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『ライチ☆光クラブ』〜砂上の楼閣〜

2006年出版(日本)

著作、古屋兎丸
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 ※ネタバレ含む

 

 光クラブは中学生の少年たちが集まった秘密組織で、帝王ゼラを中心として世界征服を目指していた。そのために必要なものとしてロボットを作り、さらにそのロボットで少女を誘拐する。だが、光クラブは内側から徐々に崩壊していった……。

 

 以前に感想を書いた『ぼくらの☆ひかりクラブ』の本編です。
 元々は演劇だったものを漫画化した作品ということで、舞台らしい臭さやどろどろした感じがとてもよい作品です。
 一言でいえばエログロ中二病耽美系薔薇漫画。
 陰鬱で淫靡で耽美で残酷でそんな気分に浸りたいときにはおススメの作品です。

 廃墟の帝王ゼラは、道で出会った占い師に「30歳で世界を手に入れる、或いは14歳で死ぬ。その鍵は一人の少女が握っている」と予言され、それを信じています。そして自分の命運を握る少女を人造人間「ライチ」を使って見つけ出すのがこの物語内でのゼラの目的です。
 光クラブを掌握していたゼラですが、メンバーに裏切り者がいるのではとだんだんと疑心暗鬼となっていきます。
 ゼラの憔悴ぶりが、彼が神のような超然とした存在ではなく、年相応の子供であることを表わしていてよかったです。やっていることはすごいけど、メンバー全員、まだまだ精神的には子供で、そのために人間関係が崩壊していくのは何ともせつないです。

 本作品を最初に読んだのは数年前で、最近番外編『ぼくらの☆ひかりクラブ』を読み、それから改めて本作品を読みなおしました。
『ぼくらの☆ひかりクラブ』を読んだ際は、もう本作品の内容をぼんやりとしか覚えていなかったので、「ゼラっていやな奴」という感想しか出てきませんでした。しかし、今回あらためて読んでみて、また気持ちが変わりました。
 裏切られることにとてもおびえていて、何だか可哀想だなという気持ちのほうが強くなりました。最後のほうで占い師にされた予言の話をするときに、子供言葉になるところとか。気をはっているけどまだ14歳になりかけの子供なんだよなあと。
 また、たまこが凌辱されたと聞いたときに「ボクはそこまではしていない」というところ。ゼラはやることなすこと残虐に見えるが、関係ないタミヤの妹に「そこまではしない」程度の良心は持っている人なのだと、ちょっと感心しました(笑)。ジャイボとゼラの倫理観の線引きはこのあたりなのでしょうね。

 ジャイボも残虐で狂気に満ちたキャラクターです。が、最後のゼラへの愛を語るシーンは胸が締め付けられますね。ゼラのことが本当に大好きだったのだなと。
「ゼラの心を奪うものなんて全部なくなっちゃえばいい!」「愛してるんだゼラ……」
 ここまでゼラのことが好きなのに、ゼラときたら「この美しさに比べればジャイボなど所詮は男」などとバッサリ。崇高な目的と言いながら、君だって所詮は面食いで女の子好きのただの男だったのではないかと(笑)。

 全体的に崇高に見せかけたゼラの俗っぽさがなんとも面白い話でした。
 悪口を言われていないかやたらと気にするところとか。
 カノンに「あなた最低よ!」と言われた時の動揺のしかたも面白かったです。「最低? 僕に対する第一声がそれか」「け、け、螢光中だからって馬鹿にするのか?」という台詞からは、ゼラのコンプレックスがすぐにわかります。
 こんなに頭がいいのに、螢光町にいるばかりにバカにされ泥臭い大人になっていくしか道のない悔しさ。このあたりはゼラにとても感情移入しました。
(ゼラはよその町から引っ越してきたという設定でしたが、私だったら生まれも育ちも螢光町にしたかなあ……とかそんなことも考えました)

 終盤、タミヤに追い詰められた時の反応も面白かったです。
 逃げまどい、冷や汗を流しながらひきつった笑顔で「ま、まて、ゆっくり話そう、な、タミヤ」というゼラ様。そんなことを言ってしまうんですかゼラ様とあろう人が。
「お前らが裏切るから悪いんじゃないかあ……」といって嘆く姿も、傷心が伝わって可哀想になります。実際は、ゼラが制裁した相手は誰も裏切ってはいなかったのですが。
 ゼラはすましたふるまいをしているけど、本当は裏切られたり見捨てられたりすることにおびえている。帝王ゼラの座は確固たるもののように見えて実は砂上の楼閣だったのでしょう。

 元々リーダーだったタミヤと、初期メンバーのダフ・カネダの「ひかりクラブ」のほうがよほどしっかりとした基盤と絆があったといえます。

 タミヤが元々リーダーだったとわかるシーンと、最後の「ここは俺の光クラブだ!」とゼラに反撃するところは胸が熱くなる展開でしたね。
 そのタミヤもジャイボにやられてしまうのですが。

 いろいろと濃いキャラクターの出てくるライチ☆光クラブですが、脇役ながら印象的なのがデンタクですね。彼はゼラに従順なようで、決して盲目的にゼラに従っているわけではありませんでした。機械に人間の心を宿すという野望をひそかに持っており、最終的に達成されます。それによってライチが暴走し、光クラブは完璧な崩壊へと向かうのです。
 ゼラの目的よりもあくまで自分のプログラミング技術への誇りが勝っている。地味に見えてとても芯の強いキャラクターだと思いました。

 ちなみに、私が一番好きなキャラクターはニコです。ニコのゼラへのけなげな忠誠心に胸を打たれます。「ああ、ゼラ! 俺のゼラ!」ちょっと、大丈夫か君と思う部分もありますが、そういうところも含めて一途で好きです。
 ジャイボとゼラのいちゃいちゃを見てしまった時の呆然とした顔がツボでした。
 これほどにゼラが好きなのに、その思いはゼラには届かない。信じてもらえず、裏切り者の濡れ衣を着せられて殺されかける。哀れです。
 しかし、最後の最後にはニコの執念によってゼラは殺されます。最終的にゼラを殺すというある意味、最もゼラの人生に深くかかわるポジションになれたのはニコにとっても報われる終わりだったのではないでしょうか。

 この物語では甘美なる機械ライチと人間の少女カノンの淡い恋模様も描かれています。
 カノンが「死んで機械に生まれ変わったらおばあさんにならなくて済む、ライチに嫌われない」と言い、ライチは「カノンを嫌ったりしない」と言うけど、やっぱり君はわかっていないというカノンがとても切なかったです。

 交流をするライチとカノンの前に現れるゼラ。「廃墟の恋人たち」という表現がとてもロマンチックです。ゼラ様ロマンチスト。
「ま、まさか君たちがそのような仲だったとは!」
 不純異性交遊を見つけた教師のようなゼラの反応が面白かったです。

 この作品は雰囲気はシリアスですがところどころシュールでギャグとしか思えないような場面が入るのが面白いです。

 ライチが「美しい少女」を連れてこいと言われたのに、おかしなものばかり連れて帰ってきたときの、みんなの表情。
「美しいもの」が便器だったり。理由が「曲線だから」
 半裸のゼラが何かものすごいクールな表情しているところ。
 カノンにこっそり触っているダフのところに現れるゼラ&ニコ。ダフはめちゃくちゃ怖かったことでしょう……。
 バラの浮かぶ棺桶の中からジャイボの顔が浮いて出てくるところ。

 などなど、深刻だけどシュールなシーンがたくさんあります。

 それと、タミヤがゼラを表す時の「あいつは一度ケチのついたものは捨てる男なんだ」という表現が端的で秀逸だと思いました。


 いろいろな要素が詰まっていて、おなかいっぱいになる作品です。読んだらしばらく頭から離れません。


 

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