映画『シン・ウルトラマン』〜原作知らない目線での感想〜
2022年上映(日本)
監督、樋口真嗣 企画/脚本、庵野秀明 キャスト、斎藤工 長澤まさみ 有岡大貴 早見あかり 田中哲司
※ネタバレあり
「禍異獣」という謎の生物からと人類は戦っていた。そこに、謎の人型生命体・ウルトラマンが現れた。
シン・ウルトラマンを観ました! 私はウルトラマンはあまりなじみがありません。一本、何かの映画を観たことがあったかな? というくらいです。ただ日本国民として、一介の特撮好きとして人並みの知識は持っているつもりです。
そんな自分の目線ですが……面白かったです。続編を作っていってもよさそう! ただ、ラスト的には難しいのかな? 切ない終わり方でした。
個人的趣味だとシン・ゴジラより好きです。シン・ゴジラは、人間ドラマではあったし特撮映画でもあったし怪獣映画でもあったけど、私の求める「ゴジラ」は描かれていなかったので。
ゴジラの持つ悲劇性・怪獣王としての威厳。生き物としての感情。そういうものが観たいんだ……。
長い歴史の中でシン・ゴジラのようなゴジラ映画も一作くらいあっても良いとはもちろん思うのですが!
対して、今回は「ウルトラマン」というものの背負う感情や悲劇性、切なさ、熱さ、いろいろなものを感じることができました。
映画の中で一番よいなと思ったのはウルトラマンの動きです。ウルトラマンファンではないのに、ウルトラマンってこういう動きするよね! 絶対する! って思うリアリティと気持ちの良さでした。
怪獣たちもちゃんと生き物としてリアルでした。
序盤にたくさん怪獣が出てくるのはテンションが上がって良いですね。
正直、ウルトラマンの怪獣に愛着が持てるのか不安だったのですが、それは一瞬で解消されました。
みんな生き物としてリアルで感情豊かで、日本映画の怪獣はこのクオリティまできたか! と感動しました。
このクオリティでキングギドラとかモスラとか観てみたい。
最初の方に出てきたチャボみたいなのは特に可愛かったです。
私が怪獣に求めるもの中には生き物としての可愛さやリアルさや感情もあるので、大満足でした。
メフィラス星人がよいキャラでした。なんだかんだできちんと地球の文化を学んでいるところがよいですね。
でもそこを割り勘にしてしまうのはどうなんだ、メフィラス。勝手に連れて行ったのだからおごるところとは思わないかね!?
「好きな表現です」が連発なのに対し、「苦手な表現です」が一回だけなのも物事を好意的にとらえる性格(少なくとも対面的にはそうふるまえる)が出ていて素敵です。
これはしばらく流行る表現ですなあ。
作中で一番怖かったのはゼットンが「ゼットン……ゼットン……」言うところです。禍々しい。名前つぶやいてるなんてかなりマヌケなはずなのに。
役者さんの演技はみんな素晴らしく、また主題歌もすごくよかったです。
以下、順番に細かい感想。
ウルトラマン初登場時、スペシウム光線のポーズとるところがよかったです。ゴジラの背びれが青く光る時のような高揚感があります(ゴジラファンだからそれで例えてしまう)。
観客にとってはまさしくウルトラマンの動きですが、画面内ではそれを大真面目に皆が観ているのがシュールで面白いです。
ウルトラマンという名前を、現代劇でどう処理するか気になっていましたが、処理の仕方が自然でよかったです。怪獣も次次名前がつくのが気持ちよかったです。
会話の中で難しい用語が次々出る演出も個人的には好きです。燃える。
後半の外星人とのやりとりや交渉も面白かったです。
トンネルの車で出てくるのがベタだけどそこが怪奇っぽい怖さがあってよかったです。
わたしの好きな表現です。
偽ウルトラマンが町壊している姿が面白かったです。
むちゃくちゃ俗っぽい壊し方している。紳士なウルトラマンはこんな町の壊し方しない。
情報の入ったUSBを、オタクの男の子に託すところが好きです。浅見との関係以外もウルトラマンは大切に思っていることが伝わるので。
男の子も根性出して偉い!
ウルトラマンがあの有名なポーズでゼットンに向かっていくところは熱くなりました。
「そんなに人間を好きになったのか、ウルトラマン」
すごく切なくて感動しました。
ゾフィー、聞き分け悪いなと思ったけど、考えてみればかなり融通を利かせてくれたほうかもしれません。聞き分けが悪いのはむしろウルトラマンの方ですね(笑)。
ウルトラマンは死んでしまったのでしょうか?
切ないです。でも神永の意識の中には残っているのでしょうか、ウルトラマンとしての記憶は。
いや、ウルトラマンは生きている。きっと生きている! そして帰ってきたシンウルトラマンになるのだ。
ウルトラマンファンとして見れたらもっともっと楽しめただろうなと思うシーンも多々あり、ウルトラマンを知っている人たちが羨ましくなりました(笑)。
私程度の知識しかなくてもおおっと思えたのですから、ファンだったらもっとそのポイントが多かったでしょう。
最初から最後まで飽きるところもなく、わかりやすく楽しく見られました。ラストも切なかったですがよかったです。その切なさと主題歌がマッチしていて余韻が残りました。
以下の2点は気になったところ。
どちらも許容範囲で、「ちょっと気になった」程度の話ではあるのですが。
ひとつ、政治的な発言。
ふたつ、長澤まさみの描き方。
ひとつめについて。
台詞でアメリカをディスる(日本を自虐する)。
シン・ウルトラマンだけならそこまで気にならなかったですが、シン・ゴジラでもあったので、二回続けてされると「やな感じ」という気持ちが強くなってしまい。
べつに特定の国の悪口が聴きたくてゴジラやウルトラマンを観に来ているわけではないので……。
と、思ったのですが、もしかしてシン・シリーズは同じ世界線のお話なのでしょうか。それを感じさせるためにあえて登場人物に似た価値観や、世界に似た問題を持たせているのなら納得できます。
ふたつめについて。
論争にもなっている長澤まさみの誇張したアングル(作品全体を通した)。まあ、私も気になりました(笑)。
どうみてもわざとあざといアングルで映しているのはまだ許せるけど(まあ半分ギャグ? ともとれる)、真面目なシーン(手のひらに載っているところとか)でイヤにスカートがめくれていたりするのは特に気になりました。
エヴァは主人公が14歳の少年で、その少年から見た世界だから女の子のあざといのも思春期のぐちゃぐちゃの一環として自然に観れた。では今回は誰の視点? 監督? いや、か、神永はやはり紳士に見えて変態だった!? 唯一納得できるのは神永が変態で実は浅見をそーいう視点で観ているということになるのだが!? そーいえば神永の名前「しんじ」くんだった!? これは監督視点と神永視点がつながっているということを示唆しているのか!!??(暴論)まさかウルトラマンがそんな変態行為に及ぶとは……。
よし、私の神永はこの設定でいくね。
こうやって考えると面白いし許せそうです。結局映画を楽しむって自分がどう納得できる落としどころを見つけるか、ってことになるのかもという哲学に達しました。
においをかぐシーンはギャグだから良いと思います。むしろ私は好きでした。においを気にして恥じらうところに浅見の女のこっぽさが見えたり、ラブコメっぽい感じもあったりで。「まさかウルトラマンのような紳士がそんな変態行為に及ぶとは」って、ちゃんとメフィラス星人にツッコミ入れられているし。私の好きな表現です。
どちらも気にはなるけど流せる程度で、全体としてはとても面白かったです。
続編があってもいいのではないか、と思うくらいに面白い映画でした。
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