攻撃技をすべていなし、さらに強化した同じ技でやり返してくるのです。カカシ先生(NARUTO)の写輪眼みたいです。
「天風生・一文字竜巻!」(リン)
「逆一文字竜巻!」(張遼)
という具合に。ゴーマなのに気力を操り攻撃してくるのです。
かと思えば、妖力も使ってきます。この点から、気力・妖力は後天的なトレーニングで身に着けられるものであることがわかります。区分で言うと空手・柔道、みたいな感じなのではないでしょうか。
「気力・妖力、合体。爆裂、大地震」
なんと地割れが起き、ダイレンジャーたちは飲み込まれてしまいます。恐ろしすぎます。
一人、助かった将児に、張遼はカクへの伝言を頼みます。「三人を助けたければ、カク自ら地獄谷へ来い」と。「地獄谷」という響きがすごいです。
というか、ここまで圧倒して倒せるなら、「カクを倒す」にこだわらなくても、そのまま全員倒してしまえばよかったのではないだろうか。最大の目的はダイレンジャーを倒すことで、そのためにまずカクを……ということなのだから。張遼の性格だとか、リジュとの関係だとかの片鱗が見え隠れします。
ああでも、今のメンバーを倒しても、カクが生きていればまた別の人間で戦隊を組むか。
張遼が去った後、やっと亮がたどり着きます。「亮、遅えよ」の言い方がすがるような感じでグッドです。
「鉄面臂、張遼?」
道士の口調に複雑な感情を感じます。
道士は、6000年前の闘いの時にも気伝獣を操る5人の戦士がいたこと、張遼がその一人だったこと、しかしダイ族を裏切りゴーマ族に寝返ったこと、それが原因で残りの戦士は罠にはまり気伝獣も姿を消したこと、を教えてくれました。「罠にはまり」としか表現されていませんが、要するに、命を落としたのでしょう。6000年前の争いは血なまぐさい描写が多いです。
一人だけ6000年も生きながらえたことに怒りを燃やす将児。遅刻に責任を感じた亮は、自分が張遼を倒すと意気込みます。そんな亮を、道士は。
「ちょっと来い亮」
騙し打ちのように別室に閉じ込めてしまいます! 亮が部屋に入った途端、すさまじい勢いで扉を閉める道士、さすがです。
「お前たちのかなう相手ではない。私が行く」
そして将児には亮の番をするように頼み、単身、張遼の元へ向かいます。
「将児、道士一人で行かせて、お前平気なのか!?」
「平気じゃねえよ」
「こないだラーメンおごっただろ。コーヒーもおごったじゃないか」
「コーヒー代は自分で出したじゃねーかよ!」
真顔でコーヒー代まで上乗せする亮、しかしちゃんと覚えている将児。
「俺だって出してやりてえよ。でも道士がお前をこんなところに閉じ込めるなんて、よっぽど理由があるんだぜ」
だんだんとわかってきました。質問に答えない。あえて説明をしない場合、しないことに意味があるのです。そこには事情があるのだと、相手を信頼してその意思を汲むことが大切なのだと。視聴者に道士は大切なことを教えてくれているのだ……! もちろんそのためには、信頼関係を築くプロセスが必要なわけだし、その信頼を裏切ることをしてはいけないことが前提にあるのですが。
亮には道士の想いも、将児の想いも届きません。汚い手段を使い、将児を騙して扉を開けさせてしまいます。本当にダイレンジャーは問題児揃いだよっ!
一方、地獄谷。
知・大五・リンの三人は棒にくくられています。リジュも張遼も登場時、周囲が霧や煙に覆われるので、今回もその煙なのでしょうが、もわもわしていて温泉のほうの地獄谷みたいになっています。
道士・カク、現れます。道士が外を歩いているだけでも珍しいのに、戦闘に出るというのは本当に貴重です。
「久しぶりだな、カク」
「張遼、なぜ我々を裏切った」
「今更話しても仕方がない。強いていうなら、真の強さが欲しかったからだ」
このやりとりから、道士が6000年前から生きていたことがわかります。道理でダオス文明の歴史を見てきたように語るわけだ。
そして「話しても仕方がない」といいながら、教えてくれる張遼。どうやら張遼はバトルマニアだったようです。
「気力と妖力は光と影。光あるところに必ず影がある。二つの力を合わせることで、真の力を得ることができるのだ」
「たしかに気力と妖力は光と影だ。だが光がなければ影は生まれぬ。気力こそ、すべてを包み込む真の力だ」
道士が言うと、説得力があるような、ないような。道士だからこそ、言える発言なのかもしれませんし、深いやりとりだなと思います。
言葉ではわかりあえず、戦闘が始まります。道士・カクの闘う姿を初めて見ることができます。いったい、どんな闘いを見せてくれるのか……!?
構え合う二人(そこにたどり着く亮)。
睨み合う二人。走り出す二人。いざ、勝負――!
シュババババババ。
!(´゚д゚`)?
目にもとまらぬ速さでぶつかり合う黒い影。唐突に合成が入り、あっけにとられます。道士の殺陣を見ることはできなさそうで、残念です。
二人の力は拮抗します。
赤子の手をひねるようにダイレンジャー4人をやっつけた張遼と、互角にやり合っていることで、道士の強さがわかります。
「妖力。火炎地獄」
炎の技で攻撃してくる張遼。爆発で吹き飛ばされてもすぐに態勢を整えなおす道士、さすがです。
そのとき、仲間を助けようとした亮がコットポトロに襲われてしまいます。「亮ーー!」気を取られてしまった道士。張遼から攻撃をされてしまいます。「隙ありぃ!」ってやつですね。
道士は刀で何度も斬られ、地に伏してしまいます。
転身して張遼に飛びかかる亮。しかし、一発で元の姿に戻るくらいのダメージを受けてしまいます。
とどめを刺そうと近づく張遼。絶体絶命です。
「やめろ」(道士)
「死ね小僧」
「やめろ!」(道士)
そのとき、道士の口から信じられない言葉が出ます。
「その子は、亮は、お前の息子だ!」
!!!!
張遼の動きが止まります。この時の、張遼の表情が、目しか見えない張遼の表情が何とも言えません。目だけでこれだけ感情が伝わってくることに驚きます。
ここで終わり、次回へと続きます。
こんな重たい話が7話目で訪れるところがダイレンジャーのすごいところです。
道士はめちゃくちゃ強いはずなのに、戦闘に出ると負けてしまうことが多いイメージです。肉弾戦も強いは強いが、彼の本分はどちらかといえば頭脳プレイなのでしょうね。
次回はさらに驚きの展開が待っています。