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『賭博黙示録カイジ』
1996年出版(日本)
著作、福本信行  


 友人の連帯保証で多額の借金をしたカイジが、返済のために命がけのギャンブル勝負を繰り広げる。


※ネタバレあり

 
(この感想は何年か前に書いたものです)
 賭博黙示録カイジ。最近、スピンオフされた「中間管理録トネガワ」にハマっている関係で、つい最初から読み返してしまいました。
 私はこの漫画の続編「賭博破戒録カイジ」に出てくる「一条」というキャラクターが大好きです。
 ゼロ乾さん と書いたのだから、一条きゅんについても語らなければ……と思っていました。が、ならば、黙示録から書くのが順序だろう……! ということで、黙示録の感想です

〜賭博黙示録の幕開け〜

 カイジくんが友達とトランプをしているところから始まります。
  友達の名前が「野茂」と「羽生」……のちの利根川先生の台詞で出てくる野球選手や棋士と同じ名前という。
 好きなんですね、作者さん。だからあえてトネガワの例にも出てくるのでしょう(笑)。

 自分のダメっぷりを嘆いて涙を見せるカイジ。
 カイジはとにかくすぐ泣きます。小学生か! でもそこが可愛くてよかったりします。

 そして、友達の借金の保証人になったことが原因で、借金取りに追われることとなります。
  借金取りの遠藤さんが、キザでロマンチストで憎めないキャラです。
 遠藤さん曰く、カイジの家族構成は父親はおらず、母親とお姉さんということです。
  これはお姉ちゃんに甘やかされてきたタイプですわ……。
 でも家族に危害が及びそうになると憤るあたりはクズだけど優しい。
 そのうち、お母さんやお姉さんにも登場してほしいですね。

 カイジはちょっとなよなよした面がありますが、家族が女性しかいないからかもしれませんね。

 遠藤さんにそそのかされて、ギャンブルで一攫千金するために「希望の船(エスポワール)」に乗り込むこととなります。
  そこでクズで甘ったればかりの債務者を叱咤するのが利根川さん(通称・利根川先生)。

「FUCK YOU」

 なぜか英語、しかも字体まで違う。

 利根川さんの名言、「大人は質問に答えたりしない」の深さ。
 こんな大事なトネガワ名言を読み返すまで忘れていただなんて。

 遠藤さん、利根川さん、兵藤会長と、黙示録にはカイジを説教する大人がたくさん出てきます。
「子供」のカイジを「大人たち」が説教して成長させる、というような側面があるのかなと思いました。
 続編の破戒録では、立派に成長したカイジは同世代の一条と闘うことになります。

 破戒録には有名な黒服「優しいおじさん」が登場します。
 優しいおじさんばかり注目されますが、初期から黒服たちは人間らしくて面白いです。
「こいつが裏切ってきて……」と涙ながらに訴えるカイジを優しく諭したり(小学生の喧嘩を仲裁する先生か!)、カードをめくるときにカイジの推理が当たっていたのを受けて、ニッとしたり。

 そういう細かいところがイイ。

「もし切れば、理由はどうあれその切ったという事実がゆくゆく重くのしかかる」「いよいよとなれば、この人は切る人だと考える」

 これはごもっともだと思いました。
 信頼は行動で作っていかなくてはなりません。
「カイジ」はギャンブル漫画ですが、深い道徳が根底にある作品だと思います。

 船井にしてやられたカイジ、殴りかかる!
 こいつ、ただのダラダラクズじゃない。喧嘩っ早いぞ。泣き虫の割には躊躇なく人を殴る。殴り慣れていないととっさに顔面に「グー」パンチは出せません。泣き虫で弱虫っぽいのに、そういうところは粗暴で、今までどんな人生だったのか? 不思議です。

 なんだかんだで船井をやっつけることに成功します(もちろん知略でギャンブルで)。

 この作品は伏線の張り巡らせ方が全体的にすごいです。それだけで感動できる作品です。


 安藤の顔。 並みのホラーより怖い安藤の顔。

 きさまらっ。きさまらっ。きさまらっ。それでも、人間かっ……!
 のインパクト。

「戦争だろうが……疑っているうちはまだしも、それを口にしたら、戦争だろうが!」

 すごく作者の哲学を感じます。

 昔は興味のなかった佐原だが、今読み返してみるといいキャラしてるなと思う。カイジに追っ手のふりして携帯番号教えてからかったりとか。
「へへへ」のコマ。これは腹立たしい(笑)。
  一見、若さゆえの軽くてちょっと悪いことに興味があるタイプ……っぽいけど、やることもいうこともかなり地味にイカれているのが興味深い。
 普通、金を盗んで人の鞄に入れたりしないだろ。しかもその相手と仲良くしようとしたり、やたら洞察力があったり……。どんな生き方をしてきた若者なんだ。

 そして、花束を持って現れる遠藤さん、キザで素敵です。

 今回のゲームは「人間競馬(鉄骨渡り)」です。
 地上からはるか高くに設置された鉄骨を渡るゲーム。最初はゲスな金持ちに囲まれて、お金を賭けられて、人間競馬として勝負をさせられます。
 鉄骨は人数分はなく、同じ鉄骨を数人で渡ります。しかし、賞金をもらえるのは一着と二着のみ。つまり、後続の人間は、先を歩く人間を突き落として、先に進まないと賞金がもらえないのです。

 真っ黒いページに大きな文字で「押せ」のインパクトはすさまじいです。人間の怖さが伝わってきます。

 また、鉄骨から落ちたときの描写も容赦がなくて怖いです。顔から落ちて、勢いよく噴き出す血など。

 みんな、お金のため、「ごめん」と涙を流しながら、前の人を落としていきます。
 そのことに、カイジは疑問をいだきます。

「あやまろうが……すまなそうにしようが……とどのつまり……落とすんじゃねえか……!」
「なんだよそれ……? そんなにすまないって思うなら、落とすなよ……!」

「押さないんだっ……! 押さなきゃ押されるとしても……押さないっ……! オレは押さないっ……!」

  人間が人間でいるために、裏切られても裏切ってはいけない。
 非人道的なギャンブル漫画なのに、寸でのところに道徳があるのがこの作品を名作たらしめているところです。

 非道な人間競馬の後は、いよいよビルとビルの間の鉄骨渡りです。落ちたら死は必至。
しかし、渡り切れば今度こそ大金が手に入ります。

 利根川さん、

「この利根川幸雄。こと金に限り虚偽は一切言わぬ」

 下種なこと言ってるのに格好いい。

 怯える一番最初の人の靴に「半ばおまじない」と照準となる線をマジックで引き、「全員渡るっ……! 一人も落とさないっ……!」 というカイジの優しさにぐっときます。どんな絶望の中でもどんなにかぼそくても人の優しさや絆は救いとなります。

 しかし、展開は無情です。
 まず太田が落ちていきます。「ひいいい」という叫びが次のページまで続き「いいいい」になっているところがとても怖いです。


 震えて怖がる先頭の相手の背中をそっと触れて安心させようとするカイジがいい。

「利根川先生」の初出は石田さんの台詞だったのか! なぜ先生呼びしたし(笑)。

「どんな事態になろうと、とことん真剣になれぬという病だ」

 最初に仲間はいない、みんな敵だと佐原にのたまっていたカイジが、結局一番みんなを助けようと、仲間として扱おうとしているところがお人好しな性格を表していていい。

 石田さん。

「死の際さえ……誰一人心から案ずる者の名が浮かばない……そんな成金より……最後の瞬間に自分以外の人間を心から案ずることのできた石田さんは……どんなに……上等かっ……!」

 カイジを怯えさせないように、あの臆病な石田さんが声を出さずに落ちていった。石田さん、素晴らしい。これはカイジじゃなくても泣く。

 このクズばかりのギャンブルの世界に身を投じながら、カイジがカイジとして在り続けられたのは。人間らしい優しさを持ち続けることができたのは、石田さんの存在があったからでしょう。

 ただのギャンブル漫画ではない、人生に通じる哲学的な表現が並んでいる。

「佐原が……佐原がただ……そこに在るだけで……救われる……!」

 散々孤独を説いた後のこの流れには体が震えます。ただ絶望を並べるだけじゃない、最後には希望を投ずる、救いを示す。 そこがカイジという漫画のすごいところ。

 何とか一人、渡り切ったカイジ。それに告げられる利根川の残酷な答え。
 ブチ切れて飛びかかるのは当然です。ガンジーでも助走つけて殴るレベル。
 ここで兵藤が「電流はすぐ切るべきだったし」と常識的なことを言うのが面白いです 。あの兵藤会長がまともなことを言っている!

 Eカード戦の前に、「負けたら土下座してバカにした態度について自分に、そして佐原や石原に謝れ」と利根川に約束させるカイジ。

 92ページ(9巻)の利根川の顔がいい。10mmと言われた時の。

 だんだんと利根川の顔が、余裕を持った大人の顔から、ギャンブラーの顔になっていく。(95p)

 唐突に胡散臭いエスパーのようなことを言い出す利根川先生。

「心の贅肉……見栄というもの……!」

 利根川先生はいちいちに名言が多いです。

 利根川はカイジの言動に心を揺らされることがあっても、それを顔に出さない、ポーカーフェイスを保っているところがいいです。それでも、心の揺れを背景や陰で感じさせる作者がすごいです。

「これが本当の会話だっ……!」
「今まであったかな……? これほど必死……懸命に……人の心……真実を知ろうとしたことが……!」

 会長の制裁がさく裂!
 悠然と威厳を持ち立ちはだかっていた利根川が打ちすえられている姿は何とも気まずく、言いようのない胸糞の悪さがあります。
 ここの会長は非常に不気味で恐ろしいです。

 イカサマに気づいた時のカイジの衝撃。それはそうです。あんなに立派に債務者を叱咤して「利根川先生」と呼ばれた男が、こともあろうにイカサマなんて。

「人に破滅を賭けさせ……このイカサマは酷いっ……!」
「許せないっ……! 許せない行為っ……!」

 針の限界を賭けるといったカイジをたしなめたりと、利根川も優しいところがある。
しかしそれを遮り、限界18ミリかけさせる会長。有無を言わさぬ笑顔が怖い。

「今、ちょっと困ったような気配を見せているが、あれもブラフ」

 これだけダンディなおじさまなのに「ちょっと」とかってたまに可愛い言葉遣いをするところがいいです。

 耳を切り取ったカイジに対する動揺具合も実に人間臭いです。

「管理はできても勝負のできぬ男……」
「二流だ……! 所詮お前は指示待ち人間」


 中間管理録トネガワを観てから読むと、このあたりの表現がより深く感じます。 利根川はやっぱり中間管理職が最適なんやなあ(実際の管理職は非常に重要で、たとえギャンブラーとしては二流であっとしても仕事人としては一流だと思います)。

 カイジの血を拭くタオルは債務者たちがどこからかたくさん持ってくるのに対し、利根川が拭くものを要求した時はペーパータオルしか出てこない……圧倒的、無能、黒服……!

「そんな様だから後ろの爺さんに見限られるっ……! 指示待ち人間なんて言われるんだっ……!」

 この言葉をうけて、利根川先生ベタフラッシュ。

「……こ……こいつ……! 殺すっ……!」

 とまで思う利根川。地雷。圧倒的、地雷ワード。
 よっぽど「指示待ち人間」がコンプレックスに触れる言葉なのでしょうね……。91ページ可愛い。この肩のすくみ方は萌えざるを得ない。
 この怒り、傷つき具合が人間らしくて素敵です。

 口からよだれを垂らしながら「うふふ」と笑う利根川さん。(12巻4p)

 ここまで屁理屈やイカサマをしておきながら、「人の背中を刺す非道……冷血だ」とは。このイメージ映像。

「会長がどう毒づこうと、オレはあんたを買っているっ……!」

 これはさんざん嫌味を言われ、「指示待ち人間」と言われたくないことを言われた利根川にとっては救いのような言葉です。
 そしてちゃっかり「じいさん」から「会長」呼び。
 利根川の視点に立っての「会長」呼びでしょうから、とっさにそれができるカイジはクレバーだと思います。

 勝利し、利根川に土下座を要求するカイジ。
 しかし会長が口をはさむ。

「わかってないな……カイジくん……」「人間いよいよとなれば……頭などいくらでも下げる」

 問題はその行為ではなく誠意だろうと。

 とどのつまり大好きすぎるやろ。

 借金における誠意など一つしかない。何をしてもいいから期日までに金を返すこと。それ以外に誠意などない。
 いろいろなことに応用できる深さがあります。トネガワに慣れ親しむと会長がぼけ老人に見えてきますが、さすが、世の中の真理をついています。

 焼き土下座にぶるぶる怯えて震える利根川先生が可哀想で可哀想で。でもこの後、やり遂げるのはさすがです。

「誠意とは、それほど厳しいのだっ……!」

 その時の感情で一人称が「オレ」だったり「わし」だったりするところがいい。

「もてというのか? 治療費くらい」

 と、またも常識的なことを言う会長が面白い。常識的なことを言うだけで面白いから反則である。

 利根川・会長と、大人たちがカイジに説教するのが教育漫画のよう。

「懸命に勝つ仕組みを積み上げる」というのは、人生全般に通じそうです。
 まあこの勝負では結局カイジは負けてしまうのですが。イカサマはダメだということですね。「押されても、押さない」この気持ちを忘れてはいけない。

 本編での会長の不気味さは半端ない。ホラー漫画レベル。

 ティッシュ箱の兵藤会長の手段はスマートで格好いいですね。イカサマを見抜いたうえで、イカサマで返すという。そしてそれを相手にさりげなく種明かしする。カイジの後学のために……。
 読者にも推理できるように、会長が提示した時点で紙に切れ目がついているところがいい。
 圧倒的大物感。

 このあたりの会長はやたらアクティブで迫力があって素敵です。

『中間管理録トネガワ』のせいで圧倒的おじいちゃんの印象が強くなってしまっていましたが、このころの会長は、強く・妖しく・恐ろしい、ラスボスにふさわしい威厳と魅力に満ちたキャラクターでした
 読み返していて、あれ、こんなに格好良かったっけ、となりました(笑)。

 カイジシリーズは、どのキャラクターもみんな魅力的に描かれているところがすごいと思います。

 最後に、一条のイメージイラストを載せておきます。(これは今日描いたもの)
 ワイの可愛い一条ちゃん……。
 一条イメージ画ところがどっこい
 (一条スマイル。素の口調がやぼったくて可愛い一条)
 来いよ一条
 (カジノ店長の立場を守らなくちゃいけない中、精一杯ガン付けて対抗するも、最終的にはカイジの挑発に乗って勝負を受け入れる青臭くて可愛い、いや男の意地が見える素敵な一条)
 カイジ一条イメージ画
 (作中、頻繁にある口に手を当て「ああ……」という可愛い一条)
 一条泣き出す
 (台を叩こうとして遠藤タックル&叱責を受けてついに泣き出す可愛い一条)
 一条黒崎様
 (ワイの中ではこういう可愛い一条のシーンがあったはずなんやが、読み返してみると、ない……!? ない……! 妄想……圧倒的、妄想……! たぶん電話のシーンが脳内変換されてた)

 5枚もあるのかよ!!(しかも最後の一枚妄想だったよ)
 さすがのクロックロも自分にドン引きである。


 破戒録編の感想を書いたらそちらに移動させます。
 本当は黙示録のシーンも要所要所を描こうと思っていたのですが、一条を描きながら、「私ごときには表現ができない」となったので、やめておきました。
 一条はせっかく描いたので載せます(強硬!)。「来いよ一条」が、一番原作の雰囲気を出せたかな……。


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