『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』〜たった一言〜
2016年発表(アメリカ合衆国)
監督、ジェームズ・ボビン 脚本、リンダ・ウールヴァートン
ひょんなきっかけで再びワンダーランドに来ることになったアリス。様子のおかしくなったマッドハッターを元に戻すため、彼の家族を助けようと過去への旅に出かける。時間の番人・タイムとの追いかけっこ、赤の女王や白の女王の過去、マッドハッターの家族の行方――。さまざまな想いが交錯する中、アリスの心は変化していく。
※ネタバレ含む
2010年公開の「アリス・イン・ワンダーランド」の続編になります。
前作は当時に映画館で見たきりで、話は忘れてしまっていたのですが、キャラクターは覚えていました。
悪役の赤の女王がものすごく嫌な奴でした。しかし、自分の見た目(デカ頭)へのコンプレックスで泣いている姿が印象的で、最終的には「嫌な女」から「可哀想な女性」と認識が変わりました。
「時間の旅」は、マッドハッターの物語であると同時に、赤の女王の救済の物語なのかなと思いました。
赤の女王がデカ頭になった原因は、白の女王がある「嘘」をついたことでした。
頭が大きくなったのは強打もありますが、罪を被せてきた白の女王への怒り・自分を信じてくれない母親への悲しみが一番の原因でした。
子供のころのこの出来事が後を引き、姉妹には確執が生まれました。
こういう背景を知ると、赤の女王の「誰も私を愛してくれない」という言葉はとても重たいですね。
最後、白の女王が赤の女王に「嘘をついてごめんなさい」と謝罪することで、すべてのわだかまりが消えるのは感動的でした。
「ただその言葉が聞きたかった」と。
たったその一言だけで、赤の女王の邪悪な心が浄化され、姉妹が仲直りできた。
悪さする人間が「なぜ」するのか、そこに至るまでの動機を考えることは大切なのだなと思いました(理由があったら悪いことをしていいという意味ではない)。
さらに今回は赤の女王には「タイム」という恋人までいます。ハートのジャックとは違って本当に彼女のことを愛している。いい話だ(タイムな彼女の寂しそうなところを好きになったのでしょうか……それともツンデレなところなのでしょうか……馴れ初めが気になります(笑))。
貰ったプレゼントを放り投げながらも「一生大事にする」と答えるツンデレ赤の女王が可愛い。
タイムは悪役っぽく出てきましたが、一番といっていいくらい善良な人でした。アリスにクロノスフィアを盗まれて死にかけたのに、彼女を許す懐の深さが素敵です。
女王のデカ頭が最後に戻ってハッピーエンドなのかな、と思いましたが、結局元には戻りませんでした。
残念な気もしますが、「過去は変えられない」というテーマがぶれないところはさすがだなと思いました。「でも学ぶことはできる」。
デカ頭のままでも愛してくれる白の女王やタイムがいる。そこに救いを感じます。
また、この話はマッドハッターが家族と再会し、確執を解消する物語でもあります。
死んだと思っていた家族が実は生きていた。そして厳しく当たってくる父親に愛されていた。
二度と解けないと思われていたわだかまりがなくなるところはよかったです。
マッドハッター、アリス、赤の女王と白の女王、みんなが家族と和解する物語で、それもテーマの一つなのかなと思いました。
自分も家族との時間を大切にしようと思える作品でした。
ラスト、アリスが髪をばっさり切って、母親と一緒に船長として海に乗り出すところは爽快でした。
タイムに父の形見の懐中時計を渡し、過去を手放すところにも感動しました。
マッドハッターの家族は生きていて、赤の女王と白の女王は仲直りして、前作の不幸を綺麗に片づけたハッピーエンドの物語でした。
ストーリー的には一本調子で物足りないところはありましたが、キャラクターが救われたので観てよかったです。
『不思議の国』が見事に実写として表現されているところも素敵です。森のお茶会の楽しそうな様子や、奇抜な見た目のキャラクターたちが見ていて飽きません。白の女王のお姫様お姫様した優雅な動きも「らしくて」グッドです。
私はメルヘン好き(笑)なので、世界観を楽しめたのもよかったです。
どうでもいいが精神病院の先生がヘンタイっぽくて怖い(笑)。
いろいろと不自然でツッコみたい部分もありましたが、いい話でした。
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