『毛糸弦』
※ネタばれ含む
思春期真っ盛りな高校二年生の女の子「蜜柑」と暮らす、ダンディな雄猫「ニャーニャ」。四年前に拾われてから、ずっと彼女を見守っています。
「四年間で蜜柑は俺の親になり姉になり友人になり妹になりしたが 昔も今も恋人であることは変わらないと思う」
なんて考えているニャーニャ。そうは、そうはいかないのが綿の国星だよ!
蜜柑はニャーニャと一緒に学校をさぼって猫の真似をしたり、毒入りパンを食べて死ぬと思って遺書を書いたりといったことを公園でして遊んでいました。
馬鹿なふるまいをしながら、蜜柑は猫を見て成長しない自分について思い悩んでいます。
「猫はだれにも信用されずに日なが一日 光を浴び風の梶をとって歩いたり走ったり寝転んだりする そうしてその目でより細密にこの世のシャッターを切りつづけているのだもの」
こういう詩的な表現がこの漫画は多くて楽しいです。
蜜柑は猫の真似事を途中で切り上げ午後から学校に行きます。ニャーニャもついていきます。そして学校は保健所に似ていると考えます。
蜜柑は蜜柑でハプニングが起こります。彼女の学校にはワルだと噂される三年生「ハヤカワ」がいました。そして、その日の午前中、ハヤカワも蜜柑のいた公園におり、彼女の奇行をすべて見ていたというのです。遺書まで見られてしまい、さらに放課後の呼び出しを受けて蒼白になる蜜柑。ニャーニャはなぜ蜜柑がそんなにショックを受けているのかよくわかりません。
学校の先生にまで注意を受け、取り乱してしまいます。
放課後の呼び出しを無視し、家に帰る蜜柑。ニャーニャは不良・ハヤカワに「さいならノラ犬さん あんたも気をつけたほうがいいぜ 保健所はあんたを殺しにかかってるんだ」と心の中で呼びかけるのでした。しかし、ハヤカワ君、なんと家までついてくるではありませんか。
これにはニャーニャも激怒。威嚇して追い払おうとしますが、なぜかハヤカワ、ニャーニャの真似をしてきます。そんなハヤカワの姿を見て、彼は本当にただの不良なのだろうかと蜜柑は考え出します。
そして、蜜柑の母が呼んだ警察がハヤカワを補導しようとします。
二階の女子の部屋に忍び込もうとしていると決めつけられ、怒鳴るハヤカワ。
「あんたらに一昼夜かかって説明してもそうやって答えはもうかってにだしちまうんだ!!」
蜜柑はハヤカワをかばい、警察を返します。そして何の用なのかを聞きます。
「おれさ あんたの映画とりたい」
という驚愕の申し出。公園で猫とふざけている蜜柑を見て、素質があると思ったのだそうです。
「カメラはあんた自身の目になって 天にうつり地にうつり〜(中略)〜銀幕にこの世の全てのものがはっきりと生き生きとかがやくんだ」
なんともロマンチックな話です。噂は噂、不良は不良ではなかったのです。
こうして蜜柑はハヤカワと青春の一ページを描くこととなったのです。
ニャーニャは蜜柑の心が自分を離れるのを感じ、いっそ一思いに頸骨を噛み、殺してしまおうかとすら考えます。
おそらくは葛藤の末、蜜柑は生きながらえ、ニャーニャとともにハヤカワの映画に出演することとなりました。
自分が老衰したのちも、スクリーンの中では自分と蜜柑は輝いている。それを見て蜜柑は自分を思い出す。そのことを思い、ニャーニャはハヤカワを許し受け入れるのでした。
人間に恋する猫。猫から離れて人間と恋するようになる人間。それを受け入れる猫。
テーマとしては第一話に近いかもしれませんね。
猫がこんなことを考えているのだと思うと、何だか切なくなります。動物と人間でも近すぎず遠すぎずの距離感は大事かもしれないと思いました。
一緒に映画を作る、というのはロマンチックでいいなと思いました。
↓他の話の感想↓(◎お気に入り)
(単行本の一巻を持っていないので『ピップ・パップ・ギー』以降の話となります) 『綿の国星』 ◎
『ピップ・パップ・ギー』『日曜日にリンス』 『苺苺苺苺バイバイマイマイ』◎
『八十八夜』『葡萄夜』
『毛糸弦』◎
『夜は瞬膜の此方』『猫草』
『かいかい』『ド・シー』『ペーパーサンド』
『チャーコールグレー』◎ 『晴れたら金の鈴』
『お月様の糞』◎
『ばら科』
『ギャザー』◎
『ねのくに』
『椿の木の下で』◎

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