『ピップ・パップ・ギー』
※ネタばれ含む
この話は、須和野お父さんが小説に行き詰って苦しんでいる話です。
チビ猫は道を歩いている幹事猫(マジッシャン)に相談したところ「ピップ・パップ・ギー」と呪文を唱えるとよいとアドバイスを受けます。
チビ猫の呪文のおかげ(?)で出口を見つけるのですが、小説に没頭するお父さんにお母さんが「さよなら」というのが印象的でした。
私は物書きなのでどちらかといえば「あっち側」に行ってしまう立場ですが、残される側からすると「さよなら」なんだよなあ……と。
また、猫マニアのお母さんの出てくるお話でもあります。
猫マニアと違って常識的な普通のお母さんで、息子の奇行にほとほと困っています。
それでも、たまに帰ってくる息子にご飯をふるまい、食べている様子を見て、息子が口を開けるたびに一緒に口を開けてしまって、それを息子に指摘されて……と、ほのぼのしています。
お母さんは世話を焼きたがり、子離れできていない様子。息子もまた、銀猫(ラフィエル)と母親に共通点を見出して……親離れできていない様子です。
そうして、猫マニアは再び銀猫を探して旅に出てしまいました。
ほほえましいのか、何なのかわからないエピソードでした。
二枚目なのに猫にばかりかまけている自称詩人。ラフィエルを追いかける悪役ポジションのはずですが、憎めなくていいキャラをしています。
須和野お母さんも、猫マニアお母さんも、共有不可能な違う世界に旅立った大切な人を待っているんですね。
そして、チビ猫に呪文を教えてくれたマジッシャンは実はラフィエルでした。猫マニアに捕まらないように変身していたのです。
マジッシャン(ラフィエル)の魔法によってか? チビ猫の呪文の効果か? 須和野お母さんとチビ猫は、その日、同じ夢を見ました。
共有できないはずの世界をひとときでも共有できたのです。
『日曜日にリンス』
※ネタばれ含む
魚泥棒の野良猫が初登場する話です。この野良猫、切れ長の目で、突っ張っていて、美学を持っていて、陰があって、好きなキャラクターです。
次話『苺苺苺苺バイバイマイマイ』では主要で出てきます。
『日曜日にリンス』ではチビ猫は魚屋で人間と同じように魚を買おうとして、ことごとく失敗してしまいます。チビ猫が失敗するすきをついて、魚泥棒は魚を盗んでいたのでした。
チビ猫はほかの野良たちから魚泥棒のレクチャーを受けます。
「みんなのマーケットつくったらどうかな 鳥のすきなものとかねずみのすきなものとか 犬のすきなものとかならべて それでお金 とらないで売るの 鳥がはいれるように天井をとってさ 猫もあひるも犬もとれるように棚をもっとひくくして」
なんて妄想するチビ猫が可愛いです。
この話ではチビ猫は魚の空き缶を探してあちこち出かけるのですが、空き缶をみつけたものの出歩きすぎて迷子になってしまいます。嵐の中、なんとか帰巣本能によって家まで帰り着きます。
そして思うのです。
「わたしみんなに今日の話したいよ あたしがどんなにアキカンが大事だったか そんでそれよりどんなに須和野家が大事だとわかったか」
↓他の話の感想↓(◎お気に入り)
(単行本の一巻を持っていないので『ピップ・パップ・ギー』以降の話となります) 『綿の国星』 ◎
『ピップ・パップ・ギー』『日曜日にリンス』 『苺苺苺苺バイバイマイマイ』◎
『八十八夜』『葡萄夜』
『毛糸弦』◎
『夜は瞬膜の此方』『猫草』
『かいかい』『ド・シー』『ペーパーサンド』
『チャーコールグレー』◎ 『晴れたら金の鈴』
『お月様の糞』◎
『ばら科』
『ギャザー』◎
『ねのくに』
『椿の木の下で』◎
(クロックロの書斎LINEスタンプ)
▲ホームへ戻る
▲クロックロの感想文へ戻る
▲一番上へ戻る |