『悪の教典』〜新ジャンル。爽やか☆外道 ハ、ス、ミン♪〜
2012年公開(日本)
監督、三池崇史 脚本、三池崇史 原作、貴志祐介
※ネタバレ含む
『悪の教典』は問題生徒と問題教師の集まるまるで『GTO』みたいな学校が舞台。
そこで肉食の狂った羊、蓮実聖司が自分の野望実現のためにいいこと悪いこといろいろします。
原作者の貴志祐介さんは漫画やライトノベルのような話を、大人むけの圧倒的な文章力とリアリティで書いてくれるのでとても面白いです。
派手なドンパチもあるし映画ではどんなふうにしてくれるだろうと楽しみにしていたのですが……。
原作ファンとしては、ちょっとイマイチ物足りない感じでした。
役者さんはみなさんノリノリwでかなりよかったし、コミカルでブロードウェイっぽい演出もよかったですが、脚本が……。
『悪の教典』の面白さって、大量殺戮にあるんじゃなくて、殺す側(蓮実)と殺される側(生徒・一部の教師)の攻防戦にあると自分は思っているのですが。
生徒が知略を巡らせて罠を作ったり、園田先生が蓮実とバトルったりするシーンがごっそりなくなっていたのが残念。
というか、生徒思いの園田先生をゲスの柴原に統合しちゃうってどういうことだよ! そのうえ柴原ドラム叩いちゃってたよ!
)、._人_人__,.イ.、._人_人_人
<´ ドラム 返 し て っ ! >
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(蓼沼)
園田先生(ウィキペディアより引用)
体育科教師で空手部の顧問。黒いジャージ姿が常の威圧的な巨漢で数多ある綽名の一つは「熊殺し」。昔気質の強面で体罰に頼る傾向が強いが、武闘家らしく、自他に厳しく情に厚く生徒思い。体育大学の学生時代、空手の全国大会で優勝経験がある。怜花からは「暴力を究めるという奇怪な目標のために生き、躊躇わず素手で人を殺す事ができる」と評され、恐れられている教師の一人。
(引用終わり)
散弾銃を持つハスミン相手に、防犯用の盾とサスマタで応戦するシーンは悪の教典の中でも屈指のシーンなのに。
「ワシの生きている限り、生徒には指一本触れさせんぞ!」
漢だ……。
園田の空手は天才サイコパスのハスミンすらボコボコにして追い詰めていきます。最終的にはやられてしまうけれど。
園田の教育的指導でもハスミンの性根を叩きなおすことはできませんでした。
だが園田先生は存在自体抹消されて、サスマタで応戦するのは柴原になっていたのだ!
それから不良の蓼沼。
彼なんて途中で退場させられて、ドラムは柴原に奪われてしまいました。そのうえ柴原がちょっと憎めないキャラになってしまっていたじゃないか!
蓼沼といえば、原作、ドラムスティックでどんなふうに戦うんだろうって楽しみにしていたんだが、槍で戦っていましたね。
そこはスティックで戦えよw
何のためにドラムスティックのエピソード入れたんだよw
渡会がバリケードを張ったりするシーンは映画でもあったけど、それも簡単に侵入されてしまっていました。
ただ渡会自体は小説版より映画版のほうが好きですね。
あと「東大」「TO
DIE」のやりとりが省かれていなかったのは救いでした。
個人的には渡会ってそんなに悪い奴じゃないと思う。ちょっと嫌味かもしれないが、彼の作戦のおかげで多くの生徒の死期が遅くなったじゃないか。
かなりがんばって作戦を練っているのに、性格悪いところばかりクローズアップされて可哀想だ。
中村
尚志がギターの罠をしかけたり、死してなおしかけたビデオカメラでハスミンの犯行を暴こうとしたのもカットされていました。
渡会、中村、高木はハスミンに対抗していて読み応えがあったのに、渡会は小物に、中村に至っては細かいエピソードはごっそりカットですか……。
なぜ高木だけあんなに優遇されているんだ!
高木をあそこまでリア充にしなかったら他のエピソードも入れられたのでは? 高木は瞑想していればよかったんだ……それだけでよかったんだよ……。
ちなみに中村は悪の教典のキャラクターでは一番好きです。
ちょっと変なやつではあるけど、無害だし、柏原亜里のこと本気な様子が好感が持てた。亜里が殺された時はマジギレして、見事ハスミンを罠にはめて一瞬気絶までさせていますからね。やる時にはやれる男、それが中村。
皆殺しにされた後のことも考えてでしょう、カメラを隠していたのもグッジョブ。
見抜かれてはしまったものの、これにはハスミンも唸っていました。
他にもよいエピソードがいろいろとあったのに、ただただ一方的にハスミンが生徒を殺していくだけの映画に……。
石田憂実のエピソードや、ミヤを殺すことをためらうシーンがないのもどうなんだろう。かなり大事なところだと思うんだが。
猫山先生なんて存在自体消されているし。
まあ彼は物語には大きく絡んでこないから、仕方がないといえばないんだろうけども。
猫山先生は作者のお気に入りのキャラだから不自然なほど死ぬのを免れたらしいw
「『ものすごく変なやつ。だけどべつに悪いことは何もしていない』というタイプは、むしろ生物の多様性として保護すべき対象だろうと考える性質なんです。」
とは貴志さんの言葉。この考え素敵です。
ハスミンとそこそこ仲がよく、無害だからと殺されなかった猫山先生は『悪の教典』の良心だと思うw
そういうキャラだからこそ、映画にも出してほしかったです。
どうも、映画版は全体的に人情的な部分がカットされていて(※ただしイケメン(高木)は除く)、これはわざとそうしているのかなと思いました。
サイコパスが人を殺しまくるという猟奇的なところにスポットを当てて作ったのかなと。
二時間という限られた尺ですからね。そういうコンセプトもありといえばありだとは思います。
ただこれでは「メッセージ性もなく人殺しを楽しむだけの映画」と捉えられても仕方がないですし、貴志さんの原作をこの映画だけで判断してほしくはないかなと思いました。
これではサイコパスの話じゃなくて快楽殺人者の話に見えてしまうよ。
自分の推測であり監督にそういう意図はないのかもしれないが、一感想としてそう受け取った。
上記のことは私の個人的好みの問題。
唯一そういうのを抜きにして大減点だと思ったのが、AEDの録音でハスミンの犯行がばれるところ。たまたまAEDの機械が作動して運よく録音されていたなんて……それはないだろう。
原作では、瀕死の友達を助けるためにAEDを使ったから録音がされていたとなっていました。
死ぬ人間を無駄だとわかっていながらそれでも助けようとする、そういう人間的感情がサイコパスのハスミンにはわからない。だから見逃してしまった。
人間の感情がないがゆえに最強であるサイコパスが、人間の感情に負ける……。
大事な意味がつけられていたのです。
たまたま機械が作動したなんて、物語としても破たんしています。
演出はかなりよかったんですけどね。いろいろと惜しい作品でした。
それにしても伊藤英明さん、あんな無表情な笑い方のできる役者さんだったんだな……wよい演技でした。
ツッコミどころも多かったし多分、監督さんはギャグとして撮ったのだと思います。
貴志さんも半分くらいギャグのつもりで描いているんじゃないのかな……と思うようなところありましたし。
「笑えねーよ!!」みたいな猟奇的な話をあえてコミカルな演出にすることで精神不安を煽る映画ですね。
悪趣味でよろしいです(笑)。
AKB48の大島優子さんが「私はダメでした」と上映会を退場したという話がありますが、十分ありうる感想だと思います。
むしろこういう作品が全国民から大絶賛されるようになったら、日本の未来が心配です(笑)。
ただ、少なくとも『悪の教典』の原作は、決して蓮実聖司というキャラクターのしたことを賛美するような作品ではないと、自分は感じました。
物足りない部分はありましたが、悪の教典の雰囲気を味わうにはよい映画だと思いました。
(どうでもいいが悪の教典ってけっこう勧善懲悪な小説だと思う。悪人はハスミンに始末されて、ハスミンは警察に捕まり司法に身をゆだねることになる。ミヤや圭介にも性格悪い部分があるし、もしかしたら、本当の善人は生き残った生徒二人+猫祟りwくらいなのかもしれない)。
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