『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』〜ラストに感動〜
1967年公開(日本)
監督、福田純
特技監督、有川貞昌 脚本、関沢新一・斯波一絵
ジャーナリストの伍郎は、南の島・ゾルグル島で気象コントロール実験を行う研究チームに潜入する。そこに現れるゴジラ・ゴジラの息子・カマキラス・クモンガたち……。そして謎の美女。人間たちは無事に島から脱出できるのか?
※ネタバレあり
記念すべきミニラの初登場作品。
ミニラとはゴジラの息子にあたる怪獣です。
お恥ずかしながら、昭和ゴジラは記憶にあまりなく、今作品も初見のような気持ちで鑑賞しました(幼少期に観ているとは思うのですが)。
誕生したばかりのミニラは、可愛いより、むしろちょっと怖かったです。中途半端な成長状態の体で、うつぶせで手足を動かす姿、腹の底に響くような鳴き声……ごめんよミニラ、怖かったよ。
しかし、だんだんとミニラは成長し、その無邪気でいたいけな所作に愛おしさが湧き、ラスト、ゴジラとミニラが吹雪の中で抱きしめ合っている姿には不覚にも感動を覚えました。ミニラが放射熱線の練習をしていた辺りでは、まさかラストに感動させられるなんて思ってもみませんでした。
また、場面転換と一緒にいつのまにかミニラが太くなっていく姿に気づいた時は衝撃的でした。見た目も可愛げが出てきます。
このころのゴジラは目が漫画チックでびっくりします。これより以前の『キングコング対ゴジラ』(1962年)はそうでもなかったので、だんだんとコミカルになり顔も変わっていったのでしょう。
対するカマキラスやクモンガという、敵怪獣たちはやたらとリアルで、カマキラスがゆらゆらと動くさまは特に不気味でした。カマキラスは、見た目は昆虫そのものなのに、まるで人間のような行動をとるところが不気味さに拍車をかけています。また、左右の手で形状が違うところが格好いいです。
カマキラスがミニラの卵が埋まっている山を三匹で囲んで壊している姿はシュールでありホラーでした。卵が出てきて、ミニラが生まれたらさらに三匹でゆらゆらと叩きます。生まれたてのミニラはあまり可愛くないこともあって、怪獣映画よりホラーの体をなしていました。
「なんてやつらだ弱いものいじめしやがって」
という主人公の反応が素敵です。
生まれたミニラに対して主人公が一言、
「あれはゴジラの赤ん坊じゃないか」
なんであの姿を見てそう思うんだよ!!
私の目からはあの新生児ミニラをゴジラの仲間と判断することは難しかったです。
しかもミニラの目、ゴジラに負けず劣らず人間のようでちょっと怖いです。
カマキラスが空を飛ぶ姿は迫力がありました。クモンガは糸を吐く能力があるし、特殊能力があるのは見ごたえがあります。
舞台は南方の島・ゾルグル島。そこに「合成放射能ゾンテ」を使った気象コントロール実験をするために日本人たちがキャンプを張っています。名前からして悪そうな物質です。こういう点にゴジラのテーマである放射能への警鐘はしっかりと反映されています。
「それだけ意義のある実験をどうして凍結するのですか」
「それだけ悪用すると怖いのだ。核兵器と一緒だ」
このあたりのやりとりに問題提起があります。
主人公・伍郎はジャーナリストで、ヘリからパラシュートで島に降りてきて、取材のためにキャンプへ仲間入りします。
「誰がPRだと言いました? 僕ははらごしらえがしたいだけです。(中略)読むか読まないかは読者が決めることです。僕は自分の勘を信じるだけです。博士だってそうでしょう。自分の研究のためだったら、鬼にも蛇にもなる」
一発で性格のわかる、よい台詞です。
キャンプの様子は楽しそうで、自分もやりたくなりました。また、赤い沼へ万能薬を取りに行ったり、洞窟でクモンガに襲われたりと、冒険要素もあり、ロマンに溢れる内容です。実験施設にもワクワクしますし、昭和の子供たちはこの映画に夢を見たんだろうなと思いました。
伍郎と島に住む美女のロマンスもあったりして、人情味あふれるハートフルストーリーでした。
伍郎がけっこういいキャラで、さっぱりしていて気持ちよく映画を観られました。相手の美女も快活で魅力的でした。
美女が泳ぐ姿はいい意味でベタでした。
ゴジラに置いて行かれたミニラに美女が口笛を吹くシーンはなごみました。口笛はおそらくゴジラの鳴き声を真似しているのでしょう。
「これお食べ。元気が出るよ」
日本語喋るのか!
とツッコみたくなったのですが、これがのちの展開の伏線となっています。
美女は日本人で、サエコという名前だったのです。実は、かつてこの島に研究に来ていた博士の忘れ形見が島に一人残っていたのでした。
サエコと伍郎のやりとりはほほえましい気持ちになります。
「東京?」
「人間のジャングルさ」
「伍郎も東京に帰るの?」
「帰るさ。サエコを連れてね」
「嬉しい!」
実験をしようとすると、妨害電波で失敗してしまいます。その妨害電波はミニラのテレパシーで、ゴジラを呼んでいたのでした。VSシリーズのベビーゴジラが仲間を呼ぶ能力はこれのオマージュか! と思いました。ベビーゴジラもゴジラの息子(義理)、しっかりとミニラの設定を引き継いでいるのだなと感心しました。
最終的には実験は成功し、島に雪を降らせます。怪獣たちが冬眠につこうとしている隙に、人間は島から脱出するのです。
唐突に降り出した雪、不安から抱き合うゴジラ親子……。
「死ぬわけじゃない。冬眠するだけさ。雪が解けたらゴジラ親子はあの島で楽しく生活するんだよ」
この台詞と、抱き合いながら雪の中で眠りにつくゴジラ親子の姿に、なんとも言いようのない感傷を覚えました。
この作品のゴジラは、顔が漫画チックなだけではなく、性格や動きも擬人化が強くなっています。横に寝そべって尻尾でミニラを遊ばせてみたり。ミニラに人間さながらの動きでしつけをしてみたり。カマキラスとのバトルではプロレスのように投げ飛ばしていて面白かったです。時代によっていろいろな姿を見ることができるのが、ゴジラ映画の魅力の一つです。
だだをこねるミニラや、ミニラの尻尾を引っ張ってひきづって帰るゴジラの姿はほほえましいです。いいパパをしています。
全体的に子供向けなのですが、たまに出てくる描写がリアルなところにドキッとします。カマキラスの腕が放射熱線でちぎれて燃えて飛ぶところとか、残酷です。
カマキラスたちに一方的にやられていたミニラですが、観返すためにゴジラに放射熱線の出し方を習っています。
ゴジラの出す放射熱線に驚く姿が可愛いです。
ミニラはどう頑張ってもゴジラのような熱線が出せません。出るのはあの有名な輪っかの熱線です。ゴジラが尻尾を踏むとびっくりしてきちんとした熱線が出ます。放射熱線を出せたミニラの頭をなでなでするゴジラに心が温まります。
ミニラは一度だけ自分で熱線を出すのですが、ちょうどゴジラは寝ているというお約束。
こうしてみていると、50年前の作品でもギャグや笑いどころのポイントって基本、現代と変わらないのだなと興味深かったです。
カマキラスたちのところへ向かうミニラ。やり返しに来たか!
しかし、うまく放射熱線を吐くことができない! カマキラスに叩かれる!
一発叩かれて戦意喪失か!?
カマキラスのヤンキーカマキリ具合がすごい。
しかしここでゴジラ登場。カマキラスは帰っていきます。
子供の喧嘩にすぐに親が出てくる、ゴジラは文字通りモンスターペアレントなのか。
そして、カマキラスの喧嘩の最中にミニラが落とした石の影響で、クモンガが眠りから覚めてしまいます。
クモンガの造形はとても怖いのですが、糸がどう見ても作り物なところに何とも言えない昭和のかほりがします。
クモンガが目の前に現れたときの、ミニラの怯えっぷりがすごいです。逃げようとするミニラをクモンガは糸でがんじがらめにしてしまいます。徐々に動けなくなっていく様子がとても怖いです。
ミニラが「ふわーふわー」と鳴いてゴジラを呼びます。この「ふわーふわー」という鳴き声が独特で鑑賞後も耳から離れません。
そして熱帯の島に雪が降り、実験は成功。研究チームと伍郎・サエコは島を脱出します。最後のサンタクロースみたいな衣装がまた子供心をくすぐります。
雪の中、歩くゴジラに、ミニラが一生懸命ついていきます。歩きながら、ゴジラは空に向かって一声します。『デストロイア』ラストのシルエットもやったこの吠え方。天を仰ぎ両手を動かして咆哮する姿には生命への畏敬の念を感じます。このころからゴジラの吠え方は変わらないのですね。
そしてゴジラとミニラは雪の中で抱擁。ゴジラは吹雪からミニラをかばうように体を傾けています。ストレートに親子愛が表現されていて胸に響きます。
人間たちは冬眠させるだけであることを知っているけど、ゴジラ親子は何も知らないのだから、きっと不安と恐怖に包まれていただろうなと思います。そんな中での、息子を不安にさせまいとするゴジラの行動だからこそ余計に胸を打ちます。
最後、迎えが潜水艦であるところも(なぜ? とは思うけど(笑))子供心をくすぐってグッドだと思います。
美女が助かったのは抜け道のおかげだったり、妨害電波はミニラが出していたりと、子供向けの単純な話に見えて、あちこちに伏線がしっかりと張られているところに感動しました。
親子で観ることで絆が深まる内容で、制作陣の優しさを感じることができました。
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