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犬木加奈子絶叫コレクション学校がこわい!』

〜カエルの王子さま〜
2000年公開(日本)
監督、貝澤幸夫 原作、犬木加奈子 脚本、小中千昭 出演、山口勝平
不気田くん
※イメージ画

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 ※ネタばれ含む


 
●小休止『怪奇玉手箱』
 同じ作家さんの不気田くんではないお話です。なんと作家さんご本人がナレーションしているようです。
 押し入れに人ならざるものが棲んでいるというお話。
 隙間って妙に怖いんですよね。そういう隙間への恐怖が、魔物を生み出す。
 これを見て扉はちゃんと閉めようとか、玩具は寝る前に片づけようとか、改心した子供がたくさんいるに違いない(笑)。

 その後、再び不気田くんが始まります。

 虫かごに入れた蝶を観察している不気田くん。しかし、蝶がボロボロに砕け散ってしまいます。
 その様子に、今まで忌み嫌われ続けた自身の記憶を重ねる不気田くん。
「なぜ、なぜなんだ。どうしてみんな僕を愛してくれない。どうして僕の愛を受け入れてくれない」


 悲痛な心の叫びです。
 愛を受け取ってもらえない不気田くんにだんだんと感情移入していきます。
 しかし、不気田くんはポジティブ思考。こんなことでは諦めません。

「そうだ、きっと愛が足らなかったんだ。僕の愛が」

 違うよ不気田くん、言動が気持ち悪いからだよ……!

●4話『愛する夢子さん』
  今回は題名がいつもと違います。
 そして、ストーリーもいつもと違います。

 今回の話のヒロインは夢子さん。妄想の漫画を描くのが好きなメガネの女の子です。
 中学生か高校生かわかりませんが、リサさんに続き夢子さんも絵がうますぎます。
 色まで付けたカラー原稿……!
 彼女は自分の妄想で描いた漫画の男の子に恋をしています。
 オリジナル同人しかも自キャラ萌えドリーム漫画描きなんてかなりハイレベルだぞこの子……!

 友達と描いた漫画の話で盛り上がっていたところ、意地悪な男子(ヤナセくん)にメガネをとりあげられてしまいます。
「やーい。漫画の男に恋するなんて、メガネ変えたほうがいいんじゃないの?」
 夢子さんはかなりの近眼らしく、メガネがないと近くの人の顔までわからなくなります。
 メガネを持ったままヤナセくんが階段を下りようとしたところ、不気田くんに肩をぶつけます。そしてメガネを落とし割ってしまったのでした。
 メガネを割ったことを不気田のせいにして、ヤナセくんは走り去ります。
 残ったのは前が見えなくなった夢子と、散らばった漫画の原稿と、不気田くん(あと夢子の友達)。
 ヤナセくんの仕打ちに怒る夢子さん。
「だから、だから夢子、男の子って大嫌いなの」


 その傍らで、静かに原稿を拾い集める不気田くん。あれ……今回はちょっと様子が違うぞ……。

「あの、これを……大丈夫ですか?」
 拾った原稿を夢子さんに差し出す不気田くん。夢子さんは不気田くんの顔が見えていないので気味悪がらず普通に対応します。
「あなたは?」
「僕は、木田……いや、不気田とでも呼んでください」


 こんな屈辱的なあだ名を名乗らなければならない悲しさ……。そんな不気田くんに微笑みかける夢子さん。はい、ロックオンされます。
 不気田くん、ロックオンする前に原稿を拾ってあげているので、純粋な善意でそういう行動をとっているということになります。 ストーカーさえ発動しなければいい子な気がする。

 シーンは変わって帰宅途中の夢子さん。前が見えなくて、階段から滑り落ちてしまいます。
 と、誰か男の子が抱き留めてくれました。
「私を、守ってくれた?」
 思わず胸キュンする夢子ちゃん。顔もわからない男の子は、黙って階段の下まで夢子に付き添い、そのあと走り去ってしまいます。


 翌日、学校で不気田くんに漫画の原稿を見せる夢子さん。普通に感心している不気田くん。しゃべり方が普通なのが笑えます。 普通にできるなら普段からしとけよ(笑)。

 その最後の一枚は、漫画ではなくイラストでした。
 超絶美形の黒髪の王子様のイラストです。
「これは……」
「これは、これは、私が描いた不気田くん」


  何だこの話……ホラーを見ていたかと思ったらいつの間にかラブコメになっているぞ……でも相手は不気田くんというシュールレアリズムの世界。
「これが、僕?」とさすがの不気田くんも困惑。恥ずかしそうに、メガネがなくてよく見えないから想像で描いたと答える夢子さん。不気田くんは肩を落とします。本当の顔を見られたらがっかりされると。
 ただの気持ち悪い怪人じゃなくて、自分が不細工なことちゃんと理解しているんだね……不気田くんがだんだんと可哀想に見えてきます 。ここまで美化されたらハードル上がり過ぎて不気田くんじゃなくても自信を無くしてしまいそうです。
 不気田くん顔はそこまで気持ち悪くないよ、気持ち悪いのは言動だよっ! 猫背もアホ毛も可愛いよ!
 この話の不気田くんは全体を通して紳士的です。 相手から期待されるということが人間をよい方向に変えていくんですね。
 今回の不気田くんは相手に受け入れられているからか、変態ストーカー行為を行いません。嫌われている女の子に強引にアプローチするからあういう行動になってしまうんでしょうね。
 今までの女の子たちも不気田くんに期待し優しく接すれば、気持ち悪いことをしなくなった……かもしれません。いや、逆に調子に乗るか。難しい判断です。

「そんなことない!」と不気田くんの不安を強く否定する夢子さん、よい子です。このときの声優さんのしゃべり方が感情がこもっていて素敵でした。この後、不気田の服の袖を夢子がぎゅっとつかむシーンとか、所々に少女漫画チックな演出が入るのがこの回の特徴です。不気田くんなのに。
 夢子さんの目ににじむ涙を指でそっと払う不気田くん。他人のハンカチで鼻水をかんだ男と同一人物とはとても思えません。
 からの顎クイッ。

「知っていますか? 近視の人の目ってとってもきれいだってこと」

 何だこの口説き文句は……。

 いい雰囲気の夢子さんと不気田くんを陰で見つめるヤナセくん。に、気づいて不気田くんが顔を向けたときには、もういなくなっていました。通常、不気田くんがいる位置にヤナセくんがいるところが面白いです。
 不気田くんと仲の良い夢子さんを、友達は心配し始めます。今まで不気田くんと関わった女子はみんな死んでいるという噂だと。噂じゃなくて事実なんだなあ、これが。

 この発言にヤナセくんはびっくりします。意地悪していたわりに夢子さんのことが気になってしょうがないご様子。
 不気田くんをいい人だと思っている夢子は怒ります。
「ひどい、どうしてそんなこと言うの?」
「夢子、早くメガネ直したほうがイイよ」
「そうだよ、ちゃんとあいつの顔見れば――」
「あの人のことそんな風に言わないで!」
 夢子は教室を飛び出します。
 廊下の隅で泣きながら不気田のイラスト(イメージ)を触る夢子さん。
「嘘よ、みんな嘘つき。不気田くんのこと、あんなふうに」
 そこに現れる不気田くん。優しく手を広げる不気田くんに夢子さんは抱き着きます。
「やっと見つけた、私の、王子様」
「危ないよ、走ったら」
 こんな世界、もう嫌だと泣きつく夢子さんに、不気田くんの魔術が発動してしまいます。二人は現実から姿を消してしまいました。
「君が望むなら、僕は君の描く絵になるよ。君が望むなら、僕は今すぐ君を夢の世界につれて行ってあげる」


  好きな女の子の望みをどんな形でもかなえようとする不気田くんには悲壮感すらあります。
 いなくなった夢子さんをヤナセくんは必死に探します。雨の中を走り、たどり着いたのは不気田くんの邸宅。
 それにしても不気田くんはやたら大きな家に住んでいますが、どういう経緯で住まうようになったのでしょう……親はいないみたいだし、謎です。
 屋敷の門が蝶ではなくなっている……昔の女の物は処分するタイプのようです。
  意を決して不気田邸に乗り込むヤナセくん。漢です。
 ぼろ屋敷の中で見たものは、机に向かい一心不乱に原稿を描く夢子さんでした。さながら締め切り前の漫画家のようです。
 そのころ、夢子さんの精神は漫画の世界で不気田くんときゃっきゃうふふしていました。不気田くんの顔は当然、超絶イケメンになっています。 お姫さまの格好の夢子さんと、王子さまの格好の不気田くん。これはもうギャグなのか?
 原稿の中の不気田は顔がイケメンになっただけではなく、しゃべり方までねっとり感がなくなってイケメンボイスになっています(同じ声優さんですが)。

 いい雰囲気になったところで、夢子さんにヤナセくんがメガネをかけさせ、不気田の実際の姿があらわになります。 なんという鬼畜。

「見るな、見るな!」

 必死で顔を隠す不気田くん……可哀想。
 どうやらヤナセくんは、夢子さんのメガネをこっそりと修理していたようです。「これをかけて現実を見ろ」と叱咤します。
 うめき声を上げながら原稿の中から不気田くんが出てきます。

「ボクと夢子さんの愛を邪魔するやつは許さない!!」
「何が夢子との愛だ、お前なんかに夢子を渡すかー!」


 人間離れした様相で威嚇してくる不気田くんに、ひるまず一発パンチを決めるヤナセくん。ホラーの怪人に顔面パンチってアリなのかそれは!? 暑苦しい、暑苦しいぞ。

「お前に俺たちの愛を邪魔する権利があるのか」
「俺だって、俺だって夢子のことが好きなんだ」

 夢子さんと不気田くんとヤナセくんの三角関係が浮上。
 あれれ〜? ホラーからいよいよラブコメ少年漫画になってきたぞ〜?
 不気田くんが不気味すぎるから異常な状態になっていますが、普通の青春ものみたいな展開になってきたことへの観る側の困惑など気にしないで突っ切るところが素敵です。
 ここから男と男が魂をぶつけあう熱い展開になっていきます。
  このヤナセくん、不気田くんが気持ち悪いから差別して忌み嫌うとかじゃなくて、男として対等に勝負を挑みに来ているところに好感が持てます。
 そしてここ、何気に不気田くんの一人称が「俺」になっているところに注目です。 女の子の前だと上品に「僕」というけど、男同士だとふとした瞬間に「俺」になる。こういう細かいところにキャラクターの性格が出ていていいと思います。不気田くんも動物的に行動しているんじゃなくていろいろと考えているのだなって。
「ずっと夢子のことが好きだった」というヤナセを不気田くんはあざ笑います。

「好きだと? ずっと夢子さんのことをいじめていたお前が好きだと?」


 不気田くんがまともなことを言っている。普段から夢子さんのこと見ていたんだね……。

「好きだから、好きだからオレは……」
「それがお前の夢子さんへの愛か? そんな愛で心が埋まるものか!」

 そういって服をはだける不気田くん。ここからまたホラーに戻ります。

「ボクには夢子さんの愛が必要なんだ。ボクの心の穴を埋めてくれる愛が必要なんだ」


 心の穴(物理)。不気田くんは心臓のところに穴が空いていてそこには真っ暗な闇が広がっているのでした。
 夢子が好きだと本音を語ったヤナセくんに応じて、不気田くんも本音を見せた形になります。
  幼心に「何という超展開」と思ったものです。
 空っぽの心臓を見せながら迫ってくる不気田くんにさすがのヤナセくんも恐怖して気絶してしまいます。ヤナセくん敗北。
  ヤナセくんが男らしくぶん殴ってきたのに対し、心の傷をあらわにして精神攻撃してくる不気田くん。性格がよく出ています。

 気絶したヤナセくんを放置して、漫画の世界に戻る不気田くん。
 夢子さんに後ろから話しかけます。両肩をがっちりつかみ、必死な声で問いかけます。
「夢子さん、今も愛してるよね? 僕を……」
「痛いわ、不気田くん」
「僕を愛していると言ってくれ、僕だけを愛していると!」


 いかん、このままではまたストーカー気質の気持ち悪い不気田くんに戻ってしまう……と、夢子さんは、優しく不気田くんの手を触ります。不気田くんの震えが止まります。

「もちろん、愛しているわ。不気田くんが、どんな姿をしていても」

 寸でのところで、夢子さんの愛情によって不気田くんは正気を保ちます。そして、心の穴が埋まりそうになります。

「あなたへの愛は変わらない、あのときからずっと……」
「あのとき?」

 階段で転んだ時に守ってくれた相手のことを思い出す夢子さん。しかし、それは不気田くんではなかったのです。

 黙っていればいいものを、「違う……」とつぶやく不気田くん。
  守ってくれた相手――それは不気田くんではなくヤナセくんだったのです。
 最初から自分ではなかったと気づいた不気田くん。
 再び胸に風穴が空く不気田くん。ヤンデレ発動か…… と思いきや、なんと夢子さんのために身を引くことを決断。

「行けよ、あいつのところに。僕の気が変わらないうちに」

 不気田くんの体がだんだんと薄くなっていきます(実はヤナセくんが現実世界で消しゴムをかけているからなのですが)。
 涙を流しながら夢子さんを見送る不気田くん。

 不気田くんは基本的に丁寧なしゃべり方をするのですが、最後だけ「行っちまえええ!」って乱暴に叫んでいるところがいいなと思いました。
 ホラーアニメを見ていたはずなのにいつの間にかいい話になっていたでござる。
  夢子さんを愛しているからなのはもちろんですが、ヤナセくんの熱い思いが不気田くんに通じた結果でもあるでしょうね。
 現実世界ではヤナセくんが漫画原稿を消しゴムでごしごし。

「くそう、あんな奴、みんな消してやる!」

 潔く身を引いた不気田くんに比べてなんという器の小ささ。まあ息の根を止めておかないと不気田くんはしつこいですからね。
  憎らしそうに消しゴム掛けをするヤナセくんを夢子さんは止めます。

「やめて! もう終わったの。不気田くんなんて最初からいなかったのよ。最初から……」

 涙を流す夢子さん。
 メガネを壊しておきながら、最後は夢子さんを不気田くんから略奪する……ヤナセくんのマッチポンプ逆転勝ちで終わりました。
 ハッピーエンド(?)。


 昼野夢子という名前、現実を見ろという台詞……この話は、思春期の子供たちへ向けた「現実とちゃんと向き合え」という説法なのかもしれません。
 ヤナセくんもこれを機に反省して好きな子いじめをやらなくなるといいですね。

 不気田くんは消えたように見えましたが、また別のところに転生していました。
 EDの後に、新たな学校に転入してくる不気田くんのシーンで終了です。

「木田不美男です。どうぞ不気田と呼んでください」

 って、不気田って毎度自称してるのかよ!?
 実は気に入っている系か!?

 声優が山口勝平さんなのですが、気持ち悪いしゃべり方もうまくてすごいなと思いました。

 原作漫画のほうだと、実は不気田くんは前世に呪いをかけられた元美形という設定なようです。そんな壮大な話だったの……。
 昔々、イケメンでモテモテだった不気田は、アラクネという女性の愛をはねつけた結果、自殺に追い込んでしまいます。しかし、己の命と引き換えに不気田の心臓(愛を知らないハート)を抜き取り、黄泉の国まで一緒に持って行ってしまうのです。そしてアラクネの呪いにより、誰からも愛されない醜い姿になってしまい、心の穴を埋めてくれる永遠の恋人を探しているのだと。真実の愛を見つけたとき、不気田の心の穴は埋まり本来の容姿に戻るのだそうです。
 彼の心の風穴にはしっかりとバックグラウンドがあったんですね。
 原作ではストーカー男の恐怖を描く話からだんだんとラブロマンスになっている様子。ちょっと気になります。でも顔が不気田くんだと思うとちょっと笑える。

 マツ子さんは普通に性格悪い、蝶子さんは八方美人、リサさんは傲慢、一応死ぬ女の子は何かしら問題点をつけているっぽいですが、それにしても因果応報とはいいがたいです。これがストーカーの理屈……。
 ただ不気田くんはキモいけど女の子を自分から殺そうとしたりしないところは偉いなと思います。

 いろいろなホラーアニメを見ましたが、その中でも印象に残っているのでインパクトの強い作品だったことは間違いありません。
 誰からも愛されない不気味な不気田くん。しかし、最後まで視聴した人の大半、特に女性視聴者は彼に愛をあげたいと思ったはず……(た、大半?)!
 キモカワカッコいい不気田くんに誰か真実の愛をと願わずにはいられません。

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