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『模倣犯』〜芸術は爆発だ!〜
2002年公開(日本)
原作、宮部みゆき 監督・脚本、森田芳光
  


 高校生の塚田真一は、犬の散歩の途中、公園で人間の片腕を発見する。そこから明らかになる連続誘拐殺人事件。失踪したと思われていた女性たちは殺されていた――。片腕とは別に発見されたハンドバック の持ち主・鞠子の祖父、義男。事件を追いかけるライター、前畑滋子。犯人を追いかける警察……そして犯人たち。
 マスコミにかかってきたキイキイ声の電話による犯行声明から、事件は動きだす。



※ネタバレあり



 小説版『模倣犯』の感想が終わったので、映画版についても。小説版のネタバレも多く含みますのでご注意ください。

 映画版模倣犯は、原作者が試写会を途中退席したという噂もあって非常にほめにくい空気がありますが、自分的には嫌いじゃないです
 映画版から入っていますので、ヒロミやピースのイメージは完璧に映画の容姿になっています。
 ヒロミくん(津田寛治さん)の怪演がすごくて、最近ならシン・ゴジラを観たときも「ヒロミくんやんか!」と思いました。自分の中では今でも津田寛治=栗橋浩美です。
 いい具合に気色悪くて憎めないキャラでした(笑)。

 主演の中居正広さんはじめ、役者さんはみんな好演だったと思います。
 観終わってしばらくは中居正広さんはサイコパス的に見えていました(笑)。

 あと、山崎努さんが出ていることもポイントが高いです。豆腐屋の義男じいさん。町のお豆腐屋さんとは思えないくらい迫力があります。
(山崎努さんは『マルサの女』と『藁の楯』の役が格好よかったです。歩き方に雰囲気がありました)

 小説版の感想でも書きましたが、映画で好きなのは「やめろ、ピース」のシーンです。寸でのところでピースになれなかった、ヒロミくんの人間臭さが印象に残っていました。悪ぶってるけど、極悪にはなり切れない。
 ほとんど映画版は内容を忘れてしまっていて、断片的なシーンとキャラクターだけ覚えている状態でした。その中であのシーンはずっと覚えていました。

 また、なぜか頭の中で『クロスファイア』の映画とごっちゃになっているので、こちらもちゃんと観返さないとなあと思っています。

 映画を観た感想としては――そりゃ、内容忘れてるよ! 内容ないもん(!)。
 原作が長いから仕方がないのですが、地続きになった映画というよりも、シーンを断片的につなぎ合わせた感じでした。ぶつ切り状態なんですね。
 実際、一個一個のシーンは覚えているものは多くて、でも頭の中でバラバラになっていて一つの物語が作れていないというのが、「忘れていた」よりも近かったです。
 原作を読まずに観たら展開を把握しきれなかったかもしれません……。

 まず、始まり方のオシャンティーさに驚きました。こんなんだったっけ。

 映画のサイケデリックな感じは、何かに似ているなーと思ったら、「ゴジラ対ヘドラ」でした。ヘドラ、好きなのです。子供の頃から。あの歌が頭にへばりついて離れません。
 ヘドラの冒頭に近いような退廃的雰囲気というかサイケデリックさというかそんなのが全編にわたり流れている感じがします。

 この映画のすごいところは、大筋は原作と一緒なのに、まったく違うテイストの出来になっているところです。あの大真面目な原作から、どういう発想をすればこんなアヴァンギャルドな映画ができるのか。

〜原作にないユニークなセリフ回し〜

「大豆と一緒にこねてやるよ!」(義男)

「CだっけTだっけそれとも田川だっけ」(ヒロミ)

 ヒロミと彼女の喧嘩シーンはやりとりが面白かったです。「肉の後そば思い出させんな!」。

「ピ―――ス!!」
 恋人を殺してしまい、山でさまよいながら叫ぶヒロミ。
 ドラえもんか!!
 その後、画面が引いていって森から日本へ、最後は大気圏へと離れていく演出も含めて昔の「ドラえもん劇場版」で笑ってしまいます。
 前髪が微妙に坊ちゃん狩りなのものび太くん意識しているのか?
 誰だって困った時に叫んだら助けに来てくれる相手が欲しいよね。

「ピース、お前ってやつは頭の中に冷凍室があんのか?」(ヒロミ)

「こんな事件に巻き込まれるのはろくな女じゃない」(ヒロミ母)
「(ろくな女じゃないのはお前だよ。もっと事件に驚けよ。お前の息子がやってるっちゅーに)」(ヒロミ)


「お前ら焦ってるね」(義男)
「失うものがないから強気だね、くそジジイ」(ピース)

 口答えされて、じいさん→くそジジイになるところがグッドです。

「ボルネオであんたに殺されたサンダース軍曹はボクの親父だ。戦争だとはいえ、妻も子もある相手をあんたは殺したんだ」(ピース)
「俺が行ったのは満州だ」(義男)
「冗談だよ、安心しろ」(ピース)

 もう何なんだよ、これ。しかもこの時の電話はヒロミくんじゃなくてピースっていうね。
 この後、ヒロミと会話しながら、「戦争ジジイのくせに」というのが非常に現代っ子ぽいです。「男をやったらじじいのせいだ!」というヒロミくんも軽い。少年同士のやりとりみたいです。

「お願いだよ、頼むよ、一人にしないでくれよ。頭の中がナルトなんだ」

 ヒロミくんの泣きそうなすがるようなしゃべり方がツボにはまります。
 何より恐ろしいのが、フザケタ台詞群の中でも群を抜いてフザけている、

「何だよ、お前の武器って。そばの、麺棒か?」

 が、原作にもあるというところだ!!

「あの喫茶店の鳩時計になるかと思ったじゃないか」
「鳩時計!?」


 原作ではブチ切れまくっていたレストランでの待ち合わせシーン。
 映画のヒロミくんはカズにも怒ったりせずむしろ優しい甘えた態度なので、「やめろ、ピース」も不自然でなく受け入れられます。

〜キャラクター性の違い〜

 原作とはキャラクター性に違いがあります。

○ピース
 事件の主犯。
 原作よりも大人で落ち着いた印象です。
 職業は塾講師から経営コンサルタントへ変更。うさん臭さましましです。
 小説は文字で書かれていない部分は観ることができません。しかし、映画ではそこに立っているだけで人物の雰囲気を感じることができます。中居さん演じるピースは原作にはなかった寂しさを抑えているような雰囲気がありました。
 親や親せき、守られるべき大人たちから疎まれてきた子供時代。たくさんの傷を受けて、それをニコニコ笑顔で隠してきた人生。そういうバックグラウンドを受けての演技だと思いました。

○ヒロミ
 ピースの相棒。事件の実行犯。
 原作よりも、ちょっと気色悪くて憎めないキャラに変わっていました(笑)。
 役に関して、声がすごくいいなと思いました。甘えたようなしゃべり方が角を丸くしていて、原作の凶暴性を殺いでいるので観ていて辛かったり怖かったりということがありませんでした。
 今より古い時代の映画なので、ヒロミくんが格好いい扱いなのか微妙にイマイチなのか判断がつかないのが残念です(笑)。 
 演じている津田さんは「ピースは守ってやりたい、側にいてやりたい。カズは側にいて欲しい、守ってほしい」という浩美から見たピース像、和明像を作っていたそうですHP参照)。
 それは中居さんがピースをとても寂しげに演じたからこそ、そうなったんだと思います。カズにもそういう雰囲気があったということで、映画版はとにかく役者さんが素晴らしかったです。

 余談ですが、『模倣犯』は最近(2016年)にドラマ化もされているみたいですね。それだとヒロミくん、殺しの時に顔におしろい塗りたくって真っ赤な口紅引いてる(ジョーカーメイク)そうです。何で映像化するときにみんな彼をちょっと変態チックにしたがるんですか。
 ヒロミくんの趣味なのかピースの趣味なのかとても気になります。

 彼の複雑な内面を映像で表現するのはそれだけ難しいということなのかもしれません。

 ヒロミもピースも原作通りのキャラかといえばそうではないけど、その分、キャラクターへの親心みたいなものを、演じ方に感じました。
 ちゃんとピースの痛みを理解して、それを包むヒロミを作って、ヒロミの甘えられるカズを作ったのはよかったです。原作を読んだから特に思いました。監督、スタッフ、役者さん、みんなが親のような気持ちでピースたちを作っていたんじゃないかなと。

○カズ
 ヒロミの幼馴染。事件に巻き込まれ、死後に冤罪を被る。
 カズは原作よりもピュアというか、ピュアを通り越していました。
 原作のヒロミのピースに対する心酔が、映画ではカズのヒロミに対する心酔に近い感じがしました。
「ヒロミは誰よりも純粋なんだ!」
 ヒロミくんもかなりアレだがカズもたいがいヤバい。

 ピースが転校してくるのが、小学校ではなく中学校であるところも変更点です。
 黒板にピースマークを書くところ、ピースを見つめるヒロミのハッとした顔、そんなヒロミの様子をうかがうカズ。この三人の人間模様がパッとわかってよかったです。特にヒロミを見るときのカズが何とも言えません。これはもうあちら側に踏み込んでいると言わざるをえない。

○鞠子
 行方不明になった女性。後に死亡が確認される。
 原作では何の落ち度も悪いところもない女性でしたが、映画では何か秘密が在る感じでした。ぼんやりですが、おそらく不倫していて、その相手のところに行こうとしていたところを誘拐された感じです(?)。

「おじいちゃんにだけはそれをわかってほしくない」

 と、ピースに口止めを頼み、ピースはそれを承知します。

「無垢の鞠子」が被害を受けるからこそ原作では悲劇的だったのですが……。もしかしたら日高千秋が出せないから、このようにしたのかもしれませんね。不倫していたからと言って殺されていいわけではない、ということで。

 滋子はちょっと、感情を抑えたキャラクターになっていたかなと思いました。ラストなど、それがとても効いていました。
 あと、なぜ犬のロッキーを柴犬にしたの!? いや柴犬も可愛いけどもけども! ロッキーはコリー犬(雑種)だったはず! あんな和風な顔してロッキー、だと……っ。


〜ストーリー〜

 滋子や真一のエピソードが削られ、ピース&ヒロミ、義男に焦点を当てられた内容になっていました。二時間で総てを描き切るのは難しかったのかなと想います。

 明美(ヒロミの恋人)の死をごまかすために、ピースは両親に手紙を出すことを提案します。明美の筆跡をまねて、「親に頼らず一人で生きてみることを考えた」という内容の手紙を書くのです。

「自分たちの頭の中に、つまり意識に娘が生きていればそれでいいのさ」

 というのは、寂しいけれど、人間心理をよくついているなと思いました。

 映画版では、同じ手段で義男と真知子(鞠子の祖父と母)のところにも手紙を出しています。

 お母さん、おじいちゃん。鞠子の勝手をお許しください。鞠子は今、大好きな人とカナダにいます。

 皮肉なことに、事件が発覚した後も、真知子にとってはこの手紙が救いとなっています。壊れてしまった心を、何とかギリギリのところでこの世につなぎとめられています。
 義男は鞠子が事件に巻き込まれたことを真知子に黙っています。

「幸せならどこにいてもいいじゃないか」

 そう答える義男さんが切ないです。
 お母さんにはそう思わせておきたいよね……。「幸せならどこにいてもいいじゃないか」

 劇場型犯罪として動くとき、「ヒロミは広報担当だ」と、褒めて動かすところがピースらしいと思いました。

 豆腐屋から公園まで二人で歩きながら、関係する人たちが出てくる様子が舞台の演出みたいでよかったです。

 ライブ殺人というのがオリジナルで挿入されていて笑いました。それを見ようとする爆笑問題の二人。このころ流行っていた芸人がわかるのも興味深いところです。

 先に挙げたドラえもん的演出の他にも、ピース&ヒロミが向かい合って見つめ合いながらパイナップルにむしゃぶりついていたり、カズが練乳をチューブのまま食べたりといったシュールな演出が多かったです。

 犯行声明の電話を外国語で行うところも笑いました。何でだよ(笑)。
 CMが入るという予想外のことが起こったら、途中から日本語に戻るところがまた面白いです。ヒロミくんの動揺をよく表しています。

 ピースに変わるとしゃべり方が変わるところはわかりやすくてよかったです。ここを分かりやすくするためにヒロミくんに外国語をしゃべらしたり、変なテンションにしたのかなと思いました。

「冷静になれヒロミ、かけなおすんだ」
「やだね!」


 ここの二人のやりとりが性格が出ていてよかったです。感情を抑えながら冷静に支持するピースと、これまた感情を抑えているものの怒りがにじんで吐き捨てるような言い方になっているヒロミくん。
 部屋を出ていくヒロミ。帰ってきたら、ピースが電話をかけ終わった後でした。

「残りの台詞を代わりに言っておいたよ。ヒロミと違って少しあがったけどな」
「すまん」


 原作とは違いますが、二人の何とも言えない絆が感じられてよかったです。原作ではここで二人の関係にひびが入ってくるんですが、映画だと雨降って地固まるような雰囲気ですね。

 長いので分割します。 →後編へ  

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