『ハリー・ポッターシリーズ』〜愛は地球を救えるか?〜
1999年出版(イギリス)
著作、J・K・ローリング
伯母夫婦の家でいじめられながら居候していたハリー・ポッター。
あるときやってきた大男に連れられて、魔法学校に行くことに。自分が魔法使いの血を引く者で、また魔法世界では「名前を言ってはいけないあの人」を撃退した奇跡の子供として、有名であることを知る。
※ネタバレあり
(この感想は、2008年に書かれたものです)
『ハリー・ポッターと死の秘宝』を読み終わりました。ハリー・ポッターシリーズ完結。
すごくよかった。感動した。そして話の作り方のうまさに驚愕した。
けれど、感想を聞かれると、スネイプが可哀想というのと、ジェームズへの憎しみが一番初めに出てくる。
こんな感想は間違っているかもしれないけど、感想だからな。仕方がない。
私は、初登場から一貫してスネイプが好きで、周囲のスネイプへのあまりに冷たい仕打ちに怒りすら覚えていた。だからシリウスが死んだときも、素直に悲しむことが出来なかった。
こういうスネイプへの仕打ちも、最後への布石だったのか。
スネイプは、「賢者の石」のとき、ポエムを使った守りの魔法を行っていたところで好きになった。
ただの嫌な奴じゃない、文化人でロマンチストなんだなと。
ヴォルデモートを現代、倒すことができたのは、たった一つの奇跡的な事実があったから。そして、それをハリーの代まで維持させ続けたのは、スネイプの愚直なまでの騎士道精神に他ならない。ダンブルドアは、よくこんな不確定なものにすべてを賭けることができたよ。
ダンブルドアとヴォルデモートは、スネイプのゆるぎない騎士道精神を、競うようにしぼり取りあった。哀れなスネイプは、雑巾を絞るように、最後の一滴までそれをしぼり取られてしまった。
「僕を見て――」
あんまりだわ。
ダンブルドアが悪魔のように見えたのは私だけなのだろうか……彼が悪いわけじゃないのはわかっちゃいるが……。
読み終わって、ハリー・ポッターがイギリスの物語であるのだと強く認識した。これは間違いなく、騎士道精神に裏打ちされた物語だった。
ジェームズゥゥ! お前にここまでの騎士道精神があったのか!?
お前はただ、戯れにスネイプの尊厳を傷つけてみたかっただけではないのか!?
そんなことまで思ってしまった。
だいたい、スネイプを宙吊りにして「見ろよ、こいつのパンツ、黄色いしみができてるぜ」「なあ、この下も見たい奴いるか?」とか何とか言っていた時点で、「アカン、アカンわこいつ……」と思った。
結局、ハリーは、父のことを偉大な人だと思ってはいたけれど、父はハリーの願うほどには立派な人物ではなかったのだろう。ただのよくいる、少年だったのだ。
『20世紀少年
』にたとえるなら、ジェームズ、シリウスはケンヂ、オッチョグループ。スネイプはカツマタくんって感じ。
ハリーも嫌なところのある少年だと思っていたけど、ジェームズの事を考えると、まだまだ全然いい子だったわ。
あとは、しもべ妖精クリーチャーとレギュラス坊ちゃまにも感動した。シリウスの弟のレギュラス、まともに出てこなかったけれど、ちょっとのエピソードで人柄がよく伝わってくる。
ヴォルデモート一味も、悪人でありながら人間らしく描かれている部分には好感が持てた。
あのべラドリックスですら、ナルシッサの前ではわずかにもお姉さんらしい態度になるし。また、 ヴォルデモートを最後の最後まで信じ、愛し続ける姿は魅力的にすら思えた。女性キャラなら一番好きかな。
ヴォルデモートがやたらナギニ(蛇)を大切にしているのが意外だった。ものとして大切にしているよりは、慈しんでいるように感じられる部分がある。
星のちりばめられたシャボン玉の中でふよふよ動くナギニを映画でどんなにするか気になる。
ほかにも思うことはいろいろとあった。
マルフォイ、お前はまだ奴らとつるんでいたのか、とか。
ロンのお母さん強すぎだろ、とか。
なんかネビルが進化してる、とか。
ハリー・ポッターは、一貫して母親の愛というものが非常に重要な位置を占める物語だった。
リリーのハリーを思う気持ち。
ナルシッサのドラコを思う気持ち。
モリーおばさんがロンたちを思う気持ち。
そういうたくさんの愛が、孤児で母親の愛を知らなかったヴォルデモートを打ち負かしたのだ。
国民性の違いなのか、受け入れがたいシーンとかもあるにはあったが、全体的には非常に面白い作品でした。
個人的に最も驚いたのは、最後の展開、謎解きが、身内の推理していた内容とドンぴしゃりだったこと。すげえ。
自分にないものをすべて持っていて、自分の一番奪われたくないものすら奪っていった――。その憎しみはいかほどか。
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