クロックロの書斎

「ランゴリアーズ」~教育虐待~

1995年公開(米国)
監督、脚本、トム・ホランド 原作、スティーブン・キング
キャスト、デヴィッド・モース、マーク・リンゼイ・チャップマン、パトリシア・ウェティグ、ケイト・メイバリー


※ネタバレあり




 

~最初の総括~

私がトップクラスに好きなドラマ・映画作品です。
子どもの頃に観て、すごく好きになって、何度も何度もビデオ屋で借りてもらって観ていました。

大人になってからはビデオ屋に行く機会が遠のき、長らく観ていなかったのですが、「好きな映画(ドラマ)は?」と聞かれたら「ランゴリアーズ」と答えるくらいには印象的で大好きな作品でした。


あらすじ
主人公たちの乗った飛行機から突然、数人を残して乗客・乗組員が消えてしまった。
自分たち以外誰もいない世界で、無人の飛行場に降り立つ。迫りくる不穏な音。これに追いつかれるとまずい。
タイムリミットが迫る中、元の世界に戻る方法を模索する……。


という、超現実的世界でのサスペンスストーリーです。

ここはどこなのか、帰るにはどうするかを探るミステリーあり。
問題人物に襲われるスラッシャーあり。
バケモノが食い散らかす地上から飛行機で飛び立つアクションあり。
「ランゴリアーズが来る」という怖いおとぎ話が現実となるファンタジーあり。

まるまる3時間、飽きることなく楽しませてくれます。

とはいえ、大人になってからは機会がなく観ていませんでした。
この度、思い立ってDVDを購入!
これでいつでもあのランゴリアーズを観ることができる!
子どもの頃と同じ、吹き替え版で観ます。

視聴前。
大丈夫かな? 頭の中で勝手に美化や昇華されまくっていないかな?

視聴後。
思い出にたがわず面白かったです!
胸を張って好きだと言えます。

今観ると、自分がハマりそうな要素が多くて何で好きだったかよく分かりました。

まず無人の飛行機・飛行場に取り残されてサバイバルするという設定がワクワクします。

・荷物用ベルトコンベアーから中に入る
・誰もいない飛行場を自分たちだけで自由に使える

という、子どもは一度は憧れる場面がたっぷりあります。
ワクワクするだけではなく、早く脱出しないと空間ごと消滅してしまうという緊張感もあります。

主役の一人(ダイナ)が10歳前後というのも、物語に入りやすいポイントです。
1人で取り残される子供が感情移入しやすかったのでしょう。

また、作中一の問題児、そして核心を握る人物・ビジネスマン(トゥーミー)。
閉鎖空間でたびたび感情を爆発させたり襲ってきたりと問題を起こします。
そして彼の語る「ランゴリアーズが来る」という怖い怖いおとぎ話。
彼自身の抱える問題も、子どもの自分には身近に感じる恐怖でした。大人になってみると、怖いよりも悲しいものですが……。

「いいか、Bってのは、”バカだ”って意味なんだよ!!」

子どもの頃、彼にまつわる諸々が怖くて仕方がなく、一番記憶に残っていました。
大人になって観ると、一番も何も、この話はまさしく彼の問題を核に扱っているのがわかりました。

ずっとモラハラ親父が一番怖いわと思っていたけどやっぱりモラハラ親父が一番怖いで間違ってなかった。

問題児がいるものの、その他の人物は常識的で良い人たちです。
子どもに優しい、問題児にも真っ当に接する等、道徳がしっかりしているから観ていて安心感があります。
(道徳がぶっ壊れた頭おかしい作品も好きなんだぞ)

また、キャラクターはそれぞれ役割と性格が一貫していてわかりやすかったです。
登場人物は多いですが見た目も含めてキャラ付けがしっかりされているので混乱せずに観られます。

だからといって完全な子ども向けではなく、大人も充分に楽しめる作品でした。
むしろ大人の今は子供の頃とは違った視点で感嘆しました。
大人も子供も観る価値のある作品です。

ランゴリアーズはエンタメとしては愛すべきB級映画です。しかしテーマやドラマの作りはS級です(断言)。

~ストーリー構成~

物語は、「飛行機」「飛行場」「飛行機」の3パートに分かれます。

飛行場に着陸するまでは素早く終わったかと思っていたのですが、改めて観るとここもそれなりに長かったです。
機内が無人になるという異常事態。
キャラクターの自己紹介。状況の受け入れ。
解決に向けて動く。
これらが起こります。

とりあえずボストンではなく別の飛行場に降りることになります。
しかし、管制塔との連絡はとれず、地上がどうなっているのかわからない状態。
これでもかというくらいに不安をあおられます。

そして飛行場へ。
ほっとしたのもつかの間。飛行場はおろか地上には誰もいないことがわかります。
自分たち以外には音も匂いもなく、食べ物も味がまったくしません。
そのうえ、鋭い聴覚を持つダイナは、謎の音が近づいてくるというのです。

「コーンフレークにミルクを入れるような音」

一見、日常のほのぼのした音なのに、それが不穏であることが恐ろしいです。

状況の推理。
タイムリミットの発覚。
ビジネスマンの発狂と凶行。
そして”ランゴリアーズ”の襲来。
犠牲者を出しながらギリギリ飛行場を脱出!

これで終わりかと思えばそうではありません。
この後の、現在に帰るまでのパートも思ったよりも長かったです。
3時間あるので、たっぷり丁寧に状況が描かれていて見ごたえがあります。

ここでもトラブルを乗り越えながら、犠牲を出しながら時空のはざまから脱出。
過去から少し未来に着ます。そして、現在が追いつき、喧騒と人の群れが戻り――「パパ。観て。新しい人間だわ」。

不穏で恐ろしい物語ですが、最後は前向きに終わるところが良いです。だから何度も観たいと思えたのでしょう。

~順番に~

ダイナや主要人物がボストン行きの飛行機に乗り込んでいきます。

冒頭で、それぞれのキャラクター性が登場人物と共にセットで出てくる流れがうまいです。

出たよ問題を抱えたビジネスマン。
嫌なビジネスマンだけど……。

ダイナは盲目で、目の手術を受けるためにボストンを目指している少女(10歳前後)です。手術をすれば何割かの確率で目が見えるようになります。

他には、確執を残したまま死んでしまった元妻に会いに行く機長。
薬物に溺れているのを更生するために叔母(伯母)の家に送られる少女(10代後半)。
どうしてもボストンの重要な会議に行きたいビジネスマン(トゥーミー)。
満足のいかない日常を変えるために、実はそこまで恋していない文通相手に会いに行く女性(ローレル)。

その他、訳あり風の男性(ニック)、音大の青年(10代後半)、ミステリー作家、食いしん坊おじさん、ガタイの良い紳士。

ボストン行き(未来)に何か不安を抱えている人たちが取り残されたのではと思いました。
食いしん坊おじさんなどの深い事情は語られていませんが、彼らにも何かの不安があったのではないでしょうか。
皆の闇が呼ぶランゴリアーズ。

だから未来に行けず過去に取り残されてしまった。

そう。
音も匂いも味もないこの世界は、時空のはざま。消えてしまう前の”過去”だったのです。

このままではいずれ自分たちも消滅してしまう。
その前に乗客たちの消えた地点、時間の裂け目に戻らなければなりません。

過去に取り残されるという設定も怖いですがロマンを感じます。

こう書くと、いかに現在へ戻るかを探るのがメインだと思うかもしれません。
確かにそれも重要な要素です。
しかし、一番のメインは、トゥーミーというビジネスマンなのです。

彼の抱える心の闇を描くのが、ランゴリアーズという作品です。
そう。今思えば、これもまた屈折した闇深男子の系譜だった……!
物語の進行を妨害し続ける問題人物ですが、同時にとにかく可哀想でならないキャラクターです。

彼は飛行機が正しくボストンに行かないことに激高しています。
一見すると、仕事一筋で融通の利かない堅物なのですが、そうなってしまったのには背景があります。

時々挟まれる回想シーンでは、常に父親に怒られています。

「AマイナスにBまである。BだぞB! これを見ろ、Bは”バカ”の取る点数だ!」

ランゴリアーズで一番怖かったシーンです。

そして、怠け者の悪い子はランゴリアーズに食べられてしまうという恐ろしい話を聞かされるのです。

大人になった後もこの記憶に悩まされ、極端に失敗を恐れる性格となってしまいました。
父親はもう生きていないのに、ずっとその陰におびえています。

彼の怒り散らかす口調が、父親にそっくりなのがなんとも悲しい。

そう。ランゴリアーズは「教育虐待」の話なのです。

ダイナは、視力を失ったことで、他人の心が伝わってくる等の特殊能力を得ています。
皆に責められているとき、トゥーミーの目からは、他の人間が恐ろしい化け物に見えていることを知ります。

この演出も怖かった。今、予備知識なしに見るとチープに思うかもしれませんが、当時は本当に怖かったんです。

これは子供と大人で見え方の違う物語かもしれません。
子どもの頃は、トゥーミーと同じ気持ちでモラハラ父に恐怖を感じ、彼の目に映るものにおびえていました。
大人になった今は、エンタメに落とし込まれた中で描かれる虐待の様子に心を痛めました。

この作品は1995年制作。
この時代にこういう問題を、自然にエンタメの中で扱っているのはすごいです。

大人になったトゥーミーも、子どもの頃のように怯え、遅刻は許されない。絶対にボストンに時間通りにいかなければならないと思っています。
子供みたいに泣いて。今でも子どもなんだ。可哀想に。

タイトルにもなっている「ランゴリアーズ」は、終盤まで現れません。
それまでに描かれるのは、主にトゥーミーに襲われる恐怖、そしてトゥーミーが感じている恐怖についてです。

もう、彼のヒステリーとか幼少期のほうが、過去に取り残されたこの状況よりずっと怖いんです。

こんなに問題児なのに、あくまで「トゥーミーさん」と呼ばれ、いなくなったら探してもらえるの、みんな良い人で感心します。
銃で襲われてもリンチしたりせず、縛って放置するだけで済ませています。
こちらはトゥーミーの恐怖に満ちた心情も見せられているので、彼の人権が尊重されているのにホッとしてしまいます。

彼以外、悪い人がいないのが救いです。

悪い奴が許されているだけではイライラするかもしれませんが、ちゃんと彼に悪態をつくキャラもいます。また、すぐにニックに武力制圧されるのでストレスがたまりません。

特にニックという男性は頼りになるのですが、トゥーミーにも他の人よりも厳しく当たります。
「すーぐに野蛮なことを考えて、これだからジョック野郎は……(偏見)」と思ったら、ゴリゴリの諜報部員さんだった。
彼の正体は物語の最後で明かされます。

主に機長とニックが頼りになり、ダイナに次ぐ準主役ポジションです(ある意味、トゥーミーが準主役っぽくもあるのですが)。

ダイナに寄り添ってくれている女性・ローレルも、いるだけで安心感のある大事な役割です。

トゥーミーが青年に発砲した場面。

「怖くて仕方がないんだ」(トゥーミー)
「だからって私は10代の男の子を撃ったりしないわ」(ローレル)

しっかりしている。
大学生の青年でも10代だから子供として扱うのは包容力がありますね。

この弱弱しそうに見えた青年(アルバート)も、トゥーミーを取り押さえようとしたり、武器で応援したりと勇気ある行動をしていきます。
正反対そうな薬物中毒のギャルといい感じになっていくのがほほえましいです。このギャルも根は決して悪い子ではありません。

良い人に見える機長も、過去に離婚裁判で「汚い手を使って」親権を勝ち取ったりと、綺麗ではない過去があります。
諜報部員として人を殺しながら生きてきたニックも。

悪人にも良い部分や同情できる部分が。
善人にも後ろ暗い過去が。
人間は一面だけではないということが描かれています。

この話の面白いところは、キャラクターがみんな個性的なところです。
この状況について推理をするミステリー作家も良い味を出しています。たまたま怪異に乗り合わせたミステリー作家というベタな設定がいっそ気持ちが良いです。

縛られているトゥーミーと、ダイナ・ローレルが会話する場面。

「心配するな子供は傷つけない」

彼も根っからの悪人ではないんですよね。本人も言う通り、「ただ怖くて仕方がない」。
彼は迫りくる音の正体を、「ランゴリアーズ」だと考えているのです。

「信じがたいほど足が速い」
「世界中に悪い男の子や女の子がいてぴょんぴょん跳ね回っている」

トゥーミーの父曰く、「跳ね回るのは目的もない怠け者の動き」「ランゴリアーズは走るんだ」

「あなたはお父さんが怖かったのねトゥーミーさん」

ダイナは、トゥーミーさんの心が見えるので優しいです。
優しく慈悲深くて、女神みたいに感じます。

しかし優しいだけではありません。
無垢と慈悲と残酷さを備えた女神です。
ラストまで観ればそれがわかります。

話は進み。
脱出のためには時間の裂け目まで戻らなくてはなりません。
飛行場にある燃料は食べ物と同じく形骸化し、火がつかなくなってしまっていました。
しかし、飛行機内に持ち込めば、元に戻り使えることがわかりました。

飛行機内で実験としてビールを開ける青年・ミステリー作家・機長・ニック。
きっちりおいしい匂いがします。
次々と飲み物を飲むミステリー作家とニック。
機長はどうするかと思いきや、手をつけなかった! 偉い!
これから飛行機を運転しなければいけませんからね。

”ランゴリアーズ”が来るまでに飛行場を飛び立たなければなりません。

そんな中で事件が勃発。
トゥーミーが縄をほどいて逃亡したのです。

ダイナたちはトゥーミーが隠れている部屋までたどり着きます。
机の下にいて姿は見えませんが、驚異的な聴力のダイナはどこにいるのか心音で見抜きます。

「すごく心臓の音が速い。可哀想。死ぬほど怖がってる」


「怖くない」と言いながら、机に近づくダイナ。
まるで傷ついた野良猫に接するようです。

しかし、トゥーミーに刺されてしまいます。
何となく、ダイナ、殺されたよな? と記憶がありましたが、刺されて血まみれになったのは間違っていませんでした。

逃亡するトゥーミー。

「あれはただの女の子じゃない。ランゴリアーズのボスだ」


その後、ガタイの良い紳士を刺し殺し、応援したアルバートに殴られて気絶します。
……が。

「ボストンへ行くんだボストンへ!!」

起き上がる! 演出がもうゾンビ扱いだよ!

もう一発くらって今度こそ倒れます。

アルバート、音楽家なのに強いし頭も良くて素晴らしいです。

一方、ニックは密かにトゥーミーにとどめを刺そうとします。
人殺しに躊躇がないところが、やはり闇の世界の住人ですね。
決して悪人ではない。正義感を持っています。諜報活動も暗殺も、よりよい世界の為だと信じてやってきたのでしょう。
しかし、ダイナがうわごとで言っていた、

「彼を殺さないで」
「あの人が必要なの」

という言葉を思い出して、思いとどまります。

慈悲の心かと思ったら、ランゴリアーズにおとりとして差し出すためなんですよね。

彼女がしれっとトゥーミーを生贄にするところ、子供の頃観た時から怖かったです。
血を流す彼女がトゥーミーを誘導するところは非常に印象に残っています。
「死なせてくれ……」と言っているのに、最期の最期にあんな恐ろしい目に遭わされるのが残酷で哀れです。
「トゥーミーさん、あんなことしたけど、可哀想」などと言いつつも、誘導するダイナが恐ろしいです。でも、彼女もいうなれば神のお告げのようなものにしたがって、みんなを助けるためにやったことなんですよね。それはそれで子供には重たい役割です。

死にかけのダイナを担架で運び、トゥーミー以外の生存者は飛行機に乗り込みます。

そこに、ダイナに誘導されたトゥーミーが走ってきます。

「トゥーミーさんが!」

この期に及んでトゥーミー”さん”。登場人物たちのこの優しさが好きです。
吹き替え版なので、訳をした人の判断かもしれません。

トゥーミーは飛行機を通り過ぎて、何もない場所に走っていきます。
彼にはボストン会議が見えているのです。自分が着席するのを待っている会議のテーブルと重鎮たちが。
ボストンの会議に間に合った!

そこで、自分が役に立たないクズ株を買ったことをぶちまけます。
ランゴリアーズに怯えながら父親に言われたとおりに仕事に生きる。そんな自分が嫌だったのです。
子供の頃は「こんなことして大丈夫?」と不安が。
大人の今は「よくやった!」と思いました。

しかし、これですっきりとはいきません。会議の重鎮はいつのまにか父親の姿に変わっています。恐怖におびえるトゥーミー。
全部ぶちまけたのは気持ちよかったものの、お父さんの呪いからは離れられなかった……。

この間にもどんどん不気味な音は近づいてきます。
鉄塔が順番に倒れたりと、迫ってくる描写が恐ろしいです。

そして、黒い塊が。

名前だけだったランゴリアーズが登場します。

ランゴリアーズがトゥーミーを追いかけているうちに、飛行機を発進させます。

ローレルが最後までトゥーミーさんに涙を流しながら目を向けていたのは救いです。
あれだけのことをしたトゥーミーですが、やむを得ず置いていく感じなのがよかったです。

トゥーミーに怒るキャラもちゃんといるので、観客をイライラさせないし、そのうえでトゥーミーへの寄り添いもあるところが救われます。

ランゴリアーズから必死に逃げるトゥーミーに聞こえる父の声。

「走っているつもりかもしれんがそうではない。跳ね回っているんだ」

「いい子になる、いい子になるから!」

子供のように泣きじゃくりながら食べられてしまいます。可哀想すぎる。

ミステリー作家が言います。

「あいつらは永遠のタイムキーパーだ」と。

過去を食い尽くす。

トゥーミーさんがランゴリアーズだと言ったから、ランゴリアーズ扱いされているけど、あれ自体は、実際は過去を食う別の何かなのでしょうね。

ではなぜトゥーミーさんをしつこく追いかけるのか? 飛び跳ねている悪い子だからか? いいや違う。
過去から逃れられなかった相手をランゴリアーズは追いかけるのかも。他の人物は少しずつでも前を向いている中で、彼だけは父親という過去を振るいきることができなかった。
だから食べられてしまった……。

この父親のような振る舞いが、子供の心に一生残るような傷をつける。
ランゴリアーズを見て大人になった子供は、この物語をきっと教訓に出来るでしょう。
物語はフィクションだから面白いこともありますが、現実に通じる問題を突き付けてくるものもあります。そこからは目をそらさずにいたいです。

トゥーミーを食らいつくしたランゴリアーズは、飛行場の地面を食い始めます。
真っ暗な穴の開いた地面を機体を揺らしながら走行するのにはハラハラしました。
何とか離陸に成功。
時間の裂け目を目指します。

その途中で、瀕死のダイナは死んでしまいました。
死ぬ寸前に、「トゥーミーさんの目を通してみた世界はとても綺麗だった」と言い。
トゥーミーさんを生贄にしてしまった以上、彼女もまた死ななくてはいけなかったのでしょう。
彼女は最期の最期までトゥーミーを悪く言いませんでした。
サイコキラーが暴れる作品は数多くありますが、そんな相手にも「寄り添い」がある。この作品の好きなところです。
(サイコキラーが暴れるだけの作品も大好きなんだぞ)

一方、機長とニックは男同士の話をします。

機長は、自分が犯した過ちについて話をします。
ニックもまた、自分の秘密を話します。自分は実は諜報部の特殊工作員であると。
な、なんか急に政治的な話になったぞ。
だからこんなに血の気が多いというか情に厚くも冷酷だったのか。

機長やニックだけではなく、みんな何かボストンに向かうことに不安があったのではないでしょうか。
そのまま行っていたら大きな不安や後悔のままだった中で、この過去に取り残されるという経験で違う道を選ぶことに。そういう希望のある物語だと感じました。

ニックは、ボストンには政敵の愛人を暗殺しに行く予定でした。
しかし、今回の体験を通して、汚れ仕事を辞めることを決意します。
ローレルのことを好きになったから。
「俺が人を好きなったって、仲間に聞かれたら笑われちまう」
このセリフだけで、彼のいた過酷な環境が伝わってきます。

そして時間の裂け目を発見。綺麗なオーロラの姿をしています。
これはよく覚えていました。

ここまで二時間以上にわたり、たくさんの困難がありました。
やっと終わるかと思いきや、ここでもまた困難が降りかかります。

時空を抜けるためには全員が眠っていなければならない。起きていたら消滅してしまう。
睡眠ガスを使って意識を飛ばすことはできる。問題は、着陸をするためには機長が起きて運転をしなければならないということ。
そのためには、ガスを吸わずギリギリまで起きていて、ガスを止めるボタンを押す人が必要となる。

1人はその身を犠牲にしなければならないのです。

俺がやる、というニック。
すかさずローレルが止めます。なぜあなたなのか、私も含む他の大人ではないのか。しかし、ニックの決意は固いです。
自分は今まで悪いことをして生きてきた。でもそれをやめるのだと。
向こうに帰ったら、自分の父親に、「やめた」とだけ伝えてくれと。
残酷なようですが、償いをする機会が与えらえたのは彼にとっては幸せなことなのかもしれません。
ここで人生の帳尻合わせをする。そのために彼は、時空のはざまに残されたのかもしれません。

みんなが眠った後、一人で時間の切れ目に飛び込む様子を眺めるニック。
笑っているけどどこか泣きそうなところ。綺麗な光に飛び込めることに心から感動を覚えているところ。
何とも切ない気持ちになる最後でした。

そして、裂け目の向こうの飛行場に着陸。
同じように無人で一瞬ドキッとします。
しかし、徐々に匂いや音が戻ってきます。ここは「未来」。
そして、「現在」が追いついてくる。
飛行場が人ごみに溢れ、日常に戻ってきました。

戻ってきたメンバーを見た子供が言う、

「新しい人間よ!」

が素敵です。希望に満ち満ちています。辛いことを乗り越えた先で貰えたご褒美のような言葉です。

ローレルはニックの故郷を訪れ、父親に会いに行くことを決意。
他のメンバーもそれぞれの未来に向かっていくのでしょう。過去に残されなければ選ばなかったような新しい未来に。
その前に、とりあえず新鮮な空気を吸いにみんなで外に駆け出すところで終わります。

奇妙で恐ろしい物語ですが、ラストは明るく終わるところがよかったです。
だから何度も観たくなるのだと思います。

CGは、うん、まあ。この時代だから。
ランゴリアーズのCG部分だけトゥーミーが語ったような「毛むくじゃらで口と手足だけの怪物」にしてくれたら、もっと完璧だった気がします。
ただランゴリアーズの登場は本当にインパクトがあって、彼らの動きも怖かったです。目に焼き付いて離れないくらい。
この時代に、ドラマという規模でこれだけのCG表現を見せてくれたのは本当にすごいです。

この良さを残したまま、リアルなCGに今ならできるだろうなと考えたり。
役者がすごく魅力的なので、そこは変えずに、CG部分だけブラッシュアップしたリメイク版が観てみたいなと思います。

~総括~

作品の表層はランゴリアーズや過去に取り残されるという大きな虚構です。
しかし、その核心にあるのは現実にある恐怖でした。

また、過去の自分とどう向き合うかという話でもあります。
きっと誰でも一つや二つくらい、忘れられない後悔、人には言えない過去、未来への不安があるはずです。

(ポケットモンスターのニャースの台詞で「誰でも人にはいえない過去の一つや二つくらいあるものにゃ(細部違うかも)」というのがあって好きです。いや、ロケット団、なんだかんだと言ったって、大人の匂いがするね)

過去に取り残された者たちの物語――いろいろと考えさせられました。

愛すべきB級映画に見せかけて、実はかなり深いテーマなことが、改めて観てわかりました。
1995年の作品ですが、30年後に見ても充分に通じる普遍的な作品です。

私がドラマ・映画の中でトップクラスに好きな、おすすめの一作です。



 

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