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犬木加奈子絶叫コレクション学校がこわい!』

〜カエルの王子さま〜
2000年公開(日本)
監督、貝澤幸夫 原作、犬木加奈子 脚本、小中千昭 出演、山口勝平
不気田くん
※イメージ画

 ※ネタばれ含む



 「どうして誰もボクの愛を受け入れてくれないんだ」
 木田不美男――通称・不気田(ぶきた)という、醜くて不気味な雰囲気の男の子が、女の子に惚れては狂気じみた求愛を繰り返し、彼から逃れようとして女の子は死んでしまう……という展開が繰り返される。

 タイトルは『学校がこわい!』
 なぜなら不気田くんがいるから――って不気田くんどんだけやねん。

 子どものころにたくさん観たホラーアニメの中でも異色の一作。普通に「怖い」という話ではなくちょっと悲喜劇っぽくて印象に残っています。
 何より不気田くんのキャラクターが濃い。
 不気味だから不気田と呼ばれる男の子なんですが、今見ると不気味っちゃ不気味だけどなんか可愛いです。
 見た目もだし、中学生(高校生?)にもなって虫取り網でちょうちょ追いかけてる姿とか、自分の行動のせいで毎回女の子が死ぬのにそのたびグズグズ泣くところとか最高に可愛い。
 しかし、物語の女子たちからは不気味がられ忌み嫌われ、「不気田に好きになられたら、人生終わりよ!」とまでヒソヒソ噂されています。
 なんでや、不気田可愛いやろ! なんでや!

 ホラーとギャグは紙一重と言いますが、今作もギャグなのかな? と思える描写がいろいろあります。

●一話『マツ子さんの愛』
 毎回出てくる題名がシュール。

 最初のヒロインはツインテールのマツ子さん。授業中に不気田くんと目があったことでロックオンされます。
 下校時、マツ子さんが靴箱を開けると四葉のクローバーがはらり――。

 が、一個ではない! 四葉のクローバーで下駄箱内が埋め尽くされている!! これはさすがのクロックロでもドン引きする!

 そこに登場する不気田くん。
「僕、マツ子さんのために一生懸命集めたんだ……」

 けなげってレベルじゃない。
 マツ子は拒絶しますが、「マツ子さんは自分の心に嘘ついてる。本当はこの僕を好きなくせに」と不気田くんは迫ってきます。このポジティブ感がやばい。今作はストーカーとか勘違い男の心理を読み解くうえでも興味深い作品だと思います。
 台詞と行動は肉食なのにしゃべり方がへにゃへにゃしているし体は縮こまった感じだしでギャップが面白いです。

「あんたみたいな不潔っぽいやつ好きになるわけないじゃない!」
 と、不気田くんを拒絶し突き飛ばそうとするマツ子さん。その手を逆に握り返しプレゼントを渡すという華麗な技を決める不気田くん。
 プレゼントは不気味な土人形でした。思わずマツ子は床に落とします。衝撃で人形の頭の一部が欠けてしまいました。悲鳴を上げる不気田くん。
(ちなみに原作ではここで、「なんていうことを! これはぼくのあいのしるし これは僕の心 これは僕自身だったのに」と言います。ヒエッ)
「忘れないで……僕は死んでも君を愛し続ける」
 そういって道路に飛び出し、車にはねられて死んでしまいました。

 不謹慎ながらほっとするマツ子。不気田くんからもらった人形をゴミ箱に捨てます(家まで持って帰ってくるところが律儀)。
 しかし、不気田くんはゾンビになってマツ子の家を目指しているのでした。

 その途中で割れた鏡に映る自分を見て、「不潔」と言われたことを思い出して静かに泣くところがなんだか可哀想に見えます。
 不気田くんは、彼側の人間としての感情の機微が描かれているところがよくいる怪人とは違います。そこがだんだんと感情移入していってしまうポイントなのかなと思います。
 そして不気田くんがとった行動は、入浴中のマツ子さん宅のバスタブから登場するという異常行動。うん、これはキモいね。

 マツ子さん部屋まで逃げる! 追ってきた不気田くんの頭は、人形と同じように欠けた状態でした。
「たとえあんたがどんなに格好良くても、死んだ人間を愛せるわけがないのよ。私は、生きた人間が好きなの!」
 と、不気田のくれた人形を破壊。不気田もバラバラに砕け散ってしまいました。
 平穏を取り戻したかに見えたマツ子さん。だが、再び不気田が現れる……「生きた人間が好き」という言葉によって蘇生したと。
「あんたに愛されるくらいなら――」
 走り出すマツ子さん、車にぶつかって死亡。
 バッドエンド。マツ子さんの靴を抱えてむせびなく不気田くん。
「なぜ?」


 いや、お前のせいや!!
 こういう感じで、不気田くんに見初められた女の子がその愛から逃れるために死ぬというのが基本的なストーリーです。

●二話『蝶子さんの愛』
 ○○さんへの愛、ではなく○○さんの愛、とつくところに、不気田くんの勘違いっぷりが出ていて素敵です。

 マツ子さんを失い、形見の靴を触りながら木の下で泣いている不気田くん。そこに、一枚のハンカチが飛んできます。
 ハンカチで勝手に鼻をかむ不気田くん。持ち主の蝶子さんがそこに現れます。蝶子さんは黒髪ストレートの清楚系。頭には蝶の髪留めをつけています。
「すみません、うっかり、使ってしまって」


 謝りながらハンカチを返す不気田くん。まともな反応だ……。
 不気田くんはバケモノではなくあくまで気持ち悪い同級生、そして本人も微妙に普通の子っぽいところがあるのが面白いです。彼はあくまで人間なんだな……不気味だけど……変な魔術使ったり死んでも生き返ったりするけど……。
 しかしハンカチは鼻水でべとべと。蝶子さんドン引き。ハンカチをそのまま不気田くんにあげることにします。これが原因で今度は蝶子さんがロックオンされてしまいます。
 マツ子さんの靴を放り出し、ハンカチを握りしめる不気田くん。
 さっきまでマツ子の死を悲しんでいたのに心変わりが早いです。不気田くんの愛は重いのか軽いのかよくわかりません。
 さっそく学校内でも蝶子さんのストーカーを開始。それにしても不気田くんが廊下を歩いているだけで逃げていく女子たち……これは立派ないじめではなかろうか?

 蝶子さんが男子たちに囲まれているのを見て落ち込む不気田くん。
「女の子はみんな気まぐれな蝶なんだ。ちょっと目を離すとすぐに飛んで行ってしまう。だから――」


 この「だから」の言い方が非常に気持ち悪いです(笑)。

 自分の髪の毛で蝶子さんの髪留めに魔法をかけ、蝶子さんを拉致監禁します。
 蝶子さんが目覚めると、一匹の蝶が狭い虫かごで飛び回っている姿が目に入ります。
「あんなに狭い籠の中で可哀想……」
 自分が見たこともない部屋のベッドで寝ていることに気が付く蝶子。誰かに後ろから肩をつかまれます。
 出された食事のスープに映り込む不気田の姿。
「いやぁ、やめてよー!!」

 ここの蝶子さんの嫌がりっぷりが半端ない。

 逃げようとする蝶子さんの髪の毛をつかんで止める不気田くん。
「どうして? どうして!? あんなに優しい笑顔を僕にくれたのに」

 
 蝶子さんのひきつり笑いも不気田くんには優しい笑顔に見えていた模様。目が合っても勘違い、愛想笑いでも勘違い、この勘違いっぷりは学校の女子たちには恐怖ですね。だから「学校がこわい!」というタイトルなのか……。

「どうして? 僕を愛してくれたんじゃなかったの?」
「愛して?」

 この言葉にキレる蝶子さん。出された食事についていたフォークで不気田くんの手を突き刺し逃亡に成功(本当は目を狙っていた、この女の子もなかなかえぐい)。

「蝶子さん……」


 涙声の不気田くん。だんだん可哀想になってきます。
 扉を開けると、なんと虫かごのようにつるされた部屋にいたことがわかります。蝶子ドン引き。視聴者もドン引き。

 何とか逃亡に成功。
「女の子は蝶と同じ。どんなに僕が愛しても気まぐれにすぐ飛び去ってしまう。だから籠の中に入れておいたのに」
 詩的な表現で拉致監禁を正当化する不気田くん。手に刺さったフォークを抜き、蝶の羽に突き刺します。
「蝶には羽があるから、羽があるからいけないんだ」
 それと同時に倒れる蝶子さん。いつのまにか部屋に連れ戻されています。しかも体が動かない。
 刺された蝶は実は蝶子さんの髪留めで、彼女の肉体とリンクしているのでした。
 

 このころ不気田は買い物に行っていたようで、ちょうど門を開けて帰ってきます。門が蝶の形なのは蝶子さんに合わせて作り替えたのでしょうか。
 幽霊屋敷みたいな不気味な洋館に、買い物を持って帰ってくる所帯じみた不気田くんの姿がシュール。
 この様子から蝶子さんに出している食事は不気田くんが自分で食材選びおよび調理をしていると思われる。りょ、料理男子……!
 怪我した手に包帯を巻いているあたり、超能力はあるものの基本的には生身の人間っぽいですね。そのままにしないでちゃんと手当をするのだね。

 一方の蝶子さん。蝶の突き刺されている壁まで這っていき、フォークを引き抜くことに成功。しかし、壁に頭を何度もぶつけて血が出ています。血が出るほどぶつけるってどれだけぶつけたんだ……。
 蝶を開放することで、彼女の体も自由になりました。

 一生懸命、食事を作って蝶子さんのところに持ってきた不気田くんは、もぬけの殻の部屋を見てあっけにとられます。

「そんな傷ついた羽で、もう飛ぶことなんてできないのに。だから、だから守ってあげたかったのに、どうして」

 心底悲しそうにつぶやく不気田。いやいやお前が傷つけたんだろ!? と。
 マツ子の時もそうですが、自分のやったことの結果なのに悲劇っぽく悲しむのが不気田くんの理不尽なところです。

 蝶子さんはベランダからアイキャンフライして、門に体が刺さって死んでしまいました。門の蝶の柄が、さながら彼女の羽のようになって……。
 バッドエンド。
「どうして、どうして受け取ってくれないんだ。僕の愛を。どうして」


 そんな悲しげに言われても……。

●三話『リサさんの愛』

 美術部の部室の前を通りがかる不気田くん。女の子を観ていないときはあのニヤニヤ笑いじゃなくて真顔なんだね……。ハンカチで鼻をかむときといい、買い物を運ぶところといい、素のときの不気田くんはあんまり不気味ではないのが面白いです。

 隙間から見える女性の絵に惹かれて部室に入ります。
 それはリサという女生徒の描いた自画像でした。


 不気田くん、素手で絵の表面に触っちゃいかんよっ!
 それにしても自画像多すぎるやろ……これは不気田くんとは別の意味で狂気を感じます。
 リサは自分の顔ばかり描いているというかなりのナルシストです。この日も部室で自画像を描いていました。黒髪ロングワンレンの気の強そうな女性です。
 この作品は、文科系がオタキャラっぽくステレオタイプ化されて迫害されていない珍しい作品です。
 不気田くん、例のごとくロックオン。
 リサの後ろでいつの間にか絵を描き始めている不気田くん。キャンバスで顔が隠れていてリサからはまだ誰かわかりません。
 キャンバス越しに話しかけられるという、普通の少女漫画とかならなかなかドラマティックなシチュエーションです。

「君は自画像しか描かないのかい? 君には他人を愛せないってことなのかい」
「それ、どういうこと?」
 怒って振り向くリサ。


 絵を描く不気田くんの横からの姿がイイです。筆の持ち方ちゃんとしてるし。

「他の者を愛せないそんな情熱のない絵が人を感動させられるだろうか」
「失礼ね! 私の絵に対する情熱を知りもしないくせに。あんたこそ何よいきなり!」


 不気田くんと一般女子の会話が普通に成立している……!
 リサは怒りながら不気田くんに近づき、キャンバス側に回り込みます。
 そこには自画像を描くリサを描く不気田くんの絵が描かれていました。
 不気田くん、絵が無駄にうまいです。怒りに来たリサですら一瞬、頬を赤らめ息をのむほどでした。リサから見ても魅力的な絵だったということでしょう。この時の口元だけ映る不気田くんがドヤ顔で面白いです。

「君にも他人が愛せるっていうのかい?」
 禅問答のような質問を繰り返す不気田くん。
「愛せるわ。絵の中なら。それが、絵のモチーフであるなら」


 絵の中限定かよ! リサさんもかなり異常な感じがします。

 にやっと笑ってリサさんの手をつかむ不気田くん。
「それが、たとえそれが僕でもかい?」


「たとえ、それが僕でも」という言い回しからはマツ子さんのときほどの勘違い男っぷりは感じません。マツ子、蝶子と嫌がられてさすがの不気田くんも謙虚になったのかもしれません。

 振り向いた顔を見て、リサさんは初めて相手が不気田くんだと認識します。しかし、ここまで来たら後には引けません。
「も、もちろんよ!」


 不気田くんの挑発に乗るリサ。絵描きのプライドとか矜持とかが出ていてこのキャラクターいいなと思いました。
 二人で向かい合い、お互いの絵を描き始めます。
 もはやホラーなのか熱血部活ドラマなのか何なのかよくわからない図です。

 描いている間、めっちゃ見てくる不気田くんが怖くて、外で描くと言ってリサさんは部室を出ます。出ていくリサさんに不気田くんは一言。
「忘れないで。絵の中の僕なら愛せるって言ったことを」

「あのまま部屋に二人でいたら何されるかわかったもんじゃない」と、外に出てすぐに毒づくリサさん。それでも、彼女の描いた不気田くん、非常に精巧でうまいです。嫌いな相手でもきちんと描く、これが芸術家。
しかし、外に出たはずなのにいつの間にか部室に場所が戻っています。そして自分を描く不気田くんが。困惑するリサさんに不気田くんが言います。

「ここは僕の絵の中だからさ。僕の絵の中の君だからさ。僕が魂を込めて描いた絵の中の君」
「知らなかったのかい? 魂のある絵の中は現実をひきよせるって」


 何という哲学の世界。私も知りませんでした。
 とかなんとか屁理屈をこねながら絵を描く不気田くん。リサさんの服の上に絵筆を走らせるとなんと下着姿になり、さらに裸になり……変態だーーー!! 風呂場から現れるを超えるダイレクトな変態具合!
 不気田くんのあまりの変態具合に耐えかねたリサさんは、不気田くんの描かれたキャンバスをナイフで真っ二つに切り裂きます。苦しむ不気田くん。散々不気田くんにディスられたものの、リサさんの絵にも魂がこもっていたんですね。

「教えてあげるわ、憎しみも、情熱になるってことを」

 無事、現実世界に帰ってきます。リサさん、強い。
 そしてリサさんは美術室に戻ってきます。普通の人間ならもう二度と近づきたくないと思うのですが、ここで帰ってくるところがさすがの気の強さだと思います。

 美術室には、なんと真っ二つになった実際の不気田くんが転がっていました。さすがにリサさんビビります。
「芸術家ってのは情熱がありすぎて、すぐにかっとなるのが欠点だね」


 なんて言いながら足をつかんでくる不気田くん。なんで今回の不気田くんはこんなにうまいこと言ってやったぜ感を出すのでしょうか。前々から詩的な表現はとっていましたが、今回はやたらと得意げです。
 手をふりほどき逃げるリサさん。なぜ扉から出ずに棚に向かうのか、芸術家の考えていることはよくわかりません。

「わ、私のせいじゃない!」

 身体がちぎれたまま起き上がろうとする不気田くんにおびえながらリサさんが言います。あんな非常事態だったのに不気田くんを切り裂いてしまったことに一応自責の念があるんですね。

「二人の愛の姿を絵の中に」

 これは変態ですわ……。

「あなたとの愛を絵に描くくらいなら、私は永遠に一人で生きていくわ」
 新しいキャンバスに絵筆を走らせるリサさん。自分が地下に埋まっていて、地上に不気田くんがいる絵を描きます。

 なぜ自分を地下に埋めるんだと思いましたが、彼女はナルシストなので一人で生きていきたいのかなと思いました。あと、不気田を生き埋めにすることには抵抗があったのではないかと。高飛車のわりに優しいです。

 絵を描き終わるとリサの姿は消え、キャンバスと不気田くんだけが残ります。リサがきちんと描いてくれたおかげで、不気田くんの体は引っ付き元に戻りました。
「君は永遠に僕の手の届かないところに行ってしまったんだね。君が最後まで僕を描いてくれたおかげで、僕はこうして生き返ったのに」
 絵を抱きかかえて感傷に浸る不気田くん。
 絵の中で泣き笑いするリサさん。
 バッドエンド。

 長いので前後に分けます。→後編へ 
 


 

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原作

不気田くん 1 愛の標本箱



不気田くん 2 鏡の国のアリス



不気田くん 3 赤い糸の伝説



























































 









































































































































































































































































































































































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