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クロックロの感想文〜鑑賞作品への率直なレビューです〜

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クロックロの日記 


『八十八夜』

 ※ネタばれ含む




 家出をしてきた純血種(シャム猫・ライラックポイント)・キャラウェイとチビ猫が仲良くなる話です。

 キャラウェイは今まで一度も家を出たことがなかったのですが、飼い主にさせられたお見合いに飽きて家出したとのこと。いつも閉ざされていたと思っていた窓が、その日は開いていたから。

 チビ猫はこの優雅で自分より少しお姉さんの猫をとっても気に入るのです。

 キャラウェイが血統書付なことがわかり、須和野お父さんがキャラウェイを飼うと言い出し、これで一緒に暮らせると喜ぶチビ猫なのですが……。
 血統書付であるがために外に出ると大騒ぎされたり、お父さんにひもでつながれたりしてしまいます。
 お母さんにひもをほどいてもらった後、キャラウェイは自由を手にするため、野良猫になることを決意します。そして二匹でそのための訓練をします。
 そんな中、雨の中ずぶぬれになってしまいます。泥だらけになったキャラウェイを誰も血統書付のシャム猫だとは気づきません。
 お父さんにも気づかれないかどうか、須和野家まで戻ってくる二匹。

 そのとき、家の中には、キャラウェイの飼い主が訪れていたのでした。外の人も、お父さんも、だれも泥だらけのキャラウェイに気づきませんでしたが、飼い主は気が付きました。
 キャラウェイは飼い主が奥さんの形見猫として育てていた猫でした。お見合いをさせたことを大変後悔していました。そして、窓はいつも開いていたと。
 キャラウェイも、奥さんから飼い主を頼むよう、泣いているときには寄り添うよう言われていたことを思い出します。そして、泣いている飼い主を見て一緒に帰ることを決意するのです。

「マンションの窓はいつでも開いていたの」(キャラウェイ)

 この展開は胸が熱くなります。

 自分を置いて行ってしまったキャラウェイに、チビ猫は腹を立てます。
「どろんこをふめなかったんじゃなくて ふまなかったんだ 花の寝床をさがせなかったんじゃなくて さがさなかったんだ 外であそべなかったんじゃなくて あそばなかったんだ」
「そんでもっていつでも あの人のほうばっかしみてたんだよね」
「うそつきキャラウェイ!」


「でもまた会いたいよ」という独白でお話は終わります。

 猫を飼っている身からすると、猫が自分の意志で自分を選び帰ってきてくれることはとてつもない幸せです。放し飼いの猫が放っておいても毎日家に帰ってきてくれる。これがどんなに幸せなことかと考えました。
 また、泥だらけでもどんな姿でも自分だと気づいてもらえるならそれも幸せだなと思います。
 飼い主がキャラウェイに気づくところ、キャラウェイが逃げずに一緒に帰るところに胸がキュンとなりました。
 でもせっかく友達になれたのに、一人にされて、チビ猫がとても辛かったり悔しかったりするのもわかります。
 いろいろな猫がいることを知り、さまざまな愛の形を知り、読者はチビ猫と一緒にまた一つ大人になるのです。


『葡萄夜』

 ※ネタばれ含む




 独り暮らしのおばあさんが死んだ後の屋敷に老婆の姿の化け猫が出る。そんな噂話から物語は始まります。

 住んでいるのは化け猫ではなく、おばあさんの飼っていた猫「タマや」でした。見た目はまったくおばあさんの格好をしていますが、雄猫らしいです。おそらく本当の名前は「タマ」なのでしょうが、おばあさんが「タマや」と声をかけていたので、猫は自分の名前をそう認識しているようです。
 この猫と人間の認識の差がおかしみを感じさせてくれます。

 タマやはおばあさんが自分に一言も言わずに死んでいったことを寂しく思っており、おばあさんに会おうと試みています。
 そして、瞑想の末、おばあさんに会います。おばあさんは、草原の中のコーヒー店にいたそうです。のどかなよい風景だったとのこと。そしてタマやに「さよなら」といいました。
 その夜、タマやが住んでいた家は取り壊されてしまいます。これからどうするのかと聞くチビ猫に、どこにもいかない飼い主がいなくたって家がなくたってここが自分の地点だと答えるタマや。チビ猫は大喜びで飛びつきます。タマやも、変な子猫だねえと言いながらぎゅっと抱き返すのでした。
 チビ猫とタマやは、おばあさんの散歩コースを一緒に歩いたのち、原っぱへ行きます。そこで木登りと宙返り対決をします。チビ猫は二回転半。タマや猫はやれやれとお年寄りのような動作で木を登り、飛び降ります。

「どちらもおなじかがやくのはら」

 飛び降りながら草原を見渡しタマや猫が思います。あの世もこの世も同じ……ということなのかもしれません。

 その二歳の化け猫は数える間もないほど速い回転をして 着地すると白く輝く若猫の歯をみせてにっこりわらってやれやれと言った

 おばあさんの格好で、おばあさんの言葉でしゃべるけれど、若い猫なんだなとわかる最後です。
 明るい新しいスタートを予感させます。

 死んだ人にはもう会えないけれど、草原の中ののどかなコーヒー店で過ごしていると思うと、少しだけ救われる気がします。


 ↓他の話の感想↓(◎お気に入り)

(単行本の一巻を持っていないので『ピップ・パップ・ギー』以降の話となります)
『綿の国星』 ◎
『ピップ・パップ・ギー』『日曜日にリンス』 
『苺苺苺苺バイバイマイマイ』◎  
『八十八夜』『葡萄夜』  
『毛糸弦』◎  
『夜は瞬膜の此方』『猫草』  
『かいかい』『ド・シー』『ペーパーサンド』  
『チャーコールグレー』◎ 『晴れたら金の鈴』  
『お月様の糞』◎  
『ばら科』  
『ギャザー』◎  
『ねのくに』  
『椿の木の下で』◎  


 

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