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クロックロの感想文〜鑑賞作品への率直なレビューです〜

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クロックロの日記 


『夜は瞬膜の此方』

 ※ネタばれ含む




 須和野お父さんとお母さんが海に行くお話。


 海は二人が結婚の前にデートに行った場所で、思い出の場所です。
 若いころの二人の様子が出てきますが、ほわわんとしたお母さんと、緊張しきっているお父さんの図が面白いです。お父さんが惚れての付き合いだったのでしょうね。

 海を見たことがなく、一目見たいと思ったチビ猫は、勝手についてきてしまいます。
 その日はお母さんが結婚前からずっとあこがれていた海辺のホテルに泊まる予定だったのですが、猫連れだったので断られてしまいます。
 そのことでお母さんは怒ってしまいます。
「水虫のお客だってガイガー探知機で調べて拒否すべきだわ 無菌の人間だけを収容すればいいのよ」
 チビ猫は自分は外で一匹でも平気だというのですが、もちろん人間たちにその言葉は通じません。
 ぎすぎすしてくるお母さんとお父さんの空気。無言で二人と一匹は海を見ます。


「チビが海をみてる チビがはりつめてねっしんに海をみてる 海もチビをみてる 十九年前わたしたちはここで海と猫のようだったと思う」

 この表現がとても好きです。
 お父さんは、自分が外で猫を見ているから、お母さん一人でホテルに泊まるという選択もあると提案しますが、お母さんは拒否します。

「今日だけ君が独身にかえってあのホテルにとまるって方法だってあるんだ」

 お父さん優しいです。惚れます。そしてお母さんが怒っているのはチビ猫の存在を否定されたことなので、そんなことでは気持ちは収まらないというのはわかります。そしていくら憧れていても、そんなホテルには泊まりたくないということも。
 それに、

「今日だけ独身に帰れって言ってもむりだわよ」

 二人はその日、結局どこにも泊まらずに夜遅くに家に帰りました。
 チビ猫は帰った後、野良猫たちに海について話したのでした。
 みんなで海について語り合う姿がいいです。見慣れている海がとても特別なもののように感じます。チビ猫のような感性をずっと持ち続けていたいものです。




『猫草』

 ※ネタばれ含む




「これは猫捨てだと思う。でもぼくは帰る。猫捨ての家に」

 家に赤ん坊が生まれたためにそこの猫が捨てられてしまうお話。これだけでとても胸が苦しくなります。
 昔は実際にこういうことがあったと聞きますが、あまりに無責任な話だと思います。猫一匹可愛がれない、責任を持てない家族が人間の赤ちゃんをまともに育てられるとはとても思えません。
 といっても、この物語では、初めから猫(ビー)を捨てようと考えていたのではありません。ビーが赤ちゃんにけがをさせてしまい、それが原因でビーは捨てられてしまうのです。
 けがをさせた理由は、お母さんが疲れているのに赤ちゃんが泣き出しそうで、どうにかそれを防ぎたくて慌ててしまったからです。させようと思ってさせたけがではありませんでした。ただ、新生児の親がとても気にするのは理解できます。捨てなくてもよかったとは思うけれど……。お母さんは猫が好きだったけれど、周囲からいろいろと言われたり、慣れない育児でいっぱいいっぱいになったりしてしまったのでしょう。
 赤ちゃんが生まれた途端、それまで自分に注がれていた愛情のほとんどが赤ちゃんに向けられるようになりました。そんな猫の寂しい姿(しかもまだ子猫)が描かれていて読んでいてつらかったです。何があっても愛情が偏ってはいけないと強く思いました。

「でもなぜぼくは帰るんだろう 猫捨ての家へ」
「やさしい食卓は やさしい手は やさしい膝は やさしい目は あの日で完全に終止符をうたれたというのに」

 こんなことを思いながらも家を目指すビー。家では赤ちゃんだけが眠っていました。ほかの人は出かけているようです。赤ちゃんの顔には包帯が巻かれていて、ビーは反省をしました。
 そのとき赤ちゃんが「ビーアソボ ビースキ」と語りかけてきたのです。それを聞いて、何度猫捨てに会おうとも外が寝床になろうとも家の近くで暮らすことを決意します。いつか大きくなった赤ちゃんと一緒に遊ぶために……。
 最後にほんの少しだけ救いがありますが、何度読んでも胸が張り裂けそうな気持ちになる話です。




 ↓他の話の感想↓(◎お気に入り)

(単行本の一巻を持っていないので『ピップ・パップ・ギー』以降の話となります)
『綿の国星』 ◎
『ピップ・パップ・ギー』『日曜日にリンス』 
『苺苺苺苺バイバイマイマイ』◎  
『八十八夜』『葡萄夜』  
『毛糸弦』◎  
『夜は瞬膜の此方』『猫草』  
『かいかい』『ド・シー』『ペーパーサンド』  
『チャーコールグレー』◎ 『晴れたら金の鈴』  
『お月様の糞』◎  
『ばら科』  
『ギャザー』◎  
『ねのくに』  
『椿の木の下で』◎  


 

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